最終更新日:2020/06/05
ビジネスメールや手紙で、「あしからず(=悪しからず)」は「気を悪くしないでください」という意味を込めて使われます。
「悪く思わないでね」という気持ちを表すフォーマルな表現は便利なので、相手との関係を損ねたくないときに活用すべきです。
ただし使い方によっては相手に「失礼だ」と感じさせてしまう可能性があるので、そこをこの記事では詳しく解説します。
「あしからず」の意味、正しい使い方、例文や類語もあわせて確認していくので、しっかり使い方をマスターしましょう!
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1.「あしからず」の意味は?
「気を悪くしないでください」という意味
受け取り方によっては相手が不快に思ってしまうかもしれない出来事に対して、気分を害さないようにお願いする時に使われます。
悪しは古語(昔使われていた言葉)で、今回の場合は「悪く思う、気分が悪い」という意味です。
「あしからず」を文法的に分解すると2つに分解することができます。
「悪しから」(悪しの未然形)+「ず」(打ち消しの助動詞)
意味がわかったところで、次は「あしからず」の使い方を見ていきましょう。
2.「あしからず」の使い方
例えばビジネス文書なら「あしからずご了承ください」などとすればOKです。
2-1.やむを得ない時に使う
「あしからず」はやむを得ず相手に迷惑をかけてしまいそうな時、どうか気を悪くしないでくださいという気持ちを込めて使います。
こちらが申し訳なく感じていることを一言で、しかもフォーマルなシーンで伝えられる「あしからず」は便利な言葉です。
ただし、「あしからず」を頻繁に使うのは好ましくありません。
「あしからず」には「悪く思わないでください」という強要のニュアンスが含まれているので、相手によっては「一方的だ」「失礼だ」と感じさせてしまう危険性もあるからです。
例えば、ビジネス相手から「◯◯の件、お引き受けできません。あしからず。」とだけメールに書かれていたとします。
人によっては「冷たい」という印象を抱くかもしれませんね。
もし「あしからず」だけでは気持ちをうまく表現できないときは、 「どうかお気を悪くされませんよう」「恐れ入りますが」など他の言葉も入れたほうがいいでしょう。
使い方を踏まえた上で、今度は「あしからず」を使った例文を見ていきます。
3.「あしからず」を使った例文
「あしからず」で止めず、後に言葉をつなげる場合は「ご了承(りょうしょう)ください」か「ご容赦(ようしゃ)ください」をつけるのが定番です。
どちらも相手にお願いする言い方ですが、使うタイミングが異なります。
- 了承ください: これから起こることに対して、気を悪くしないで
- ご容赦ください: 既に起きていることに対して、気を悪くしないで
3-1.あしからずご了承ください
「あしからずご了承ください」は、「 これからあなたにとって良くないことが起こるかもしれませんが、気を悪くしないでください」という意味です。
相手に「怒らないでね」と先回りして頼むような時に使います。
例:こちらは本日限りの限定商品となっております。売り切れの際はあしからずご了承くださいませ。
3-2.あしからずご容赦ください
一方「あしからずご容赦ください」は「 既に起きてしまったことに対して、気を悪くしないでください」という意味です。
「既に起きてしまったことなので今更謝っても仕方ないけど、本当に申し訳ない」と伝えたい時などに使います。
3-3.どうぞあしからず
「どうぞあしからず」の「どうぞ」は、同等か目上の人に対してお願いや許可を求める言葉です。
ちなみに、「どうか」も「どうぞ」と同じようにビジネスシーンで使うことができます。
「どうか」の方が「どうぞ」よりも強いお願いお願いで、「どうかあしからず」は強く懇願しているニュアンスになります。
例1:ご依頼の資料をお送りします。読みづらいところも多々あるかと思いますが、どうぞあしからず。
3-4.〜、あしからず。
「ご了承ください」や「ご容赦ください」という言葉なしで文末に「あしからず」だけつける書き方もあります。
例1:明日の飲み会には出席できそうもありません。あしからず。
例2:ご希望に添うことはできません。あしからず。
ただし、文末を「あしからず」で終わらせてしまうと人によっては突き放した表現と感じる可能性があるので、相手の機嫌や性格によって使い分けてください。
3-5.「あしからず」を使った英語表現
「あしからず」は英語で表現するなら、I hope〜を使うとしっくりきます。
例) I hope you understand. (あしからずご了承ください。)
「Sorry, please understand.(すみませんが、どうかご理解ください)」というのでもいいですが、Sorryだと自分に非があるニュアンスが強くなります。
他には前置きに、
- Please don’t get me wrong, but〜
- No offense, but〜
- I hate to say this, but〜
- I don’t mean to hurt you, but〜
文末に、
〜.No hard feelings.
をつける表現方法もあります。
次は「あしからず」を使う時の注意点について見ていきます。
4.「あしからず」を使う時の注意点
「あしからず」は相手に「悪く思わないで」と要求する言葉なので、ちょっとした使い方の違いで相手に不快感を与えてしまうことがあります。
4-1.「あしからず」だけだと失礼にあたる場合も
文末に「あしからず」をつけて文章を終わらせる表現もありますが、これは 目上の人や気分を害している相手には使わない方が無難です。
例えば大切な取引先に提出するはずの資料が完成していないことをメールで伝える時のことを例にしてみましょう。
せっかく「あしからず」の前までは丁寧に現状報告をして謝っていても、「あしからず」で止めてしまうとなんとなく適当な印象を与えてしまいますよね。
こういう場合は、「あしからず」の代わりに 「ご迷惑をおかけし申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします」などと書いた方がいいでしょう。
4-2.目上の人に使う場合は「ご了承」などをつける
どうしても目上の人に対して「あしからず」を使いたいなら、先ほどの例文で紹介したような「あしからずご了承ください」「あしからずご容赦ください」などをつけるようにしましょう。
こちらの方が「あしからず」だけで止めるよりも丁寧な印象になります。
5.「あしからず」の類語
「今回のことで気を悪くして疎遠になってしまわないようにお願いします」という気持ちが入っている言葉なら、「あしからず」の類語として使うことができます。
例)
- 申し訳ございませんが〜
- すみませんが〜
- 大変失礼ではございますが〜
- ご希望に添えず申し訳ございませんが〜
- 大変恐縮ではございますが〜
- どうかお気を悪くしないでください。
- どうか今後ともよろしくお願いします。
その場の雰囲気や相手との親しさ、関係によってうまく使い分けましょう。
補足:「あしからず」に対する返事の仕方
相手が「あしからず」を使うのは、こちらの目的や意向に添えない場合です。
これに対して「気にしないでください」という気持ちを伝えるには、以下のように返事をすればいいでしょう。
- どうぞお気になさらないでください
- ◯◯様の事情はよく存じております。
- 大丈夫でございます。
- 全く気にしておりません。
まとめ
「あしからず」は相手の目的や意向に添えない場合に「気を悪くしないでください。」とお願いする言葉です。
前後の文脈によっては適当な印象を与えてしまうこともあるので、使い方に注意が必要です。
目上の人や機嫌を損ねているお客様などに使うと関係が悪化してしまう恐れがあるので、その場合はもっと丁寧に「あしからずご了承ください」や「何卒よろしくお願いします」などを使って丁寧に伝えるようにしましょう。