
「範疇」は「似た特徴を持つものが属する範囲」「分類された一般的な概念」という意味です。
「はんちゅう」と読み、「○○の範疇だ」「範疇を超えている」などの使い方があります。
この記事では「範疇」の意味や使い方、「範囲」との違い、類語や英語表現を解説していきます。
1.「範疇」の意味
範疇
読み方:はんちゅう
- 似た特徴を持つものが属する範囲
- 分類された一般的な概念
①と②のどちらを意味するかは、使うシーンによって異なります。
意味①:「似た特徴を持つものが属する範囲」
「範疇」の1つ目の意味は、似た特徴を持つものが属する範囲です。
範囲の中でも、特定の広がりのうち同じ性質を集めたカテゴリーを指す言葉ですね。
ある物事が同じ範囲に含まれる場合は「範疇だ」と表し、含まれない場合は「範疇にない」「範疇を超える」などと表現します。
例文
- 彼は植物についての知識が豊富で、あの知識量は趣味の範疇を超えている。
- 算数しか習っていない小学生には難しい。なぜなら、その問題は数学の範疇だからだ。
- ダラダラと話して働く者もいるが、無駄話は仕事の範疇にないと思う。
意味②:「分類された一般的な概念」
「範疇」には、分類された一般的な概念という意味もあります。
概念とは、「同類のものに対していだく意味や内容」のことですが、簡単に言えば「同じような物事から、共通部分を抜き出したイメージのようなもの」を指します。
これは、哲学の基本概念の一つで、哲学者によって項目数や内容も異なります。
- アリストテレス:実体・性質・量・関係・能動・受動・場所・時間・姿勢・所有(10項目)
- カント:量(単一性・数多性・全体性)、質(実在性・否定性・制限性)、関係(実体・原因性・相互性)、様相(可能性・現存性・必然性)4項目
由来は『書経』の「洪範九疇(こうはんきゅうちゅう)」
「範疇」の由来は、『書経』の洪範編にある政治道徳の九原則である「洪範九疇」という言葉です。
そこから「範」と「疇」の2文字を取って「範疇」ができました。
また、この九つの原則とは「五行・五事・八政・五紀・皇極・三徳・稽疑・庶徴・五福」を表します。
「範」は「模範」や「決まった区切り」を表し、「疇」は「同類」という意味を持つため、「似た特徴を持つものが属する範囲」を意味することがわかりますね。
2.「範疇」と「範囲」の違い
「範疇」の類語のひとつに「範囲」があります。
「範疇」と「範囲」は、どちらも「ある特定の広がり(枠組み)」を表すため、非常によく似た言葉ですね。
ただし、「範疇」には「カテゴリー」の意味も含まれているという違いがあります。
- 「範囲」は、ある特定の広がり
- 「範疇」は、特定の広がりのうち(範囲のなかで)同じ性質を集めたカテゴリー
このように 「範囲」は「ある特定の広がり」のみを表すと覚えておくと良いでしょう。
例文
- 人は自分の経験の範囲内でしか、物事を想像できない。
- 他の業務もあるが、できる範囲で協力します。
3.「範疇」の使い方と例文
「範疇」の正しい使い方と例文を見ていきましょう。
「範疇」は、以下のように使うことが多い言葉です。
以下の記事では、それぞれの使い方について解説していきます。
○○の範疇だ・範疇である
「○○の範疇だ」「範疇である」は、「○○がその範囲に属する」と表すときに使用されます。
範疇の前には、次のような言葉を使うことができます。
例文
- 始業前の清掃や就業後の業務整理も業務の範疇だ。
- 事前に参加者の名前を覚えてくるのは、私にとって常識の範疇である。
- こっそり2人で出かけるとは、浮気の範疇だと言われても仕方がない。
範疇を超えている
「範疇を超えている」は、「範囲や概念以上である」という意味で使うことができます。
例文
親と毎日長電話をしているなんて、親子関係の範疇を超えている。
範疇にない
「範疇にない」は、「範囲にない・該当しない」と伝えるときに使用されます。
範疇の前に、ある範囲やカテゴリーを示して使うことができます。
例文
彼の意味不明な行動や言動は、私の理解の範疇にない。
範疇外
「範疇外」は、「範疇にない」と同じく「範囲にない・該当しない」という意味で使うことができます。
「〇〇の範疇外」のように、範疇の前に範囲やカテゴリーを持ってきましょう。
例文
忙しいときに限って、自分の範疇外の仕事を依頼される気がする。
4.「範疇」の類語と例文
「範疇」の類語はいくつかあります。
「範疇」との使い分けやニュアンスの違いなど、詳しく解説していきます。
類語1.種別
種別
読み方:しゅべつ
意味:種類・種目によって区別すること
「種別」は、 「種類・種目によって区別すること」を意味します。
また、その区別そのものを表す場合もあります。
「分類されているもの」という意味では「範疇」と同じですが、「種別」は「範囲」という意味合いが強くはありません。
そのため「種別を超えている」「私の種別だ」などと表すことはできないので注意しましょう。
例文
何から手を付けてよいか分からないときは、自分の業務を種別できていないことが多い。
類語2.分類
分類
読み方:ぶんるい
意味:物事をその種類・性質・系統などに従って分けること
「分類」は、 「物事をその種類・性質・系統などに従って分けること」を表します。
「範疇」と同じく「似た特徴を持つもので分ける」など、特徴を基準として行う行為ではありますが、「範疇」と「分類」では、ニュアンスが異なります。
「範疇」は分類したあとの「範囲・概念」を指すのに対し、「分類」は「分ける行為」の意味を含みます。
例文
届いた製品をアルファベット順に分類する。
5.「範疇」の英語表現と例文
英語で「範疇」を表現する場合、以下の英語を使います。
「範疇」の英語表現は、範疇を表す単語を使う場合や、別の表現で伝えることも可能です。
一般的には「category」を使う
「category」は 「カテゴリー、種類、範疇」という意味です。
「商品カテゴリー」など、よくカタカナでも目にする単語ですよね。
例のように「category」を使って「範疇」を表すことができます。
例文
The work is out of my category.
(その仕事は私の範疇外だ。)
また、英語表現では「category」などの範疇を表す単語を使用せずに伝えることも可能です。
例文
The work is not mine.
(その仕事は私のものではない。)
「class」「sort」は「種類」のニュアンスが強い
「category」の他にも、「class」「sort」を使うことも出来ます。
ただし、「category」に比べて、この2つの単語は「種類」や「種別」などの意味合いが強くなります。
使いたい場面や意味に合わせて、どの単語を使用するか考えて使い分けましょう。
例文
- For him, football is classed the kind of hobby.
(彼にとって、サッカーは趣味の範疇だ。) - For him, his home is sorted into his work place.
(彼にとって、自宅は職場の範疇だ。)
まとめ
「範疇」は「はんちゅう」と読み、「似た特徴を持つものが属する範囲」「分類された一般的な概念」という意味です。
「○○の範疇だ」「範疇を超えている」と使うことができ、「種別」「分類」などの類語もありますね。
英語で「範疇」を表す場合は「category」を使用することができます。