最終更新日:2020/06/16
「百聞は一見にしかず」は「百回聞くよりも、たった一度でも自分の目で見た方が確かだ」という意味のことわざです。
美しいことで知られる観光地に実際に足を運び感動するように、他人からの言葉を聞いたりテレビの映像を見ただけで納得せず、自分の目で実物を見た方がより理解できます。
また、「あの人は嫌な人だ。」という話を聞いたとしても、それを真に受けるのではなく、実際に自分で確かめることが大切ですよね。
今回は、「百聞は一見にしかず」の意味とその由来、使い方・例文から類語や英語表現までを徹底的に解説します。
ぜひ、参考にしてくださいね。
1.「百聞は一見にしかず」の意味とは?
百聞は一見にしかず
読み:ひゃくぶんはいっけんにしかず
百回聞くよりも、たった一度でも自分の目で見たほうが確かだということ
「百聞は一見にしかず」は中国の故事からできた言葉であり、 「何度くり返し聞いても、一度でも実際に見ることには及ばない。何事も自分の目で確かめてみるべきだ」という教えが込められています。
「故事」とは、「昔から伝わっている話やいわれ」を意味する言葉であり、故事から生まれたことわざは数多くあります。
1-1.「百聞は一見にしかず」の由来は『漢書(かんじょ)』にある
「百聞は一見にしかず」は、中国の歴史書である『漢書(かんじょ)』の『趙充国伝(ちょうじゅうこくでん)』の中にある故事が由来となっています。
漢書には前漢(昔の中国の王朝)の壮絶な歴史が描かれており、その完成までに20年以上もかかったと言われています。
『漢書・趙充国伝』の中には、以下のような話が記載されています。
当時、漢の皇帝であった宣帝(せんてい)は反乱を起こしたチベット系遊牧民に対して鎮圧を考えていた。
そこで、宣帝が将軍である趙充国に対し兵力の打診をしたところ、こう返事が返ってきた。
「百聞は一見にしかず。前線は遠く離れた場所にあり、戦略を企てるのは難しいです。まずは敵地の地図が必要ですから、私が馬に乗り敵地に向かい、実際に見たものを地図に描き、策略を申し上げます。」
「百聞は一見にしかず」は、この「敵地を自分の目で見て企図し、戦略を立てる」という話が由来となり生まれたことわざです。
趙充国は、適地を自分の目で見ることによって、見事チベット系遊牧民を鎮圧しました。
1-2.「如かず(しかず)」の意味
如かず
読み:しかず
- 及ばない。かなわない。
- …に越したことはない。…が最もよい。
「百聞は一見にしかず」の「しかず」は、漢字では「如かず」と表記します。
このことわざの場合の 「如かず」は、「及ばない」「かなわない」を意味し、たとえ百回聞いたとしても、たった一度でも自分の目で見ることには及ばないといったニュアンスとなります。
2.「百聞は一見にしかず」の使い方・例文
「百聞は一見にしかず」ということわざには、2通りの解釈が存在します。
ひとつは「言葉として耳から聞くよりも、実物を目で見たほうがより理解できる」という解釈です。
この場合は、 「言葉で伝えるには限度があるから、一度見るに限る」ということを伝えたいときに用いることが出来ます。
もうひとつは「人から聞いた話は間違っているかもしれないから、自分で見て確かめた方が良い」という解釈です。
こちらは、 「人の意見に流されず、自分の目でみて考えることが大事だ」ということを伝える場合に用いられます。
「百聞は一見にしかず」を使った例文には以下のようなものが挙げられます。
<例文>
- 話には何度も聞いていたが、この景色はまさに百聞は一見にしかずだ。
- 話題の映画はとても面白かったよ。百聞は一見にしかずだから、実際一度その映画を見て欲しいな。
- ここで悶々としているより一度確かめに行こう。百聞は一見にしかずと言うからね。
2-1.「百聞は一見にしかず」には続きがある!?
元々漢書に載っていた「百聞は一見にしかず」には、続きはありません。
しかし、いつ誰が創作したのかは分かりませんが、 「百聞は一見にしかず」には出所不明の続きの文章が存在します。
百聞は一見にしかず
百見は一考にしかず
百考は一行にしかず
百行は一果にしかず
百果は一幸にしかず
百幸は一皇にしかず
<意味>
人は聞いただけで、見たような気分になります。
見ただけで、知ったような気になります。
考えただけで、やったような気になります。
やっただけで、成果が出たような気になります。
成果をあげただけで、幸せであるような気になります。
自分の幸せだけでなく、みんなの幸せを考える事が大事です。
「百回聞くよりも一度自分でみたほうがいい」というだけでなく「聞いて、見て、考え、行動し、最後に成果を出す、そして自分の幸せだけでなく、みんなの幸せを考える事が大事」という内容ですね。
「百聞は一見にしかず」に続きを加えた文章は、人の幸せに続く道を説いた教訓になっています。
3.「百聞は一見にしかず」の類語・言い換え表現
「百聞は一見にしかず」には以下のような類語があります。
それでは順に解説していきます。
3-1.四字熟語「百聞一見(ひゃくぶんいっけん)」
百聞一見
読み:ひゃくぶんいっけん
意味:人の話を何回も聞くよりも、実際に自分の目で確かめるのが大事である
「 百聞一見」は「百聞は一見にしかず」を四字熟語にしたもので、同様の意味を持つ言葉として用いられます。
<例文>
その景色の素晴しさは以前から聞いていたが、百聞一見、実際に見に行く事にした。
3-2.「論より証拠」
論より証拠
読み:ろんよりしょうこ
意味:口先で議論を重ねるよりも、証拠を出したほうが物事は明確になるということ。
「論より証拠」は、 物事は議論よりも証拠によって明らかになる、また、 具体的な事実にものを言わせるのは説得への第一歩であるというニュアンスで使われることわざです。
<例文>
この録音を聞けば、君がいくら必死に弁明しても、誰も聞く耳を持たないだろう。論より証拠だよ。
4.「百聞は一見にしかず」の英語・中国語表現
「百聞は一見にしかず」ということわざは、 英語圏の国々や中国でも同様の意味で日常的に使われています。
4-1.「百聞は一見にしかず」の英語表現
「百聞は一見にしかず」には、以下のような英語表現が挙げられます。
- Seeing is believing.
(直訳:見ることは信ずることである。) - To see is to believe.
(直訳:見ることは信ずることである。) - One eye-witness is better than many hearsays.
(直訳:多くの見聞きより、一つの目撃だ。) - A picture is worth a thousand words.
(直訳:千の言葉より一枚の写真のほうが価値がある。)
ちなみに、英語で「ことわざ」は「proverb(プロヴァーブ)」と言います。
4-2.「百聞は一見にしかず」の中国語表現
百闻不如一见
読み:パァィ ウ(ェ)ン プゥー ルゥー イー ヂィェン
百聞は一見にしかず
『漢書』の中の教えである「百聞は一見にしかず」は、中国でも教訓にすべき大切な言葉の一つだと考えられています。
尚、『漢書・趙充国伝』には、「百聞不如一見」という漢文で記されています。
まとめ
「百聞は一見にしかず」は「百回聞くよりも、たった一度でも自分の目で見たほうが確かだ」という意味のことわざです。
座右の銘にしないまでも、心に留めて置くことで、今後の物事に対する考え方が豊かになる教訓と言えそうですね。
有名なことわざですが、改めてその意味や由来、使い方を知ることで言葉に対する理解を深め、また英語表現や中国語表現を知ることで、ぜひビジネスシーンにも活用してくださいね。