最終更新日:2020/05/09
「唖然(あぜん)」には 「思いもよらないことにあっけにとられている様子、声の出ない様子」という意味があります。
「唖然とする」という表現を耳にする機会も多いですが、「呆然・茫然(ぼうぜん)とする」や「愕然(がくぜん)とする」という表現と混同して使っていませんか?
そこで今回は「唖然」の意味や使い方、「呆然・茫然」「愕然」との違い、類語や英語表現まで、詳しく解説していきます。
1.「唖然」の意味とは
まずは「唖然」の読み方と意味を紹介します。
唖然
読み:あぜん
思いもよらないことにあっけにとられている様子、声の出ない様子
「唖然」は「唖」と「然」から成り立っており、それぞれの漢字には以下の意味があります。
- 【唖】⇒言葉が出ない様子
- 【然】⇒状態
つまり「唖然」は、 何かに驚いたり呆れたりした際に口が開いて物も言えないような状況を表す言葉です。
2.「唖然」の使い方・「呆然」と「愕然」との違い
「唖然」は口が開いてしまうほど驚いた時に使われる表現ですので、小さい事では「唖然」は使いません。
また驚いた内容によって、 ポジティブにもネガティブにもなる言葉です。
「唖然」のフレーズは以下のようなものがあります。
- 唖然とした○○
- ~して唖然とする
- 唖然として~する
では、ポジティブな「唖然」の使い方を以下の例文で見てみましょう。
ポジティブな意味合いで使う際は、単に「驚く」感情ではなく「驚いて感動した」「嬉しくて驚いた」という感情が近いです。
<例文>
- 初めてオーケストラを生で聴いて、その音色の美さに唖然とした。
- 彼にサプライズで誕生日パーティーを開いたら、唖然とした顔で立っていた。
では、ネガティブな意味合いで使う「唖然」を以下の例文で見てみましょう。
<例文>
- あれだけ勉強したのに試験に合格できず、唖然とした。
- 好きなアイドルのコンサートチケットが高すぎて、唖然としてしまった。
2-1.「唖然」「呆然・茫然」「愕然」の違い
まずは「呆然」と「愕然」の意味を紹介します。
意味 | |
呆然・茫然(ぼうぜん) | あっけにとられぼんやりと動けない様子、力が抜けている様子 |
愕然(がくぜん) | 物事に非常に驚いて、衝撃をうけている様子 |
「唖然」も「呆然・茫然」「愕然」も、何かに驚いているという方向性は同じです。
しかし、これらの言葉には以下のような違いがあります。
状態 | ニュアンス | |
唖然 | 驚きのあまり、声が出せない |
一瞬の驚き |
呆然・茫然 | 驚きのあまり、ぼんやりとしている | ショックが長い |
愕然 | 体の状態は関係なく、ひどく驚いている | 信じられないほどショック |
「唖然」と「呆然・茫然」は驚いた時の体の反応が現れています。
「唖然」が一瞬の出来事に声が出ないのに対し「呆然・茫然」は、しばらくのショック状態が続きます。
一方「愕然」の場合は体の反応はどうであれ、信じられないくらい驚いた様子です。
では以下で「唖然」「呆然・茫然」「愕然」を使った例文を紹介します。
<例文>
- 私が犬を拾ってきたのを見て、動物嫌いの母が唖然としていた。
- 帰ってきたら部屋が荒らされていて、呆然と立ち尽くした。
- 国際線の飛行機に乗り遅れて、愕然とした。
3.「唖然」の類語
「唖然」の類語表現には、以下の言葉が使えます。
- あんぐり
- 言葉を失う
それでは以下で、それぞれの言葉について詳しく見ていきましょう。
3-1.あんぐり
「あんぐり」は 「物事に驚いて口が開いて塞がらない様子」です。
「唖然」と同様に「声が出ない」という体の反応を表しているため、「唖然」に置き換えて使いやすい類語です。
また「あんぐり」の場合も「唖然」のように、嬉しい驚きにも悲しい驚きにも使えます。
ただし「あんぐり」は、やや幼稚な表現ですのでフォーマルシーンなどでは使わないようにしましょう。
では以下の例文で「あんぐり」の使い方を紹介します。
<例文>
- 彼と別れた後すぐに他の人とデートをしているのを見て、あんぐりした。
- 彼女は自分の作品が入賞したのに驚いて、あんぐりと口を開けていた。
3-2.言葉を失う
「言葉を失う」は 「物事に驚いたり呆れたりし、何も言えない状態」という意味です。
「言葉を失う」は「何と言ったらいいのか分からない」「言葉が一言もでないほど動揺している」という意味合いになります。
そのため、驚きの度合いも比較的大きいものに対して使われ、ポジティブにもネガティブにも使えます。
では「言葉を失う」を使った例文を以下で確認してみましょう。
<例文>
- 彼女が癌を患っていると聞いて、言葉を失った。
- この上ない名誉を貰うことができ、言葉を失った。
4.「唖然」の英語表現
「唖然」を英語で表現したい場合は、以下の単語が使えます。
- be surprised(驚く)
- be shocked(ショックを受ける)
- speechless(言葉が出ない)
単純に「驚いた」というニュアンスでは①の be surprise が使えますが、「唖然」の意味合いを強調したい場合は②の be shocked や ③の speechless を使いましょう。
speechless は 嬉しさのあまり、または驚きのあまり言葉にならない様子を表すことができますので、より「唖然」に近いです。
では以下の例文で、それぞれの単語の使い方を見てみましょう。
<例文>
まとめ
「唖然」は 「思いもよらないことにあっけにとられている様子、声の出ない様子」という意味です。
ポジティブなニュアンスでも、ネガティブなニュアンスでも使うことができます。
「唖然」が「一瞬の驚きに声が出ない」という意味合いに対し、「呆然・茫然」は「驚いてしばらく、ぼんやりする」という違いがあります。
また「唖然」と「呆然・茫然」が体の反応を表しているのに対し、「愕然」は「隠しきれないほどの驚きにショックを受けている」という心情です。
単なる「驚き」でも言葉を使い分けて、正しい日本語をマスターしていきましょう。