最終更新日:2020/06/30
「五十歩百歩」は「ごじっぽひゃっぽ」と読みます。
意味は、 「少し違うだけで本質的には変わらないこと」です。
「読み方が間違っていた」「使い方がよくわからない」という方も多いのではないでしょうか?
そんな方のために、この記事では五十歩百歩の意味や由来などを解説していきます。
さらに類語や英語表現も紹介します。
気になる項目をクリック
1.「五十歩百歩」の意味:違いはあるが、大差はない
五十歩百歩
読み:ごじっぽひゃっぽ
違いはあるが、大差はなく、似たり寄ったりなこと
五十歩百歩とは 「違いはあるけど、大差はなく似たり寄ったりなこと」という意味です。
「ごじゅっぽひゃっぽ」と呼んでしまう人が多いですが、正しい読み方は「ごじっぽひゃっぽ」です。
「細かい違いはあるけど、全体的に見てみたらそこまで大したことがない」といった事柄に使われます。
また、日常生活では「どちらもダメ」という悪い意味で使われることも多いです。
1-1.五十歩百歩の由来とは?
「五十歩百歩」の由来は、 中国の漢文「孟子(もうし)」です。
戦国時代に、中国の梁(りょう)の惠王(けいおう)と言う人物がいました。
彼は凶作の地にいる人を移住させ、助けてあげようとしましたが、一向に人が集まりません。
見かねた惠王は孟子に「なぜ人が集まってこないのか」と問いました。
その問いに対して、孟子は「 五十歩逃げた人が、百歩逃げた人を臆病だと嘲笑ったら、どう思うか?」とたとえ話を用いて質問をしてきました。
惠王はそのたとえ話に対し、「逃げたという事実は変わらないから同じだ」と答えます。
その答えに孟子は「その道理が理解できているなら、他国より多い人数を望むべきではない」と返しました。
つまり、「王様の政治は他の国の政治と大差がない。王様がやったのは豊作だった地域の作物を移動させただけ。
凶作で苦しんでいる人たちに国の倉庫から食料を提供したわけではない。 そこまでやらないと他の国より優れた政治をしているとはいえない。」という意味です。
そこから「どちらも大差ない」という意味で「五十歩百歩」という言葉が生まれたのです。
2.五十歩百歩の使い方:「どちらもダメ」「いい意味では使わない」
五十歩百歩は 「細かな違いはあるが、どちらも大差ない」と言う意味です。
では、一体どういった場面で使われるのでしょうか?
詳しく解説していきます。
2-1.「どちらもダメ」という悪い意味で使う
五十歩百歩は「 どちらもダメ」という悪い意味で使われることもあります。
職場なら、例えば以下のような場面で使われます。
- 上司が部下たちに対して説教をするとき
- 取引先が自分たちの会社と同じようなミスをしたとき
それでは、例文を見ていきましょう。
- 取引先も弊社もお互い、いくつかミスをした。今回は五十歩百歩である
- トラブルで逃げるのも無視をするのも、五十歩百歩ではないか
- 部下二人が業績について争っていたが、はっきり言って五十歩百歩である
このように「お互いさま」「どっちもどっち」という意味合いで使われることが多いです。
2-2.いい意味では使わない
「五十歩百歩」は「どちらも同じくらい立派である」のように使われることはありません。
例えば以下のような言い方は間違いです。
兄弟で金賞と銀賞を獲得した。まさに五十歩百歩である
基本的に、 「どちらもダメである」という悪い意味で捉えられることが多いので、間違えないように気をつけましょう。
さて、ここまでは五十歩百歩の使い方や例文についてご紹介していきましたが、類語は一体どういったものなのでしょうか?
3.五十歩百歩の類語:「どんぐりの背比べ」「似たり寄ったり」「大同小異」
五十歩百歩は「細かい違いはあれど、大した違いはない」という意味です。
ということは、 類語も「どちらも似たようなもの」という意味を持つものが当てはまります。
五十歩百歩の類語は色々とありますが、その中でも代表的なのはこちらです。
- どんぐりの背比べ
- 似たり寄ったり
- 大同小異
それぞれの意味や使い方、例文などをご紹介していきます。
①どんぐりの背比べ
どんぐりの背比べ
読み:どんぐりのせいくらべ
どれも似たり寄ったりで、抜きん出たものがいないこと
「どんぐりの背比べ」は 「どれも似たり寄ったりで抜きん出たものがいないこと」という意味を持つものが当てはまります。
例えばビジネスの場では、「(書類選考の際に)個性的な人がいない」という意味で使われます。
由来は「どんぐりは、基本的に同じ大きさをしているので、比べても仕方がない」逸話からです。
五十歩百歩とほとんど同じ意味ですが、「五十歩百歩」は対象が二つなのに対して、「どんぐりの背比べ」は対象が複数のものに使います。
- 今回のテストは、正直みんなどんぐりの背比べだ
- 新しく社員が欲しいと思って募集をかけてみたが、どんぐりの背比べで話にならない
- 提出された課題は、どれもどんぐりの背比べだ
②似たり寄ったり
似たり寄ったり
意味:にたりよったり
よく似ていて、さほど違いがないこと
「似たり寄ったり」は 「よく似ていて、さほど違いがないこと」という意味です。
例えばビジネスの場では、書類選考のときや社員の能力を見て判断するときに使われます。
五十歩百歩は「細かい違いはあるが、大差ない=似たり寄ったり」という意味なので、ほとんど同じ意味で使うことができます。
- どの学生も似たり寄ったりな受け答えで、どの学生を採用するべきか決め手がないので困っていた
- このツアーは、どの旅行会社の内容も似たり寄ったりなので、安いところがいい
- これらのメーカーは、どこも似たり寄ったりな方法で製造していると思われる
③大同小異
大同小異
読み:だいどうしょうい
だいたいは同じだが、細かい点に違いのあること
大同小異は 「だいたいは同じだが、細かい点に違いのあること」という意味です。
「全体的に見てみたら同じに見えるが、若干の違いがある」という意味合いで使われます。
五十歩百歩は「違いはあるが、大差ない」という意味なので、一緒の言葉ですね。
大同小異の由来
大同小異は、中国の戦国時代に描かれた「荘子(そうし)」という本の中に出てきます。
この「荘子」を執筆した中国の思想家・荘子は大同小異について以下のように説明をしています。
大同而与小同異、此之謂小同異。万物畢同畢異、此之謂大同異
日本語に訳すと「世の中には大同にして小同と異なるものがあり、これを小同異という。
これに反して万物ことごとく同じく、ことごとく異なるものがあってこれを大同異という」という意味になります。
もっと分かりやすくすると 「全体的には似たように見えるが、よく見てみたら少しだけ違いがある。多少違いがあったって、全体的に見たらそこまで大したことがないから気にしなくていい」ということになります。
「大同」とは「大きな全体の中で同じこと」、「小異」は「小さな部分が同じだったり、違ったりすること」という意味なので、これらをくっつけて「大同小異」という言葉が生まれたのです。
これらの由来を踏まえて「大同小異」の例文を見ていきましょう。
- 彼らの回答は、大同小異だった
- 同じ派閥の意見をまとめようとしても、大同小異で末節が異なる
それでは、ここからは五十歩百歩の英語表現について解説していきます。
4.五十歩百歩の英語表現:「six of one and half a dozen of the other」
五十歩百歩は、文脈や文章によって表現が変わります。
「似たようなもの」「大差ない」という場合は「slight difference」「not much difference」などが使われます。
その他にも 「six of one and half a dozen of the other」という言葉で表現されることもあります。
「six of one and half a dozen of the other」を直訳すると「一方の6つと、もう一方の半ダース」と意味になり、「どちらも6つ=大差ない」という意味に繋がります。
文章によって使う単語が異なってくるので、十分注意してください。
That’s six of one and half a dozen of the other
それって五十歩百歩ではないか
まとめ
今回は「五十歩百歩」の意味について、ご紹介しました。
五十歩百歩は 「細かい違いがあるだけで、大差ないこと」という意味です。
いい意味ではなく、「どちらもダメ」というような悪い意味で使われます。
読み方も「ごじゅっぽひゃっぽ」ではなく「ごじっぽひゃっぽ」なので、間違えないように注意しましょう。