最終更新日:2020/06/09
「教唆」とは「おしえそそのかえすこと」、法律用語としては「他人をそそのかして、犯意を生じさせること」を意味する言葉です。
犯罪を伝えるニュースや新聞で使われる単語で度々目にするので、覚えておくとよいでしょう。
そこで今回は、「教唆」の意味や使い方を例文でわかりやすく解説。
さらに、「教唆犯」とはどのような犯罪なのかも合わせて紹介します。
1.「教唆」の読み方と意味
「教唆」は『きょうさ』と読み、『 おしえそそのかすこと。けしかけること』という意味があります。
法律用語としては、「 他人をそそのかして、犯意を生じさせること」という意味になります。
それぞれの漢字の意味も、1つずつ見ていきましょう。
- 教:おしえる。おしえ。いましめ。神仏のおしえ。しむ(〜をさせるという意味)
- 唆:そそのかす。けしかける。その気にさせる
「教唆」を構成する漢字には、上記の意味があります。
「唆」は普段あまり目にしない漢字ですが、「そそのかす。けしかける」という意味があり、「示唆」(それとなく物事を示し教えること)という単語にも使われています。
上記の組み合わせから、「教唆」は「 おしえそそのかすこと。けしかけること」を表す言葉となります。
2.「教唆」の使い方と例文
意味を確認したところで、「教唆」の使い方と例文を見ていきましょう。
「教唆」は主に、 犯罪などの悪い行いをそそのかせて実行させるときに使います。
そのため、殺人罪などの犯罪を伝えるニュースや新聞で使われることが多く、日常会話ではほとんど使われません。
それでは、「教唆」を使った例文を紹介します。
- 秘書の殺害を教唆した疑いで、当局から逮捕状が出ている。
- これらの証拠から、殺人の教唆を疑い、警察は容疑者の身柄を拘束した。
- 東京地検は、虐待によって長男を追い込んだとして、自殺教唆罪で容疑者を起訴した。
- 事件を起こした男に虚偽の供述をさせたとして、東京地検は弁護士である容疑者を犯人隠蔽教唆容疑で逮捕した。
「 他人をそそのかして、犯意を生じさせること」という意味がイメージできたでしょうか。
3.「教唆犯」の意味
「教唆犯」は『きょうさはん』と読み、「 人を教唆して犯罪実行の決意を生じさせること。また、その者。共犯の一形式で、正犯に準じて処罰される」という意味があります。
「共犯」とは、「二人以上の者が一個の犯罪に関与すること」です。
「正犯」とは、「刑法上、犯罪行為を自ら行うこと。各犯罪の構成要件に該当する行為を自ら行うこと。また、そうした行為を行なった者」を指します。
つまり、「教唆犯」とは、 他人が犯罪を実行したくなるようにそそのかす人のことであり、共犯(二人以上が共同で犯罪を犯すこと)の種類の一つで、自ら犯罪を犯した人に準じて処罰されます。
「教唆犯」の典型例は、犯罪をしようと思っていなかった人に対して、「○○はこうしてやれば簡単だよ」などと、犯罪の方法や手口を教えることといわれています。
これは、口頭やメールだけではなく、インターネット上の掲示板やチャットなどでそそのかした場合にも成立します。
ただし、他人をそそのかして共犯に誘い込んでも、自らも犯罪を実行する場合は、自分は正犯となることから、教唆犯は成立しません。
教唆犯が成立するのは、自分は犯罪を実行しないで、他人だけが犯罪を実行するようそそのかした場合です。
教唆の罪はどれくらい重い?
「教唆」の罪がどれくらい重いかですが、刑法61条では、教唆犯には「 正犯(自ら犯罪を犯した人)の刑を科する」と定めています。
つまり、教唆犯は正犯者と同じ法定刑の範囲で処罰されます。
「法定刑」とは、法律の条文で定められている刑のことです。
例えば、下の条文では、黄色い線の部分が法定刑となります。
(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、
死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
「正犯の刑を科する」とは、実際の刑罰が正犯と全く同じという意味ではありません。
あくまで同じ法定刑の範囲という意味のため、実際には、正犯よりも教唆犯の方が刑罰は軽くなる傾向があるようです。
4.「教唆扇動」の意味
「教唆」が使われた言葉で「教唆扇動」という四字熟語があります。
「教唆扇動」は『きょうさせんどう』と読み、「 教えそそのかして人をたきつけ、行動するように気持ちを湧き立たせること」という意味の四字熟語です。
「扇動」には「人をあおり立てて、ある行動を起こすように刺激を与えること」という意味があるため、「教唆」「扇動」と合わせることで、それぞれの意味がより強くなっています。
「扇動」は「煽動」とも表記しますが、意味は同じです。
もともとは「煽動」という表記でしたが、1981年の旧常用漢字表の告示により、当用漢字である「煽」を常用漢字である「扇」に置き換えたという経緯があります。
続いては、「教唆」の類義語を確認していきましょう。
5.「教唆」の類義語
では、「教唆」を類義語で言い換えて使う場合は、どのような言葉が当てはまるのでしょうか。
以下に、該当する類義語とその意味をまとめましたので、ご確認ください。
- 扇動・煽動(せんどう)
⇒気持ちをあおり、ある行動を起こすようにしむけること - 指嗾(しそう)
⇒指図してそそのかすこと。けしかけること - 吹き込む(ふきこむ)
⇒前もって教えこむ。教唆す - 煽り立てる(あおりたてる)
⇒激しく扇動する - 嗾ける(けしかける)
⇒そそのかす。あおる - 焚き付ける(たきつける)
⇒おだてたり、けしかけたりして、その気になるようにしむける。そそのかす - 促す(うながす)
⇒1)早くするようせきたてる。催促する
2)相手がそれをする気になるよう勧める
3)進行を早める。促進する
どの言葉も、「教唆」と同じように「他人をけしかける」という意味合いを持っています。
「幇助(ほうじょ)」との違い
類義語ではないのですが、「教唆」とよく混同される言葉として、「幇助」があります。
「幇助」は『ほうじょ』と読み、「 手助けをすること」という意味です。
法律用語としては、「 有形無形の方法により他人の違法な行為の実現を容易にすること」という意味になります。
「幇助」は主に「犯罪の手助けをする」という意味で使われ、「幇助犯」とは正犯(自ら犯罪を犯した人)の手助けをした従犯(実行犯を手伝った人)とみなされます。
「教唆」は自分では手を下さずに他人をそそのかすことであり、「幇助」は実際に手伝ってしまう点が違っています。
まとめ
ここまでの解説をまとめます。
- 「教唆」の意味は「おしえそそのかすこと。けしかけること」「他人をそそのかして、犯意を生じさせること」
- 「教唆犯」とは「人を教唆して犯罪実行の決意を生じさせること」
- 「教唆扇動」とは「教えそそのかして人をたきつけ、行動するように気持ちを湧き立たせること」
「教唆」「教唆犯」などの意味をしっかりと確認したことで、ニュースや新聞がより理解できるようになったと思います。