最終更新日:2020/06/30
「怪我の功名」は、「失敗や過ちなどが、意外にも良い結果をもたらすこと」を意味することわざです。
「功名(こうみょう)」という漢字は日常的に使わないため、「こうめい」と読み間違えている人もいるのではないでしょうか。
使い方が合っていても、読み間違いをした場合、恥ずかしい思いをすることになりますよ。
そこで今回は、「怪我の功名」の意味・使い方を説明し、例文と一緒に類語・英語表現も解説していきます。
「功名(こうみょう)」のよくある変換ミスも紹介しますので、最後までご確認ください。
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1.「怪我の功名」の意味:失敗が思わぬ良い結果を生む
怪我の功名
読み:けがのこうみょう
意味:失敗や過ちなどが、意外にも良い結果をもたらすこと
「怪我の功名」は、「悪い物事が良い方向に進展した」時に使用されることわざです。
本来、悪い物事が起きた時には、怒られる・叱られるなどが予想されますが、結果として良い結果をもたらしている様子のため、「予想外である」といった意味も含みます。
1-1.「怪我の功名」の語源・由来は「高名(こうみょう)」
「怪我」と「功名」には、それぞれ以下の由来があります。
- 「怪我(けが)」は、「ふとした過ち」
- 「功名(こうみょう)」は、「手柄をたてること」
元々「怪我」は、「汚れる・誤る」の意味を持つ「穢(けが)れる」という言葉に由来し、後に当て字として「怪我」が使われています。
また、「功名」は、「手柄を立てる」という意味を持つ「高名(こうみょう)」という言葉に由来し、現代語に直されて「功名」とされているのです。
したがって、「怪我の功名」は、「ふとした過ちが手柄を立てること」を指します。
2.「怪我の功名」の使い方と例文
「怪我の功名」は、 「一度失敗していること」が前提ですので、反省の気持ちを忘れて使用すると、相手を怒らせてしまう可能性があります。
そのため、しっかり正しい使い方と場面を覚えなければなりません。
以下からは、「怪我の功名」の例文を、2つのシーンに分けて説明していきます。
それぞれの例文を紹介し、使い方を解説していきます。
2-1.「失敗や過ちが幸運に変わった」場合
「怪我の功名」は、「失敗が幸運に変わった」場合に使用できます。
ただし、「偶然幸運に変わったこと」のたとえ話ですので、反省の意を忘れないようにしましょう。
<例文>
- 材料を間違えたのに、予定より良い作品出来上がった。まさに、怪我の功名だ。
- 寝坊したおかげで、事故に巻き込まれずにすむなんて、怪我の功名と言わざるを得ない。
2-2.「予想外に説教が短い」場合
「怪我の功名」は、「予想外に説教が短い」場合に使用できます。
失敗や間違いがあった時は、怒られたり、叱られたりするのが一般的ですよね。
上述で紹介した「失敗が幸運に変わった」場合では、本来怒られる所、「予想外に説教が短くなる」場合があるので、その場合にも「怪我の功名だった」と表現することができます。
<例文>
- 結果として怪我の功名だったため、あまりお叱りを受けずに済んだ。
- 今回の問題は怪我の功名に終わったため、彼は教師に叱られるのではなく、皮肉を言われたそうだ。
3.「怪我の功名」の誤用表現:「光明」「巧妙」
「怪我の功名」に使われている「功名(こうみょう)」は、日常的に使用しないため、変換ミスをすることがあります。
ことわざの漢字を間違えると、恥ずかしい思いをすることになるので、以下の点に注意しましょう。
【誤用表現】
- 「怪我の光明」
- 「怪我の巧妙」
「光明」と「巧妙」は、どちらも「こうみょう」と読むため、間違いが起きやすい漢字です。
「怪我の功名」は、「幸運に変わること」の意味があるため、「光」のイメージから「光明」と使用する人がいます。
また、「失敗から幸運に転じること」の意味があるため、「妙である」のイメージから「巧妙」を使用する人がいるのです。
しかし、「光明」と「巧妙」はどちらも誤用表現であり、正しくは「功名」ですので、注意して使用してください。
4.「怪我の功名」の類語と例文
「怪我の功名」は、文字通り「怪我」をたとえにしたことわざです。
場面によっては、 「怪我」よりも大きい物事、小さい物事をたとえにしたことわざが必要な時もあります。
そのため、他のたとえを題材にした「怪我の功名」の類語も覚えて適切に使えるようにしましょう。
「怪我の功名」の類語は、以下の通りです。
- 過ちの功名(あやまちのこうみょう)
- 災い転じて福となす(わざわいてんじてふくとなす)
- 怪我勝ち(けががち)
- 偶然の産物(偶然のさんぶつ)
- 棚から牡丹餅(たなからぼたもち)
次に、上記のなかでもよく使われる「過ちの功名」と「災い転じて福となす」の意味と例文をご紹介しますので、参考にしてください。
4-1.「過ちの功名(あやまちのこうみょう)」
過ちの功名
読み:あやまちのこうみょう
意味:過ち・間違いなどが、予想外に良い結果をもたらすこと
「過ちの功名」は、「過ち・間違いなどが、予想外に良い結果をもたらすこと」を意味する言葉です。
「怪我の功名」は「物理的な傷」をイメージさせるので、「物事の失敗・間違い」を対象に取る時は「過ちの功名」を使用しましょう。
<例文>
間違って塩を多めに入れてしまったが、予想外に自分好みの味に仕上がった。まさに、過ちの功名だ。
4-2.「災い転じて福となす(わざわいてんじてふくとなす)」
災い転じて福となす
読み:わざわいてんじてふくとなす
意味:身にふりかかった災難を、上手く活用し、利用すること
「災い転じて福となす」は、「身にふりかかった災難を、上手く活用し、利用すること」を意味することわざです。
「怪我の功名」とは、以下のように使い分けましょう。
- 「怪我の功名」は、「偶然・意外にも、幸運に変わる様子」
- 「災い転じて福となす」は、「意図的に活用して、幸運に変わる様子」
<例文>
災い転じて福となすと言えば、私はリストラをきっかけに、前よりも良い職場を見つけることができましたよ。
5.「怪我の功名」の対義語と例文
ことわざの対義語は、聞かれてもパッと思いつかないですよね。
しかし、これから紹介することわざは、比較的有名なことわざですので、この機会にセットにして覚えましょう。
悪化してしまうことや良い結果にはならないことを指す言葉が「怪我の功名」の対義語になります。
「怪我の功名」の対義語は、次の2つです。
それぞれの対義語について、例文と一緒に意味を解説していきます。
5-1.「藪をつついて蛇をだす(やぶをつついてへびをだす)」
藪をつついて蛇をだす
読み:やぶをつついてへびをだす
意味:いらぬことをして、よけいに物事をが悪い方向にすすんでしまうこと
「藪をつついて蛇をだす」は、「いらぬことをして、よけいに物事をが悪い方向にすすんでしまうこと」を意味する言葉です。
「藪から棒」ということわざと混同されやすいので、以下の違いを確認しておきましょう。
- 「藪をつついて蛇をだす」は、「いらぬことをして、よけいに物事をが悪い方向にすすんでしまうこと」
- 「藪から棒」は、「突然に物事を行うこと」
<例文>
つい最近彼女と別れた彼に、結婚の話を振るなんて、藪をつついて蛇をだすようなものだ。
5-2.「不幸中の幸い(ふこうちゅうのさいわい)」
不幸中の幸い
読み:ふこうちゅうのさいわい
意味:不幸の出来事があったが、最低限の救いがあること
「不幸中の幸い」は、「不幸な出来事があったが、最低限の救いがあること」を意味することわざです。
「最低限の救い」とは、「物事が良い方向に進んでいる」のではなく、「最悪をまぬがれることができた」という意味があり、「怪我の功名」とは異なります。
<例文>
大きな交通事故に巻き込まれたが、命があっただけでも不幸中の幸いだよ。
6.「怪我の功名」の英語表現と例文
「怪我の功名」ということわざを指す英単語はありません。
そのため、日本語の意味に近い以下のような英語で言い表すことができます。
それぞれについて、例文と合わせて解説していきます。
6-1.「Lucky break」
「Lucky break」は、「思わぬ幸運」を意味する英語です。
「break」は「壊れる」の他に、「突然~になる」という意味があるので、「Lucky break」は「思わぬ幸運」を表現することができます。
<例文>
That is what they call a lucky break.(棚から牡丹餅とはこのことだ。)
上記のように、類語でもある「棚から牡丹餅=思わぬ幸運」と直訳できます。
6-2.「by a fluke」
「by a fluke」は、「まぐれで」「幸運にも」を意味する英語です。
「怪我の功名」を英語表現する際は、例文のように「don’t expect(意図しない・期待しない)」などの英語と組み合わせると良いでしょう。
<例文>
I didn’t expect ,but I won a lottery by a fluke.(全然期待していなかったが、まぐれで宝くじに当たった。)
まとめ
「怪我の功名」は、「失敗や過ちなどが、意外にも良い結果をもたらすこと」を意味することわざです。
「功名」は「こうみょう」と読むため、「光明」「巧妙」などの漢字と間違って使用することが多いので、注意しましょう。
「怪我の功名」は、失敗や過ちが大前提になっているため、たとえ物事がよい方向に転がったとしても、反省した態度をこころがけてください。