
「圧巻」とは 「全体の中で最も優れた部分」という意味です。
「圧巻」は多くの人が知っている言葉ですが、実は間違って使ってしまっている人も少なくありません。
本記事では「圧巻」の意味を語源から解説し、使い方を例文を交えて紹介します。
そして「圧倒」や「席巻」、「壮観」など「圧巻」と混同しやすい言葉の意味と「圧巻」との違いを分かりやすく解説していきます。
1.「圧巻」の意味
意味は「書物や催し物などの中で最も優れた部分」
圧巻
読み:あっかん
意味:書物・催し物などの中でもっとも優れた部分。
「圧巻」は、映画や劇、書物など作品全体の中で最も優れている事を表現する時に使う言葉です。
語源は中国の故事から来ている
「圧」は「押さえつける」という意味で、「巻」は「中国の官吏(かんり:役人)登用試験の答案」指す言葉です。
昔、中国で官吏登用試験が行われた時に、一番成績の良かった答案用紙を一番上に置いていました。
最も成績の良かった「巻」を、他の「巻」を「圧」するように一番上に置いたことから、「圧巻」という言葉が生まれました。
この事から「他より優れたもの」「最も優秀な作品」「催し物や書物のはるかにすぐれた部分」という意になったのです。
これが「圧巻」の由来です。
2.「圧巻」の使い方と例文
「圧巻」を使う時に注意しなければいけないのは「 全体の中で一番優れている部分を指す時に使う」という事です。
例文で確認してみましょう。
<例文>
- あの映画はとても素晴らしかった。中でも圧巻だったのが予想もつかないラストシーンでした。
- 今回の試合で、○○選手のプレーは圧巻だった。
- あなたが薦めてくれた小説の中で圧巻だったのは、戦いの場面だった。
このように、全体の中で優れている見どころを、相手に伝える時に使います。
2-1.「圧巻」の間違った使い方
「圧巻」の「全体の中で~」という部分の意味を正しく理解していないために、間違って使ってしまう事があります。
間違った文と正しい分を例文で見てみましょう。
<例文>
×:あの舞台は圧巻だった。
〇:あの舞台の中での主人公が事故にあってしまうシーンが圧巻だった。
このように、ただ「圧巻だった」というのは間違った使い方になります。
「圧巻」という言葉を使った後には必ず「どこが(何が)優れたポイントだったのか」という事を説明するというのが正しい使い方です。
ここまでは「圧巻」の意味と、文例について紹介しました。
3.「圧巻」と間違えやすい言葉
「圧巻」と似たような意味や言い回しのため、間違って使いがちな言葉がいくつかあります。
- 圧倒(あっとう)
- 席巻(せっけん)
- 壮観(そうかん)
それぞれ「圧巻」との違いを解説しながら紹介していきます。
3-1.「圧倒(あっとう)」
「圧倒」の意味は以下の通りです。
- 際立って優れた力を持っている事。また、その力で相手を押さえつける事。
- 力を見せつけて他を恐れさせる事。
「圧巻」が「全体の中でここが優れている」という事を表現する時に使う言葉なのに対して、 「圧倒」は「他と比べて優れているかどうか」を表す時に使います。
例文で確認してみましょう。
<例文>
- 彼の語学力は他の生徒を圧倒している。
このように「圧倒」には「全体の中で」という意味合いはありません。
「小説の中で優れた部分」を表現する時には「圧巻」を、「たくさんある小説の中でこの作品が素晴らしい」という場合には「圧倒」を使いましょう。
3-2.「席巻(せっけん)」
「席巻」の意味は以下の通りです。
- むしろ(席)を巻くように、かたはしから領土を攻め取る事。
- すさまじい勢いで勢力を広げる事。
台風の様に大きく成長しながら、勢力を増していくイメージで使います。
例文で確認してみましょう。
<例文>
- 彼女の歌唱力は、時代を席巻する力がある。
このように、周りを巻き込んでいく事を意味する「席巻」は「圧巻」と言い回しは似ていますが、意味や使い方は全然違う事が分かります。
3-3.「壮観」
「壮観」の意味は以下の通りです。
規模が大きくて素晴らしい眺め。また、そのさま。
「壮大な眺め」という意味があり、素晴らしい景色を表現する時に使います。
どのように使うのか、例文で見ていきましょう。
<例文>
- 飛行機から見た富士山は壮観だった。
素晴らしい景色の事を「圧巻の景色だ」という表現しているのを、耳にする事があると思いますが、これは間違った表現です。
素晴らしい壮大な景色を表現する時には「壮観」を使いましょう。
4.「圧巻」の類語
「圧巻」の類語はいくつかあります。
今回は以下の5つの「圧巻」の類語をそれぞれ解説していきます。
- 見どころ
- 見せ場
- 山場
- 呼び物
- ハイライト
4-1.「見どころ」
「見どころ」の意味は以下の通りです。
- 見るべき所。見る価値のある所。見落としてはならない点。
- 今後を期待できる優れた点
「圧巻」と同じような使い方をする言葉です。
例文で確認してみましょう。
<例文>
- あの映画の見どころは予想もつかないラストシーンです。
このように「見どころ」を使って、その後に「どこが見どころだったのか」という事を説明するので「圧巻」と同じ意味で使えます。
「圧巻」は自分が実際に見て感じた事を伝える時に使いますが、「見どころ」は「これから先の事を見て欲しい」という意味でも使われます。
<例文>
- あのドラマの今後の見どころは、主人公がどういう人生を歩んでいくかだ。
「見どころ」には「今後どうなるのか行く末を見守る」というニュアンスも含まれています。
4-2.「見せ場」
「見せ場」の意味は以下の通りです。
芝居などで、役者が得意な芸を見せる場面。見るだけの値打ちのある場面。
主に芝居や映画などの劇中で、相手に一番見て欲しい所をアピールする場合に使う言葉です。
例文を見てみましょう。
<例文>
- 映画の見せ場を、最初に持ってくるというのは斬新なストーリー展開だ。
「全体の中の見せ場」を説明するという意味で「圧巻」と同じ使い方をします。
「圧巻」が「自分が素晴らしいと感じた気持ちを人に伝える」のに対して、「見せ場」は「相手に見て欲しい、アピールしたい所」というニュアンスがあります。
4-3.「山場(やまば)」
「山場」の意味は以下の通りです。
- 物事の絶頂。クライマックス。
- 物事の最も重要で緊迫した部分。
一連の流れの中で、一番盛り上がる部分の事を「山場」と言います。
例文で確認すると以下のようになります。
<例文>
- 相撲もいよいよ千秋楽となり、初場所の山場を迎える。
また、ビジネスなどでの商談の場面で「ここが結果を左右する大事な場面」という所を表現する時にも使います。
<例文>
- 今日のプレゼンが商談成立を決める、大切な山場になる。
「ここが大切なポイント」と自分に言い聞かせて、心の準備をするニュアンスの言葉としても使います。
4-4.「呼び物」
「呼び物」の意味は以下の通りです。
- 興行や催し物で、評判を呼んで人を集めるもの。
- 人の関心を集める出し物。
イベントやキャンペーンなどでのアピールポイントを伝えたい時などに使います。
例えば以下のように使います。
<例文>
- 今回のイベントの呼び物は、豚汁の無料提供だ。
イベント等の「目玉になる出し物」や、「これで人を呼び込みたい」という時に「呼び物」を使います。
4-5.「ハイライト」
「ハイライト」の意味は以下の通りです。
- 最も興味を引く部分、場面。演劇の見せ場や、催し物の呼び物。
- 絵画、写真などで、最も明るく見える部分。
前述した「見せ場」や「呼び物」と同じ使い方をします。
例文は以下の通りです。
<例文>
- 今日のニュースのハイライト。
また「ハイライト」は「圧巻」と同じ使い方をする他に、「最も明るく見える部分」という意味合いでも使います。
<例文>
- 眉の上の部分をハイライトで際だたせてください。
5.「圧巻」の英語表現
「圧巻」の意味合いで使われる英語表現には、主に以下の3種類があります。
- the best part
- high point
- masterpiece
直接「圧巻」を指す単語はありませんが「全体の中でこれが一番の見どころ」という表現方法で「圧巻」を表します。
実際にどのように表現するか以下の例文で確認してみましょう。
<例文>
- The best part was the last scene of the movie.
(圧巻だったのは、あの映画のラストシーンです。)
- The high point of the opera was the aria.
(そのオペラの圧巻はアリアだった)
- The masterpiece of painting in this museum.
(これは、この美術館の中で圧巻の絵画だ。)
まとめ
「圧巻」は 「全体の中で最も優れた部分」という意味の言葉です。
この「全体の中で~」という意味をしっかり理解していないと、間違った使い方をしてしまうので注意しましょう。
混同しやすい言葉、類語などを覚えて、正しく「圧巻」を使えるようになりましょう。