
「逐次」は「 ちくじ」と読み、 順を追って次々に物事がなされる様を表します。
ただし、「順次」や「逐一」といった似た言葉も多く、場面ごとの使い分けがいまいちわかりづらいですね。
そこで、本記事では「逐次」の意味や使い方、似た言葉との使い分け、英語表現について紹介しています。
これを読めば、上司や商談相手の意図の誤解を避け、同僚への指示も的確に伝ることができますよ!
1.「逐次」の意味
順を追って次々に物事がなされる様
逐次
読み方:ちくじ
意味:順を追って次々に物事がなされる様
「逐次」は、「 順を追って次々に物事がなされる様」を表す言葉です。
「逐」には、順にした従う、順々にするという意味があります。
「次」の意味は、順序をつけることです。
例えば、新聞や雑誌、年鑑など、同じ表題で号数を重ねる出版物は「逐次刊行物」と言います。
「順次」には進める順番の決まりはない
「逐次」とほぼ同じ意味を表す言葉に「順次」があります。
「逐次」も「順次」も、「順を追って」「順々に」という共通の意味を持つ言葉ですが、順番の定義に違いがあることを知っておきましょう。
「逐次」は、決まった順番で物事がなされる様です。
決められた順番に従い進める必要があります。
「順次」の場合、進める順番は特に決まっていません。
厳格な順番はないものの、一つずつ行っていく場合に用います。
「逐次」と「順次」は次のように使い分けます。
例文
- その文芸雑誌は、第189号まで逐次刊行されている。
- マニュアルに従い、管理データを逐次修正する。
- 受注手続きが完了次第、順次発送する。
- 受付を済ませた方から、順次説明いたします。
次に、ビジネスシーンでよく使われる「逐次」の表現について解説します。
2.「逐次」の使い方と例文
「逐次」はビジネスシーンでもよく使われます。
「逐次」の使い方を理解することで、上司や商談相手の意図を、正しく汲み取ることができますよ。
ビジネスシーンでよく使われる「逐次」の表現は、次の4つです。
それぞれ解説しますね。
逐次報告
「逐次」を使った表現に、「逐次報告」があります。
「 決められた順番を守って、次々と報告する」という意味です。
例文
- A社との取引状況を、逐次報告するように。
- 次の会議で、商品開発の結果を逐次報告することになった。
このように、「順番をおって説明してほしいとき」などに「逐次報告」と使いましょう。
そう伝えることで、手順が守られた正確な情報を得ることができます。
逐次処理
「逐次」を使った表現に、「逐次処理」があります。
「 決められた手順に従って、物事を取りさばいていく」という意味です。
業務を遂行していく上で、決められた手順を守らなければならない場合は多々ありますよね。
例えば、プログラミングにおいては、データが保存された順番通りに処理を実行することを「逐次処理」と言うのです。
例文
- マニュアルに従って逐次処理した。
- 新しいシステムを導入したことで、逐次処理が可能になった。
「逐次処理」が求められる業務では、決められた手順に従うことが、実務能力が評価されるための最低条件としてあります。
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逐次通訳
「逐次」を使った表現に、「逐次通訳」があります。
「逐次通訳」とは、 話者の発言を数センテンス、あるいは数十秒などといった区切りごとに、通訳していく方式です。
例えば、比較的時間にゆとりがあり、話者の発言を一つずつ確認しながら進めたい場合は「逐次通訳を手配して」と指示を受けます。
例文
- 来週の工場視察に、逐次通訳を手配するように。
- 逐次通訳を入れたプレゼンテーションの時間を計る。
「逐次通訳」に対して、話者の発言を数秒遅れで通訳していく「同時通訳」があります。
シーンにふさわしい通訳を手配するためにも、正しく理解しておきましょう。
逐次的
「逐次」を使った表現に、「逐次的」があります。
「 逐次的に~する」という使い方ををすることで、「順番的に〜〜をしていって/する」と伝えることができるのです。
例文
- 販売促進マニュアルを、逐次的に修正する。
- 社員に経験値に応じて、逐次的に研修を行う。
例えば、会議や研修の資料には、しばしば「逐次的に~する」という表現が出てきます。
次に、「逐次」と似た表現を紹介し、違いを解説します。
3.「逐次」と「逐一」「随時」「適宜」「都度」との違い
「逐次」と似た表現に、「逐一」「随時」「適宜」「都度」があります。
意味は次の通りです。
「逐次」との意味の違いを知り、使い分けが必要です。
次に、「逐一」「随時」「適宜」「都度」の意味の違いと例文を紹介します。
逐一
逐一
読み:ちくいち
意味:何から何まで全部取り上げること
「逐一」とは、「 何から何まで全部取り上げる」ことです。
例えば「逐次報告」が「決められた順番を守って、次々と報告する」という意味があります。
対して、「逐一報告」は「何から何まで全部報告する」という意味なので、順番に報告する必要はありません。
特に順番が決まっておらず「何から何まで」という言葉を伝えたい場合「逐一」を使いましょう。
「逐一」は次の例文のように使います。
例文
- 出張での出来事を逐一報告する。
- 顧客のクレーム対応について、逐一報告するように。
随時
「随時」とは、「 その時々で臨機応変に行う」ことです。
「逐次」との違いは、「順番通り」か「その都度臨機応変に」かということにあります。
例えば「逐次処理」が「決められた手順に従って、物事を取りさばいていく」ことです。
ですが「随時処理」だと「その時々で生じた作業を、臨機応変に取りさばいていく」進め方をします。
「随時」は次の例文のように使います。
例文
- 企画部の資料は随時閲覧可能だ。
- イベント会場付近は、警備員が随時巡回している。
適宜
「適宜」とは、「 その場や状況に応じて行動する」ことです。
「適宜」と「逐次」との違いは、順番と関係なしに「状況次第では対応が変化する」点にあります。
例えば、「逐次的に修正する」が「決められた手順に従って、修正作業を行う」ことです。
対して、「適宜修正する」は「状況に応じて、必要な修正を行う」という意味があります。
「適宜」は状況に応じて行動するので、自分の裁量で判断する必要が出てくるのです。
「適宜」は次の例文のように使います。
例文
- 適宜休憩を挟んでください。
- 企画書に必要なデータを適宜取り出す。
都度
都度
読み:つど
意味:そのたびごとに、毎回行うこと
「都度」とは、「 そのたびごとに、毎回行う」という意味です。
「逐次報告」が「決められた順番を守る」ことを求めているのに対して、「都度報告」は「一つの作業が終わるごとに」といった報告のタイミングを示しています。
「都度」は次の例文のように使います。
例文
- わからないことがあれば、その都度尋ねるように。
- 初めに支払い契約書を交わしておくことで、都度金額の確認をせずに済む。
4.「逐次」の英語表現
「逐次」を表現する英語には、次の3つがあります。
- successively(連続的に、逐次)
- one after another(次々に、続々と)
- one by one(一つずつ、一人ずつ)
「逐次」は「successively」や「one after another」「one by one」を使って表現します。
状況に応じて、ふさわしい表現を選ぶようにしましょう。
英語1.「successively」
「successively」には、 「連続的に」「逐次」という意味があります。
「successivery」は具体的には次のように使います。
例文
- It failed in my presentation successively.(プレゼンに連続で失敗した)
- We must successively grasp the viewing state about the document.(私たちは、その文書の閲覧状況を逐次把握しなければならない)
英語2.「one after another」
「one after another」には、 「次々に」「続々と」という意味があります。
動詞と合わせて使い、「逐次」の意味を表す「次々と〜する」という使い方ができるのです。
「one after another」は具体的には次のように使います。
例文
- The planes arrived one after another.(飛行機が次々と到着した)
- The publisher publish scientific journal one after another.(その出版社は科学雑誌を逐次刊行している)
英語3.「one by one」
「one by one」は、 「一つずつ」「一人ずつ」という意味です。
また、「逐次」のニュアンスをもって表現する場合もあります。
「one by one」は具体的には次のように使います。
例文
- They stood up and their speeches one by one.(彼らは立ち上がって一人ずつスピーチした)
- Please contact me one by one.(逐次連絡してください)
まとめ
「逐次」は、順を追って次々に物事がなされる様を表す言葉です。
「逐次報告」や「逐次処理」などの指示があった場合、決められた順番があり、それに従って行う必要があることを覚えておきましょう。
また、「逐一」「随時」「適宜」「都度」との違いを知ることで、上司や商談相手とのやり取りを的確に、スムーズに行うことができますよ。
報告・連絡・相談の場面で、積極的に活用してくださいね。