最終更新日:2020/06/10
「倣う」は「ならう」と読み、 ある対象を手本として行動するという意味です。
同じ読み方の「習う」はよく聞いても、「倣う」はあまり聞かないですよね。
ここでは、「倣う」の意味や使い方、例文、英語表現まで紹介していきます。
1分くらいで読めるので、ぜひ参考にしてください。
1. 「倣う」の意味:ある対象を手本として、行動すること
倣う
読み方:ならう
- ある対象を手本として、行動する
- 真似る
- 習慣にする
- 慣れ親しむ
ある対象を手本として行動することを意味します。
「習慣にする・慣れ親しむ」という意味もあるように、広い意味をもっている言葉です。
2. 「倣う」の使い方と例文
「倣う」の具体的な例文は、以下の通りです。
- マニュアルに倣って、企画書を送ってください。(マニュアルの手順通りに)
- Cさんに倣って、業務を進めてください。(Cさんのやり方を見ながら、同じように)
- 競合他社の戦略に倣って、我が社も方向転換することにした。(競合他社の戦略を我が社も取り入れる)
- 伝統に倣った技術が外国人を魅了する。(伝統を引き継いでいる技術)
このように、「手順通りに」「同じように」「取り入れる」「引き継ぐ」という意味で使われることもあります。
2-1. 「右に倣う」とは?
右に倣う
読み:みぎにならう
- すでにある見本に従う
- 自分の頭で考えずに、周りの人の真似をする
「右に倣う」は、自分の周りにあるもの(いる人)に倣う・合わせるという意味です。
良い意味でも、悪い意味でも使うことができます。
そのため、相手に対して「右に倣う行動だね」と言うのは、褒めているのか・けなしているのかが分からないので、使わない方がいいです。
また、「右に倣う」を「右に習う」と表現するのは間違いでなので、要注意です。
<例文>
右に倣う行動をすることは、日本人の長所であり、短所でもある。
由来
「文章を書くときに、 右にある手本を見て、同じように書く」というのが由来です。
例えば、小学生の時の漢字ドリルをイメージすると分かりやすいです。
もう1つ、「右側に自分より地位の高い人がいて、その人を真似る」という由来もあります。
2-2. 「顰み(ひそみ)に倣う」とは?
「顰みに倣う」は、「善し悪しを考えずに、むやみに人のまねをする」という意味です。
また、「うまくいったのは、人のまねをしたからである」と謙遜する時にも使います。
ちなみに、 「顰み」は「しかめっ面(眉間にシワを寄せた顔)」という意味です。
<例文>
- 顰みに倣うばかりでは、何も身につかない。(善し悪しを考えずに、人のまねをしているだけでは、何も身につかない)
- 先輩の顰みに倣ったことで、営業スキルが上がった。(営業スキルが上がったのは、先輩のおかげである)
由来
「顰みに倣う」は、 中国の書物『壮子』にある話が由来になっています。
簡単にまとめると、次のような話です。
- 美しい女が病気で苦しんでいるときに、眉間にシワを寄せていた(顰み)
- 醜い女は、その様子を美しいと思った
- だから、醜い女はその様子を真似して町に出た
- そうすると、醜い女は皆に気持ち悪がられた
このことから、「善し悪しを考えずに、むやみに真似をすること」を「顰みに倣う」と表現するようになりました。
2-3. 「模倣」とは?
摸倣
読み:もほう
意味:ある対象を真似ること
「摸」は「型・手本」、「倣」は「真似る」という意味です。
2つを合わせて、「型・手本を真似る」という意味になります。
<例文>
- 摸倣はしていないが、偶然似ている作品になってしまった。
- 成功者の摸倣をすることで、新しい視点を得る。
3. 「倣う」と「習う」の違い
習う
読み:ならう
- 教わる
- 知識や技術を身につけようとする
「習う」の例文は、以下のようなものがあります。
- 海外の方から英語を習う。(海外の方から英語を教わる)
- 幼い頃からピアノを習っている。(ピアノを教わる)
- 習うは一生(いくつになっても学ぶことがある・学び続けなければならない)
このように、「習う」には「学ぶ」というニュアンスがあります。
一方、「倣う」には「学ぶ」というニュアンスはありません。
つまり、「倣う」と「習う」の違いは、「学ぶ」というニュアンスがあるか・ないかです。
続いて、「倣う」の類語を紹介していきます。
4. 「倣う」の類語と例文
ここでは、「倣う」の類語を解説していきます。
1つずつ見ていきましょう。
類語1. 「真似る」
真似る
読み方:まねる
意味:ある物や人と同じような仕草・行動をする
「真似る」は、 「コピーする」というニュアンスが強いです。
<例文>
- ゴリラの真似をしたら、妹が笑ってくれた。
- まず真似ることから、はじめよう。
類語2. 「則る」
則る
読み方:のっとる
意味:ある規則(手本)に従う
「則る」は、 「従う」というニュアンスが強いです。
また、「則る」は「倣う」に言い換えることができますが、より意味を限定している「則る」の方が、正式な文書・契約には適しています。
<例文>
- マニュアルに則って業務を進める。
- 法律に則って、処理する。
類語3.「 準ずる」
準ずる
読み:じゅんずる
- ある規則に従う
- 同等に扱う
「準ずる」には、「ある規則に従う」のほかに 「同等に扱う」という意味もあります。
一方、「倣う」には「同等に扱う」という意味はないので、要注意です。
<例文>
- 今年新しくした当社規定に準ずる。
- 正社員に準ずる給料制度(正社員と同じ給料制度)
5. 「倣う」の英語表現
「倣う」を英語で表現する時によく使われるものに、次の2つがあります。
- emulate(尊敬するもの・立派な物を見習う)
- follow(人の行動・規則に従う)
具体的な例文は、以下の通りです。
- I emulate what my mother used to do for my family.(私は、かつて母が家族のためにしてくれたことに倣って行動します)
- He followed the bylaw of his company.(彼は、会社の規約に従った)
まとめ
「倣う」は、手本として真似をすることです。
その他にも、「手順通りに」「取り入れる」のように広い意味で使うことができます。
そして、その意味を限定したものが、類語の「則る」「準ずる」などです。
例えば、正式な文章・契約では、広い意味の「倣う」よりも、意味を限定している「則る」「準ずる」などを使うことが多いです。
状況に応じて、使い分けてくださいね。