
「懸念」は、「悪い結果が起きるかもしれない、と心配すること」を言います。
「懸念」はビジネスの場においてもよく使われる言葉です。間違った解釈をして恥をかいたり、失礼な言い方をしたりするのは避けたいですよね。
そこで本記事では、「懸念」の意味と使い方を例文でわかりやすく解説します。不安のないよう、しっかり確認しましょう。
1.「懸念」の意味
まず、「懸念」の意味を説明します。
懸念
読み:けねん、けんねん
- この先のことが不安で、気になって心から離れない事。気がかり。心配。
- (仏教用語)ある一つの対象に、心を集中させること。
- (仏教用語)心がとらわれること。執念。執着(しゅうじゃく)。
「懸念」は「(~のような)悪い出来事が起きるかもしれないから不安」という状態です。
具体的に言えば 「まだ起きていないが、(悪い意味で)可能性があること」ということになりますね。
要するに、「将来起こる可能性のある悪い出来事やトラブルなどに対しての心配」という意味です。
例えば、以下のような使い方をします。
例:「水質汚染など、環境への影響が懸念される」
意味:「環境への影響があるかもしれないから不安に思う」
1-1.「懸念」の使い方
ビジネスシーンでは、「気がかりな事柄」を指します。 問題点や不安な点の指摘を指摘する際にも使われています。
「懸念」は、堅い言葉なので話し言葉で聞くことはありません。ニュース記事やビジネスシーンなど、かしこまった場で使うのが一般的です。
政治に関連したニュースなどを見ていると、「 懸念事項」「懸念材料」といった言葉も聞いたことがあるでしょう。
2.「懸念」の使い方を例文で解説
「懸念」は「 この先起こる悪い結果を心配すること」という意味です。
それだけでなく、「 問題点の指摘」という意味でも「懸念」は使われていましたね。
今度は例文を用いて、具体的な使い方を見てみましょう。
2-1.「そうなるかもしれないから心配」
「まだ起こっていないが、良くない事が起こるかもしれない」という意味での「懸念」の例文です。
- 8月は熱中症患者の急増が懸念される。
- 台風による不作で、野菜の価格高騰が懸念される。
例えば、2番目の例で言えば「野菜が高く なりそうで心配」という意味になりますね。
このように、「懸念」は「 かもしれない」のネガティブな表現だと言えるでしょう。
2-2.「問題点や不安な点の指摘」
次は「問題点や不安な点の指摘」という意味での「懸念」の例文です。
- そのプロジェクトの始動には、懸念材料が多すぎる。
- その発電方式は放射性物質による健康被害が懸念される。
これも2番目を例に挙げると、「健康被害が 出ないか心配である」という意味になりますね。
更に言えば、「その心配事を解決しない限り、これは認められない」という批判や課題を突き付けるニュアンスも入ってくるでしょう。
「不安点や問題点の指摘」という意味での「懸念」の使い方は、ビジネスシーンにおいてもよく使われています。しっかり覚えておきましょう。
3.「懸念」の類語と使い分け
「懸念」には「 危惧」「懸案」「憂慮」など、多くの類語があります。
しかし、どれも「懸念」と同じように使えるとは限りません。言葉によって、意味は異なってくるのです。
使い方を間違えて恥をかかないためにも、「懸念」の類語の使い分けはばっちりスターしましょう。
例文付きで詳しく紹介します。
3-1.「懸念」の類語一覧
「懸念」の類語は以下の通りです。
確かに「 心配すること」「思い悩むこと」という意味では共通です。
では、言葉の使い分けを1つずつ見ていきましょう。
3-2.「危惧」:対象が具体的で強い危機感を示す
「懸念」の類語としてまず挙がるのが「 危惧」です。
「懸念」と違うのは、心配・不安に思う対象が「懸念」よりもハッキリしていて、それに「強い危機感」を示していることでしょう。
- 懸念:起きたらどうしよう
- 危惧:それだけは何としても起こしてはならない
「危惧」は、主に第三者の立場から語る場合に用いられます。また、「懸念」と同じく主に書き言葉で用いられ、会話では使われません。
それでは、例文で使い方を見てみましょう。
- 昔は数多く生息していたが、狩猟により現在では絶滅が危惧されている
- 劣化による家屋倒壊が危惧されている
- 次々と危険な実験に手しており、重大事故を危惧せざるを得ない
3-3.懸案:以前から解決されていない「問題」を指す
「 懸案 」は「以前から解決に追われながらも解決していない事柄、問題」を指します。
ちなみに、「懸案」は一見「懸念」とも似た言葉ですが、「 けんあん」と読みます。
「懸念」と同じ感覚で「 けあん」と読むのは誤りです。注意しましょう。
「懸念」との意味の違いは以下の通りです。
- 懸念:気になっている様子
- 懸案:気になっている問題自体
「懸案」はほぼ「以前起きたこと」に対して用いられ、 「長年の」「かねてより」といった強調語が来ることが多いです。
「懸案」は主に公的機関の文書やスピーチ、ニュース記事で用いられます。いわゆる「お役所言葉」であり、会話ではほぼ使われないでしょう。
例文は以下の通りです。
- 労働力の確保がかねてよりの懸案だ。
- 民族問題の懸案事項は取り上げればきりがない。
「懸念」の類語はまだまだあります。続けて見ていきましょう。
3-4.「憂慮」:すでに起きたことが悪化する恐れ
「 憂慮」も、「懸念」の類語として挙がるでしょう。
しかし、こちらは「危惧」「懸案」といった「懸念」の類語とは下記のような違いがあります。
- 懸念、危惧:起きないか不安
- 憂慮:実際に悪い結果になってしまい、心配する対象がハッキリしている
ただ心配するニュアンスだけではなく、「悪い結果に なってしまって、更にあんな状況になったりしたら…」という深刻さも感じさせます。
「 深刻な不安を抑えきれない」という意味で、「 憂慮に耐えない」といった使い方も覚えておきたいですね。
ただし、「憂慮」の使いどころはやはり新聞やニュースなどのあらたまった場に限られているようです。会話ではめったに用いられません。
例文で使い方を見てみましょう。
- 過労死問題による企業イメージの失墜は、憂慮すべき事態である。
- 愛する人がその事件に巻き込まれたらしく、彼は憂慮に耐えない表情だ。
3-5.「心配」:漠然とした心の不安
何度か出てきましたが、「 心配」も「懸念」の類語になります。
こちらには「懸念」「危惧」よりも不安に思う対象の具体性や差し迫ったニュアンスはありません。
主に「漠然とした心の不安」というニュアンスを指します。
「懸念」「危惧」とは違い、一般的な会話においてよく用いられます。
逆に、ビジネスシーンなどあらたまった場においては、スマートな印象は与えられません。「懸念」「危惧」を使う方が印象がいいでしょう。
例文は以下の通りです。
- 遅くまで帰ってこない娘が心配だ。
- 君にこの仕事を任せられるか心配でならない。
4.「懸念」の対義語
「懸念」は、対義語も覚えておくと表現の幅が広がります。
「懸念」の対義語として使える表現は以下の通りです。覚えておきましょう。
4-1.「安堵」:気がかりや不安がなくなり、安心する
「懸念」の対義語として、「 安堵」は代表的です。
「安堵」は、「ずっと心に引っかかっていた心配事がなくなり、ホッと安心すること」を意味します。
「懸念」で心配したことがなくなって、安心する気持ちが「安堵」だと覚えておくといいでしょう。
「安心」とも似ていますが、厳密には同じではありません。
「安心」には「心配事がない状態が続く」という意味であり、「心配事がなくなった」という「安堵」とは違います。覚えておきましょう。
例文は以下の通りです。
- 問題に巻き込まれた彼女の無事を知って、彼はホッと安堵のため息をついた。
- 彼の仕事がうまくいったと聞いて、安堵の表情を浮かべている。
4-2.「放念」:「お気になさらず」という表現に
「放念」は「気がかりなことを 忘れて心に止めない」事を指す言葉ですが、一般的にはその意味では用いられません。
頭に「ご」をつけて「 ご放念ください」とすることで、「気にしないでください」または「忘れてください」の丁寧な表現になるのです。
ビジネスシーンで用いる場合にはこちらの方が丁寧で、好感が持てますね。
「 失念」は「忘れてしまいました」という意味になります。「放念」とは違うので注意しましょう。
例文は以下の通りです。
- 以前送信したメールはご送信です。どうかご放念ください
- これまでのことはご放念いただけますでしょうか
4-3.「確信」:これからのことに不安がないさま
「 確信」も、「懸念」の類義語として挙げられます。
「確信」の意味は、「固く信じて疑わない事。また、固く信じるもの」であり、一見「懸念」とは関係ないかもしれません。
しかし、「確信」には「疑う要素がない」「不安がない」という意味があり、「こうなるかもしれない」と不安を感じる「懸念」とは対義語だといえるでしょう。
逆に、 「確信できない」「確信が持てない」のように否定形で用いれば、「懸念」と同じ意味で使えます。
例文は以下の通りです。
- プロジェクトの成功に確信が持てる
- 今なら確信を持って言える
- 上手くいく確信は持てない
5.「懸念」の英語表現
最後に、「懸念」の英語表現も見ていきましょう。
「懸念」の英語表現は以下の通りです。
- concern
意味:(他動詞)~を心配させる
(名詞)関心事、懸案事項、気遣い、不安
- worry
意味:(自動詞)心配する、気をもむ、気がかりである
(他動詞)~を心配させる、~の気を揉ませる
- fear
意味:(自動詞)恐れる、怖がる、心配する、危惧する
(他動詞)~を恐れる、~の心配をする、~を懸念する
「懸念」の英語表現は、「concern」が一般的です。
「concern」以外には「 心配」という意味から「 worry」、「 こうなるかもしれない」という恐怖から「 fear」も用いられます。
例文で使い方を見てみましょう。
- We are concern about that.
意味:私たちはそのことを懸念します。
- I can understand his concerns.
意味:私は彼の懸念を理解できます。
- I have no worries about him.
意味:我々は彼に対する懸念はない。
- He admitted to his fears.
意味:彼は自分の懸念を認めた。
まとめ
「懸念」は、「これから起こりうる悪い結果が気にかかっている」という意味です。
「懸念」には「危惧」「懸案」「憂慮」などの類語がありますが、心配する強さの度合いによって使い方が変わるので注意しましょう。