最終更新日:2020/06/05
「ご厚志」は 「ごこうし」と読みます。
送別会や歓迎会など、宴席に参加した際に 幹事が主賓からいただくお金のことです。
幹事になった時に困らないように、「ご厚志」をもらうシーンを想定しながら、意味や使い方について確認していきましょう。
1.「ご厚志」の意味
「ご厚志(ごこうし)」は宴会の席で幹事が主賓からいただくお金のほか、葬儀では香典を意味します。
具体的にはこの2つです。
【ご厚志(ごこうし)】
宴席:主賓が参加費の代わりに払うお金
葬儀:香典
1-1.主賓が参加費の代わりに払うお金
「ご厚志」は 「主賓からいただくお金」です。
会社の飲み会では、本来であれば主賓は招待されているので会費を払う必要はありません。
しかし、幹事に対して「呼んでくれてありがとう。少ないけれど、宴席の足しにして下さい」という気持ちを込めて お金を渡すことがあります。
これが「ご厚志」です。
1-2.葬儀では香典のことを意味する
葬儀では香典(こうでん:死者の霊前に備える金品)という言葉の代わりに「ご厚志」が使われることがあります。
香典は「死者の霊に供する香に代える金銭」という意味があるため、言葉に抵抗を感じる場合はご厚志が使われます。
参列者へのお礼の手紙を書く際に、「ご厚志ありがとうございました」などと使うのが一般的です。
次は「ご厚志」の使い方を見ていきます。
2.「ご厚志」の使い方
ビジネスの「ご厚志」は歓送迎会や新年会などの宴席でよく使われる言葉です。
ご厚志は以下のルールで使われています。
- 歓送迎会や新年会・忘年会などで使われる
- 受け取った側が使う言葉
- 自分が渡す場合は「寸志」
2-1.歓送迎会や新年会・忘年会などで使われる
「ご厚志」がもっとも使われる場面は、ビジネス関係の歓迎会や新年会、忘年会などです。
主賓や上司が幹事に対して「呼んでくれてありがとう」と言う感謝の気持ちを込めてお金を包んで渡します。
2-2.受け取った側が使う言葉
「ご厚志」は受け取った側(幹事)がいただいたお金に対して敬意を示して使う語です。
したがって、渡す側は「ご厚志です」とは言いません。
2-3.自分が渡す場合は「寸志」
自分が渡す場合は 「寸志(すんし)」を使います。
寸志は「わずかばかりの気持ち」と言う意味で、目上の者が目下の者に何かを贈る時に使われるのが一般的です。
口頭で使うことは少なく、現金の入った封筒に「寸志」などと書いて渡します。
3.「ご厚志」の紹介の仕方
ここでは「ご厚志」を紹介する際のマナーを説明します。
- 紹介は乾杯前
- 複数の人から受け取った場合は立場が上の人から紹介
3-1.紹介は乾杯前
宴席で「ご厚志」をいただいたら、幹事は参加者に紹介するのがマナーです。
乾杯の前の挨拶の時に紹介します。
宴席の目的を述べた後、「ご厚志」を誰からいただいたのか紹介し、その後は社長など目上の方の挨拶に移行して乾杯の挨拶と続けるのが一般的です。
受け取った金額に触れるのはマナー違反なので、「部長から5,000円いただきました」など金額は言わないようにしましょう。
3-2.複数の人から受け取った場合は立場が上の人から紹介
複数の人から「ご厚志」をいただいた場合は、立場が高い人から紹介します。
立場が高い役職順に並べると以下の通りです。
(上)会長→社長→事務(専務取締役、専務執行役)→常務(常務取締役)→監査役(会計)→本部長→事業部長→
部長→次長→課長→係長→主任→リーダー→メンター(新人の教育係)(下)
役職がはっきりしている人には、 部署と地位名、名前に様をつけるのを忘れないようにしましょう。
3-3.紹介する際の例文
「ご厚志」を紹介する際の例文を見ていきましょう。
・◯◯課長からご厚志をいただきましたので、この場にてご報告させていただきます。課長、ありがとうございました。
・主賓の方よりご厚志をいただいております。ですので、この場にてご紹介いたします。◯◯様ありがとうございます。
・(複数人からいただいた場合)ここで、本日ご厚志を頂戴しておりますのでご紹介させて頂きます。○○社長、△△部長、××さん…ありがとうございます。
「ご厚志」は宴席の中で紹介するだけではなく、後日お礼メールを送ることも多いです。
次は「ご厚志」へのお礼メールの仕方と例文を見ていきます。
4.「ご厚志」へのお礼メール
改めてお礼を言いたい場合は お礼メールを送りましょう。
もし宴会の席で紹介するの忘れてしまった場合や時間が取れなかった時も、お礼メールを送るのがマナーです。
4-1.送るタイミングは会の翌日〜3日以内
「ご厚志」のお礼メールを送るタイミングは、翌日〜3日以内が望ましいです。
また、顔を合わせた時は口頭でも感謝の気持ちを伝えておきましょう。
4-2.主賓へのお礼メールの例文
主賓へのお礼メールで必ず入れたいのは、次の3つです。
- 幹事としての感謝の気持ち
- 「ご厚志」への感謝
- メールで連絡することへのお詫び
ここではご厚志を上司からいただきた場合と、取引先からいただいた場合の2パターンの例文を紹介します。
上司への「ご厚志」のお礼メール例文
件名:歓迎会のご出席とご厚志のお礼
◯◯課長(←役職名)
昨晩はご一緒いただきまして、誠にありがとうございました。
何分不慣れなもので、至らぬ点があったことをまずお詫びさせていただきます。
また、○○課長(←役職名)からご厚志をいただき、楽しいひと時となりましたこと、重ねてお礼申し上げます。
○○課長(←役職名)の数々のご経験話を伺うことができ、あらためて課長(役職名)への尊敬の念を感じとりました。
及ばずながら、私も◯◯課長(←役職名)のように素晴らしい成果を出せるよう、励んでいこうと心に決めました。
また、ご一緒の機会を作っていただければ幸いです。
今後ともご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
失礼ではありますが、取り急ぎメールにて御礼申し上げます。
取引先へのご厚志のお礼メール例文
件名:昨晩の飲み会出席とご厚志のお礼
株式会社(会社名) (相手の名前)様
いつも大変お世話になっております。(会社名)株式会社の(自分の名前)です。
昨日はご多忙にも関わらず、お時間をいただきまして誠にありがとうございました。
おかげ様で楽しく、有意義なひと時を過ごせました。
また、ご厚志まで頂戴しましたこと、重ねて御礼申し上げます。
今回のプロジェクトの流れも、お互いに良い方向に向かっていることが確認できたような気がします。
私どももベストを尽くして取り組んで参りますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
メールにて恐縮ではございますが、以上、取り急ぎお礼申し上げます
件名は一目ですぐに用件がわかるように書きましょう。
4-3.主賓+参加者へのお礼メールの例文
主賓と参加者へお礼のメールを送る場合は、以下の2つは必ず入れましょう。
- 参加者への出席のお礼
- ご厚志のお礼
例)
件名:新年会出席とご厚志のお礼
皆様、先日はお忙しいなか新年会へのご参加ありがとうございました。
幹事として至らぬ点があったことをお詫びいたします。
また、ここで改めてご報告させていただきますが、当日◯◯様よりご厚志をいただきました。
◯◯様、本当にありがとうございました。
たとえミスが思い当たらなくても、「飲み会で至らない点があったこと」へのお詫びを一言入れると、より丁寧な印象になります。
4-4.紹介し忘れた場合は後で報告メールを送る
「ご厚志」の紹介をし忘れてしまった場合はできる限り早く報告メールを送りましょう。
件名:ご厚志へのお礼とお詫び
皆様、先日は新年会にご参加ありがとうございました。
お楽しみいただけたでしょうか?
その際、幹事の不手際で遅れてしまいましたが、◯◯様からご厚志を賜りしまたことをご報告いたします。
◯◯様、いつもありがとうございます。
不手際は反省するべきですが、文章の中であまり引きずると暗くなってしまうので短くまとめて、しっかりお詫びしましょう。
【補足】会計報告も忘れずに!
主賓と参加者へのお礼メールには、会計報告もつけるのが幹事の仕事です!
例えば参加者20名、会費2,000円の飲み会で、ご厚志を10,000円いただいた場合は以下のように報告します。
例)
先日の○○会には多数のご参加をいただきましてありがとうございました。
幹事の不手際で至らない点が多く、大変失礼いたしました。
以下に会計の報告をさせていただきます。
【収支】
会費:2,000円×20名=40,000円
ご厚志をいただいたことで会費が余ってしまった場合は、 余った金額を参加者に平等に返金します。
例えば先ほどの数字の例で、支払い金額が40,000円の場合は以下の通りです。
(支払い金額−ご厚志)÷参加人数
(40,000円−10,000円)÷20人=1,500円
会費返却は1,000円単位の紙幣で行うことが一般的なので、硬貨の端数分は次の会の費用に持ち越されるケースが多いです。
5.「ご厚志」の類語
ここではご厚志(ごこうし)の類語を5つと、「ご厚志」の英語表現について解説します。
- ご芳志(ごほうし)
- ご厚意(ごこうい)
- ご厚情(ごこうじょう)
- お気遣い(おきづかい)
- お心遣い(おこころづかい)
まずは簡単に違いを確認していきおきましょう。
意味 | ご厚志との違い | 使う場面 | |
---|---|---|---|
ご厚志 |
親切な気持ち | 金品をもらったことへの感謝 | 宴会の席、葬儀 |
1.ご芳志 |
改まった表現 | 宴会の席、葬儀 | |
2.ご厚意 |
思いやりのある親切心 | 恐縮するニュアンス | 宴会の席、葬儀 |
3.ご厚情 |
堅い表現 | 式典などフォーマルなシーン | |
4.お気遣い |
気を配ること | 気持ちに対しての感謝 | 宴会の席、葬儀(金品を貰わない場合) |
5.お心遣い |
行動に対しての感謝 | 宴会の席、葬儀 |
5-1.ご芳志
ご芳志(ごほうし)はご厚志と同じ意味で、 「主賓からいただくお金」です。
ただし「ご芳志」は尊敬語で相手を敬うという意味があるので、ご厚志よりも改まった言い方をした相手に使います。
例えば会長や社長など、立場が上の人に使うと適切です。
例)
・主賓の◯◯様より過分なるご芳志をいただきました。
・会長からご芳志を賜りましたこと、厚くお礼申し上げます。
5-2.ご厚意
「ご厚意(ごこうい)」は 「思いやりのある親切心」という意味です。
親切心のほか、「ご厚志」と同じく「いただいたお金」という意味で使うこともできます。
ご厚志とほぼ同じ意味ですが、相手の気遣いや思いやりを汲み取ったニュアンスを伝えられます。
例)
・ご厚意に甘えて、本日はご馳走になります。
・(相手の気遣いに素直に感謝して)ご厚意に甘えてありがたく頂戴いたします。
5-3.ご厚情
「ご厚情(ごこうじょう)」は 「相手が深い情けや思いやりを持っていること」を意味します。
堅くフォーマルな表現なので、日常生活ではほとんど使われません。
「ご厚志」よりも恐縮するニュアンスが含まれています。
ビジネスシーンにおける歓送迎会、宴会などの行事のほか、顧客や取引先に対する感謝状や暑中見舞い、結婚式や祝賀会、葬儀などでも使用可能です。
「ご厚情」の言葉自体に「思いやり、親切心、気持ち、厚い、深い」などの意味が込められています。
そのため、 「ご厚情のお気持ち」「深いご厚情」「ご厚情なる思い」など意味が被る言葉は間違いなのでつけないようにしましょう。
5-4.お気遣い
ご厚志は実際に金品をくださる「行動」に対する感謝なので、お金をいただいた場合は「お心遣い」を使って感謝を述べた方がいいです。
なぜなら、「お気遣い(おきづかい)」は「 相手の気持ち」に対する感謝を伝えたいときに使うからです。
5-5.お心遣い
前述しましたが、「お心遣い(おこころづかい)」は 「相手の気持ちに伴う行動」に対する感謝を述べるときに使います。
「わずかなお金と思っているけれど(気持ち)、宴会の足しにして欲しいとお金を渡す(行動)」ことに対してご厚志と同じ意味で使うことが可能です。
例)
・先日はあたたかなお心遣いをいただきまして、ありがとうございました。
・先日はありがとうございました。お心遣いに心から感謝しております。
5-6.「ご厚志」の英語表現
ご厚志への感謝の表現には 「kindness」や「thank you」がよく使われます。
例)
・I would like to express my sincere thanks for your kindness . (ご厚志誠にありがとうございます。)
・Thank you for your consideration.(ご厚志に感謝いたします。)
・Thank you again for your good thought.(ご厚志をいただき、重ねて感謝申し上げます。)
寸志の英語表現
渡す相手が「少しばかりですが〜」という気持ちを込めて使う「寸志」の表現は以下の通りです。
- small present
- small token of appreciation
まとめ
ビジネスシーンでの「ご厚志」は宴席などで「主賓からいただくお金」という意味です。
幹事を任されたときには上司や目上の方から「ご厚志」をいただく可能性があります。
その際に失礼にあたらないように言葉の意味と使い方をマスターしておきましょう!