最終更新日:2020/06/30
「憤怒」は、 「激しく怒り、興奮している」様子を表す名詞になります。
また、「憤る」と「怒る」を組み合わせた熟語になるので、「並々ならぬ怒り」を表現する際に適した表現になります。
自分では使う機会がなくとも、ニュースやテレビで使われることが多いので、知っておきたい言葉の一つです。
そこで今回は、「憤怒」の意味と使い方を説明しながら、類義語や英語表現を含めた「怒り」の表現方法について紹介していきます。
1.「憤怒」の意味
「憤怒」の読み方は、「ふんど」もしくは「ふんぬ」と読みます。
一般的に使用される際は「ふんど」と読まれますが、元来の使い方をする場合は「ふんぬ」と読みます。
どちらの使い方をしても、 「激しく怒り、興奮する」という意味を持つので、文章中で用いる場合は問題ないでしょう。
ここでは、なぜ「ふんど」と「ふんぬ」の2通りの読み方があるのか、簡潔に紹介していきます。
1-1.「憤怒」が「ふんど」「ふんぬ」と読まれる理由
「憤怒」の読み方が2通り存在するのは、漢字の読み方に「漢音」と「呉音」と呼ばれるものがあるからです。
例えば、「老若男女」は「ろうにゃくなんにょ」と読みますが、普通は「ろうじゃくだんじょ」ですよね。
「ろうにゃくなんにょ」の方を「呉音」と呼び、由来としては「仏教用語」としての読み方が定着したものとされています。
「憤怒」では「ふんぬ」が「呉音」ですので、こちらには宗教的な伝統を含んでいるとされています。
したがって、キリスト教における「七つの大罪」として紹介される「憤怒」は、「ふんぬ」と表現した方がいいでしょう。
1-2.「憤怒」の使い方
「憤怒」は、「憤る」と「怒る」を組み合わせた熟語であるため、「並々ならぬ怒り」を表現する時に使われます。
したがって、 「腹を立てる」「癪に障る」といった表現より、さらに強い「怒り」の表現を与えることが出来ます。
一方で、「憤怒」はやや堅苦しい表現になるので、会話中ではなく文章中に表現されるのが一般的です。
次に、憤怒を用いた例文と類義語について紹介しましょう。
2.「憤怒」の類義語を例文と一緒に紹介【例文あり】
「憤怒」の類義語には、「憤慨」「憤然」のように、「憤る」を用いた熟語があります。
「憤り」は「怒る」より強い怒りを表現するので、「憤慨」「憤然」は「憤怒」と同様に、「激しく怒る」様子を表現することが出来ます。
ただし、使い方が少しずつ異なりますので、例文と一緒にぜひご確認ください。
2-1.「憤怒」の例文
- 度重なる裏切りに、彼は憤怒の形相になっている。
- ゴミのポイ捨てを目にし、憤怒で身を震わせた。
- 事故に対する悲しみは、突然憤怒となって爆発した。
「憤怒」は名詞のため、 「憤怒する」といった形式では基本的に使われません。
多く使われる表現は、「憤怒の形相」、「憤怒の念」といった風に、人の表情や心情を表す言葉として用いられます。
動詞として「怒り」を表現する場合は、次の「憤慨」を使用してください。
2-2.「憤慨」の例文
- 電車の優先席を陣どっている若者に、いつも憤慨する。
- 店員の挨拶が小さいため、お客様がとても憤慨されています。
- 政治家が公約を実現できなかったため、憤慨を覚える。
「憤慨」は「憤怒」と異なって、 「憤慨する」といったように、動詞として使用することが出来ます。
特に、「憤慨されている」という表現は、目上の人に対する「怒り」を伝える時に重宝する表現になります。
また、「憤慨」は「憤怒」のように、名詞としても使用できるので、こちらの方が使用するケースが多いでしょう。
2-3.「憤然」の例文
「憤然」は「憤怒」と異なって、「憤然と」といったように、形容詞・副詞として用いられます。
元々、「憤然」の「然」には、態度・状態・様子を表す意味があるので、後に続く名詞や動詞を修飾することが出来ます。
「憤怒」より格式ばった言い方ではないので、ぜひ活用して文章を構成してみてください。
続いては、「憤怒」と同じ意味を持つ言葉やことわざについても紹介します。
3.「憤怒」と類似することわざ
次に、「憤怒」を代表とする「怒り」の表現としてよく使われることわざを紹介します。
- 「堪忍袋の緒が切れる」
- 「逆鱗に触れる」
- 「怒髪天を衝く」
ことわざをうまく駆使することで、スピーチなどの場で使える表現の幅を増やすことが出来ますよ。
いづれもことわざの中ではメジャーな表現になるので、ぜひこの機会に覚えておいてください。
「堪忍袋の緒が切れる」
「堪忍袋の緒が切れる」には、「じっとこらえていた怒りが爆発する」という意味があります。
「堪忍袋」は「堪忍する心の広さ」「緒が切れる」は「縛っていたものがなくなること」を意味するため、 「しっぽ」の「尾」ではありません。
使用する際には、我慢をしている状態などと一緒に用いるのがいいでしょう。
例文:度重なる失敗に、ついに上司の堪忍袋の緒が切れた。
「逆鱗に触れる」
「逆鱗に触れる」には、「目上の人を激しく怒らせてしまう」という意味があります。
「逆鱗」とは、竜の顎の下に生えた逆さの鱗を意味し、触れると激怒してしまう、という伝説に語源があります。
注意点として、 目下の人に使用するのは間違いなので、覚えておきましょう。
例文:彼の不用意な発言が、あの人の逆鱗にふれたようだ。
「怒髪天を衝く(どはつてんをつく)」
「怒髪天を衝く」は、 「激しく怒ったため、髪が天を突きあげている」様子を意味します。
「怒髪天」の由来は、中国の歴史家である司馬遷に著述された、宝石を巡る趙国と秦国のエピソードから来ています。
宝石を持っている趙国に対して、大国である秦国が不当な圧力をかけたため、怒りをあらわにした表現として知られています。
例文:彼の開き直った態度に、怒髪天を衝く勢いで怒鳴った。
「憤怒」に対応する英単語
最後に、「憤怒」の英語表現について紹介していきます。
ここでは「怒り」を表す英単語を以下3つ紹介します。
- 「angry」
- 「rage」
- 「fury」
どの程度の「怒り」を表現するのか説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
「angry」〜 一般的な怒りの表現 〜
怒りの感情を表す最も一般的な表現は、「angry」になります。
文章でもいる際には、「get angry」がよく使用され、人に対して怒る場合は「with」、ものに対して怒る場合は「at」が使用されます。
また、日本語に当たるのは「腹を立てる」といった身近な怒りであるため、「 憤怒」とは怒りのレベルが異なるので注意しましょう。
例文:He got angry to hear that.( 彼はそれを聞いて怒った)
「rage」〜 抑えがたい激怒 〜
「rage」は、「抑えがたい激怒、激情」を意味する英単語になります。
「抑えがたい激情」のために、何らかの行動を移しているという点で、「憤慨」が日本語として対応しやすいです。
また、 「angry」より「rage」の方が激しい怒りを示すため、「はらわたが煮えくり返る」程度の怒りとして意識するとよいでしょう。
例文:He shouted with rage.(彼は激怒して怒鳴った)
4-3.「fury」〜 狂ったような怒り 〜
「fury」は、「狂ったような怒り」を意味する英単語になります。
「fury」が用いられる文脈では、「自然災害」や「復讐」といった様に、 狂気じみた印象を付与する際に用いられます。
したがって、「fury」は「憤怒」に一番意訳として近く、 怒りの程度が最高に達しているものとして覚えておく良いでしょう。
例文:He is in a fury of excitement.(彼はものすごく興奮している)
まとめ
「憤怒」という言葉は、「怒る」と「憤る」の熟語であるため、並々ならぬ怒りを表現する際に使われます。
「憤怒」のような表現は、自分の心情を表現するより、他者の様子を推し量り、伝聞調で用いられることが多いです。
自分自身の心情を表現する際には、「 遺憾の意」などの方が日常的に使用しやすいので、覚えておく良いでしょう。