最終更新日:2020/06/30
「バイアス」には、偏りという意味があり、主に学問的な分野で使われます。
そのため日常生活では頻繁に使われないので、正確や意味や使い方について知っている人は多くありません。
そこで本記事では「バイアス」の意味や使い方、類語、例文、英語表現について解説していきます。
この記事を読んでいただければ、「バイアス」という難しい言葉を使いこなすことができるはずです。
ぜひ、最後までご覧ください。
1.「バイアス」の意味
「バイアス」とは、英単語の「bias」をカタカナにした言葉です。
偏り、偏見、偏向、斜めといった意味がありますが、なぜわざわざ本来英単語の言葉を「バイアス」とカタカナで言うのかというと、 日本語で「バイアス」と言う時は、学問的な分野で使われることが多いからです。
日本語である「偏り」といった日常的に使われている言葉だと、どうしても先入観が入り込んでしまいます。
学問的な用語では、そのような先入観を排除するため、「バイアス」のようにカタカナで使われることが多いのです。
2.「バイアス」の使い方と例文
「バイアス」は名詞なので、 「バイアスがかかる」「バイアスをかける」といった使い方をします。
「バイアスがかかる」とは、「あるものの見方が偏っている」といった意味になります。
2-1.「バイアス」の例文
「バイアス」は「かかる」という動詞と一緒に使われますが、その意味は「物事の見方が偏っている」ということです。
特に、 人間が知らず知らずのうちに持ってしまっている偏った見方について言及する時に使われます。
具体的には以下のような例文として使われます。
<例文>
- 「日本は豊かな国だ」と彼は言ったが、そこにはバブル時代を知っている人特有のバイアスがある。
- 人工知能ですべての労働者がいらなくなる、という報道には、人工知能万能論のバイアスがかかっている。
続いては、「バイアス」の類語や言い換え表現について解説していきます。
3.「バイアス」の類語・言い換え表現
「バイアス」の類語・言い換え表現として、ここからは以下の3つについて解説していきます。
- 偏向(へんこう)
- 偏見(へんけん)
- 恣意性(しいせい)
それぞれ見ていきましょう。
3-1.偏向(へんこう)
「偏向」とは 方向性が偏っているという意味で、もっともよく使われるのは「偏向報道」です。
「偏向報道」とは中立的に報道するのではなく、メディアが特定の立場や意見を支持するようにして報道することです。
「バイアス」はメディアの報道について使われることがないので、その点で使い方は異なっています。
また、「偏向」は思想や考えが偏っていると言う時によく使われますが、「バイアス」は見方の偏りについて使われており、その点でも異なっています。
<例文>
- 地方紙の報道は与党に批判的で、政治思想が左に偏向している。
- テレビ局の偏向報道に抗議するため、電話をかける。
3-2.偏見(へんけん)
「偏見」は 見方が偏っていると言う意味ですが、「バイアス」も見方が偏っているという意味で使われるので、その点では同じです。
しかし、「偏見」は「バイアス」に比べると差別的でネガティブなことについて使われることが多いです。
「偏見」とは、自分がよく知らないことについて、「勝手な思い込みを持ってしまう」という意味として使われます。
特に、職業、異性、人種、宗教、国家などについて差別的な偏見を持つといった場合によく使われます。
<例文>
- すべてのイスラム教徒にテロリストのレッテルを貼るのは、明らかに偏見だ。
- 日本に出稼ぎに来る外国人に偏見を持つ人が増えたおかげで、外国人労働者が暮らしにくくなった。
3-3.恣意性(しいせい)
「恣意性」は、 その時の気ままな思いつきや、自分勝手な考えのことを意味しています。
「バイアス」にも自分の勝手な思い込みという意味があるため、その点では「恣意性」と同じであると言えます。
しかし、「恣意性」には「バイアス」のように「物事に対する偏った見方」という意味はありません。
「恣意性」は見方ではなく、言葉や文章の解釈、システムや制度の設計に対して用いられることが多いです。
<例文>
- 企業の会計制度には、恣意性が介入する余地がある。
- 会社の人事では公平を期すため、できるだけ恣意性を排除する必要がある。
4.「バイアス」の英語表現
「バイアス」はもともと英語ですが、「バイアスがかかる」は英語でどう表現すればいいのでしょうか。
ここでは「バイアス」の英単語「bias」を使った英語の例文をご紹介します。
<例文>
- People tend to look at others with bias.(人々は他人を偏見で見がちだ)
- He has a strong bias against abstract painting.(彼は抽象画に対して強い偏見を持っている)
- This is a horrible bias.(それは甚だしい偏見です)
続いては「バイアス」を使った各分野の用語について解説します。
5.「バイアス」を使った各分野の用語
「バイアス」は学問的な分野でよく使われる言葉だと解説してきましたが、特によく使われる分野は以下の2つです。
- 心理学
- 統計学
それぞれの「バイアス」について詳しく解説していきます。
5-1.心理学用語の「バイアス」
心理学用語での「バイアス」は「認知バイアス」と呼ばれており、思考の偏りを意味しています。
思考が偏ることで、常識的に考えればわかることがわからなくなったりと、不合理な判断をしてしまうのです。
「認知バイアス」の身近な例として、ギャンブルで熱くなってしまう現象が挙げられます。
ギャンブルで負け続けていると、「次は勝てる」「これだけ負けたのだから次は大当たりが来るはず」などと、なんの根拠もなく思い込んでしまいがちです。
これまで負け続けているからといって、次に勝てるという保証はないので、このような思い込みは不合理です。
これはギャンブルで熱くなっていることで、思考が偏った状態になってしまっているからです。
「認知バイアス」には以下のように非常に多くの種類があります。
- 内集団バイアス
- バンドワゴン効果
- アンカリング効果
- 確証バイアス
- 自己奉仕バイアス
- ハロー効果
- バーナム効果
- フレーミング効果
- リスキーシフト
- コンコルド効果
- プロスペクト理論
- あと知恵バイアス
- 観察者効果
例えば、「内集団バイアス」とは、簡単に言うと「身内びいき」のことです。
人は、自分が所属している集団については、実際よりも高い評価をしてしまいますよね。
そういった、高校野球で自分の出身地にある高校を応援したり、オリンピックで日本の選手を応援したりと言った行動が、内集団バイアスの現れだと言えます。
他にも「バンドワゴン効果」とは、「勝ち馬に乗る」と言うことです。
これは選挙でよく使われる用語で、有権者が選挙で優勢な政治家や政党を応援したくなるといった現象のことを「バンドワゴン効果」と呼んでいます。
このように「人間が無意識的に行なっている偏った思考」をまとめて「認知バイアス」と心理学では呼び使います。
5-2.統計学用語の「バイアス」
統計学用語で使われる「バイアス」とは、 推定値と実際の数値のズレを意味しています。
統計学で用いられるデータは必ずしも正確なものとは限らず、偏りが生じてしまう場合があるため、そのズレを「バイアス」で表すのです。
例えば、中学三年生の身長の平均値を調べるとしましょう。
このとき、中学三年生であれば平均身長はこのくらいだろう、という推定値が存在します。
しかし、実際にA中学校の三年生の身長を調べたら、推定値より5cmも高い数値が出てしまったのです。
これは、A中学校の三年生に偶然高身長の生徒が集まっていたために、推定値との誤差が発生しました。
このように「推定していた数値」と「実際に(統計的な調査によって)出た数字」の差を、統計学では特に「選択バイアス」と呼んでいます。
まとめ
「バイアス」とは偏りを意味する言葉ですが、特に「偏った見方」という意味で使われることが多いです。
日常生活ではあまり使われない言葉ですが、心理学や統計学など学問的な分野ではよく使われています。
「バイアス」を使いこなすことができれば、 難しい文章を読んだり、書いたりするのに役立つでしょう。
ぜひ「バイアス」の意味を理解して難しい本にも挑戦してみてください。