最終更新日:2020/06/25
「いささか」がどういう意味なのかをお調べですね?
「いささか」とは、「少し・わずか」という意味です。
日常生活ではそれほど頻繁に使われるわけではありませんが、年配の方とのやり取り、書籍や公的な書面などでは、今でも用いられている言葉です。
ここでは「いささか」の意味、正しい使い方や分かりやすい例文を紹介していきます。
あなたの日本語力アップのために、ぜび参考にしてください。
1.「いささか」の意味
「いささか」は漢字で書くと、 「些か」や「聊か」と書きます。
「些」という漢字の意味は「少しばかり」「わずか」、「聊」には「かりそめ・とりあえず」「楽しむ」といった意味があります。
どちらの表記でも「いささか」という言葉の意味に違いはありませんが、 一般的には「いささか」と平仮名で表記されることが多いです。
「いささか」には2つの意味があります。
- 「少し」「わずか」
- 「少しも」
では、順番に解説していきます。
1-1.数量や程度が少ない「少し」「わずか」
「いささか」は、数量や程度が少ない様子を表す言葉で、形容動詞あるいは副詞として用いられます。
「ほんの少し」「わずか」「わずかばかり」という意味です。
例:いささかな蓄え、いささか驚いた など
1-2.否定表現で使われる「少しも」
「いささか」の後ろに否定の表現を伴うと、 「少しも(~ない)」「ちっとも(~ない)」という意味になります。
例:いささかも疲れない、いささかに知りたる人もなければ(今昔物語より) など
1-3.【豆知識】サザエさんの伊佐坂先生の「いささか」とは?
「いささか」と聞いて、アニメ『サザエさん』の伊佐坂先生を思い浮かべた人もいるのではないでしょうか?
伊佐坂先生の本名は「伊佐坂難物」(いささか なんぶつ)といいます。
苗字の「伊佐坂」が「いささか(些か・聊か)」に由来するのかどうかは明確にはされていません。
しかし、難物には「やっかいな・扱いにくい」という意味があるので、 もしかすると「いささか扱いにくい人=ちょっと気難しい人」といった意味でつけられた名前かもしれませんね。
2.「いささか」の使い方と例文
「いささか」の意味や成り立ちについては理解したけれど、具体的にどういった場面で使えるのか分からない、という方もいることでしょう。
そんな方のために、「いささか」の使い方・例文を以下にまとめました。
では、順番に見ていきましょう。
2-1.「少し」という意味で用いる場合
例文:「部下への指導のつもりで言ったことだが、いささか言い過ぎてしまった」
「部下への指導のつもりで言ったことだが、少し言い過ぎてしまった」という意味です。
ここでの 「少し」という程度は、自分(言った本人)の感じ方や主観によるものです。
つまり、客観的に見て少ない場合などには「いささか」は用いられません。上の例文の場合、どのくらい言い過ぎたか、というのは言った本人の主観的な判断なのです。
2-2.「少しも~ない」「全く~ない」など否定形で用いる場合
例文:「今日のプレゼンについてはいささかの不安もありません」
「今日のプレゼンについては少しの不安もありません」という意味です。
「いささか~ない」の形で用いる場合、全否定を表し、かなり強い否定の意味を含みます。
2-3.自分のことを謙遜して用いる場合
例文:「留学経験がありますので、英語にはいささか自信があります」
「留学経験がありますので、英語には少し自信があります」という意味です。
しかし、ここでポイントなのが「少し」と言ってはいるものの、 本心としては「かなり自信がある」という謙遜の意味であるということです。
ただし、本当に「少し」という意味で使うこともあるので、相手の話し方や表情からどちらの意味かを見極めることも必要です。
2-4.他者のことを婉曲して用いる場合
例文:「今日の彼女はいささか機嫌が悪いようだ」
「今日の彼女は少し機嫌が悪いようだ」という意味です。
こちらの表現も、本当のところは「かなり機嫌が悪い」と言いたいところを、婉曲して「少し」と言っています。
他者のネガティブな部分など、直接的な表現が好ましくない場合に、 「いささか」を使って遠回しに表現することができます。
2-5.重大でないさまを表す場合
例文:「そのミスはいささか問題だ」
「そのミスは少し問題だ」という意味です。
そのミスそのものは、取り立てて大きな問題ではないかもしれないけれど、指摘しておきたい場合などに使える表現です。
3.「いささか」の類義語
「いささか」は以下のような類義語と言い換えることもできます。
「いささか」は堅苦しい表現でもあるので、状況に応じて使い分けるのがいいでしょう。
- わずかに
- ほんの少し
- ちょっとだけ
- いくらか
- 幾ばくか
- 申し訳程度
- 若干
- 少々
- 少しばかり
- 雀の涙ほど
などです。
4.「いささか」の対義語
「いささか」と反対の意味を持つ対義語には以下のような言葉があります。
「いささか」の対義語はある一定の状態以上であることを意味する言葉です。
- 甚だ(はなはだ)
- ずいぶん
- たいそう
- 大いに
- 非常に
- とても
- 大変
5.「いささか」の成り立ち
「いささか」の漢字である「些」は、音読みでは「サ」「シャ」、訓読みでは「いささか」「ちと」「ちっと」と発音します。
ちなみに、数量・程度・時間が少ない様を表す「ちょっと」という言葉は、「ちと」「ちっと」が語源となっています。
「些」は「此」と「二」が合わさった形声文字です。「此」の左側の「止」は『立ち止まる足』を、右側の「ヒ」は『年老いた女』を、「二」は2本の横線を表しています。
これら3つが合わさることで「二つばかりの、これらの物」という意味になり、そこから「少し」「わずか」を意味する「些」という漢字が成り立ちました。
6.「いささか」の英語表現
「いささか」を英語で表現すると、 「a little」「a bit」「slightly」「somewhat」などになります。
「a little」「a bit」よりも「slightly」「somewhat」のほうがかしこまった表現になるので、 「slightly」「somewhat」のほうが「いささか」の雰囲気に適しているかもしれませんね。
例文:The news was a bit of a surprise to me.(その知らせを聞いて私はいささか驚いた)
また、 否定表現を伴う「いささか(~ない)」の場合は、「not~in the least」「not~at all」となります。
例文:He seems not in the least abashed.(彼はいささかも恥じる様子がない)
7.まとめ
「いささか」の意味や使い方について理解していただけたでしょうか?
ビジネスシーンや公的な書面においては、「ちょっと」「少し」という表現では相手に軽い印象を与えてしまうことがあります。
そういった場合は代わりに「いささか」を使うことで、自分の意志や感情などを控え目に伝えることができます。
「いささか」を使いこなせば、言いにくいことも上手く伝えられるので、今よりも会話スキルがアップすることでしょう。