最終更新日:2020/05/09
「概ね」は「 おおむね」と読み、 「物事の大事な部分」「だいたい」という2つの意味があります。
「概ね」は、日常的にも非常に用いやすい言葉の1つです。
しかし、相手との間に「概ね」に対する概念の違いがある場合や、間違って理解している場合は、すれ違いを起こす可能性もあります。
そのような問題を起こさないためにも「概ね」の正しい意味や使い方、言い換え表現などをしっかり理解しておくことが重要です。
1.「概ね(おおむね)」とは
「概ね」には以下の2つの意味があります。
- 物事の大事な部分。物事の大体の趣旨。
- おおよそ。だいたい。
「概ね理解しております。」などという場合は、①と②の意味を両方含むことが考えられます。
しかし、文脈や場面によっては①と②を使い分けることが必要です。
また、「概ね」と同じ読み方・同じ意味として「 大旨(おおむね)」の漢字が使われることもあります。
「概ね」と「大旨」は、正しくは以下のような違いがあります。
- 【概ね】⇒概要やある範囲
- 【大旨】⇒文章などにおける主旨・だいたい
以前は「大旨」が「主旨」という意味で使われる場合は、「たいし」という呼び方を、「概ね」と同じ「だいたい」という意味で使われる場合には「おおむね」と読まれていました。
しかし現在では「大旨」はあまり使われず、「概ね」の漢字を持って「だいたい」「主旨」という意味で使われることが多くなっています。
違う言葉でも同じような使い方ができるので、混乱しないように覚えておきましょう。
1-2.「概ね」の範囲は決まっていない
「概ね」は「だいたい/おおよそ」というある程度の範囲を指す言葉ですが、 正確にどれくらいの範囲を表すかなどは決められていません。
そのため、ビジネスシーンなどの大事な場面では認識のすれ違いが起こらないように気を付けることが大切です。
例えば、自分は80パーセントをもって「概ね」といったつもりでも、相手は90パーセントと認識していたら、これは大きな誤差になりますよね。
場面によっては、この誤差が後々トラブルとなる可能性もあります。
「だいたい」のニュアンスで使える便利な用語ですが、詳しい数値などを伝えられる場合は、誤解のない言い方をするようにしましょう。
2.「概ね」の正しい使い方
「概ね」は2つの意味があります。
場面によってはどちらの意味にも取れる時がありますから、発言者はどちらの意味で使っているのかを考えて把握しましょう。
①「物事の大事な部分・物事の大体の趣旨」という意味
この意味をもって使われる「概ね」は、以下のような例文で用いられることがあります。
- この事件の概ねは把握している。
- 今回の会議では、プロジェクトの概ねだけをさらいます。
このように、 全体の中の重要なポイント・おおまかな流れといったニュアンスです。
さきほど「概ね」の範囲が決まっていないためにすれ違いが起こると解説しましたが、この①の意味で使われている場合も双方のすれ違いが起きます。
例えば、「概ねは理解している」と言っていたのに後々「それは知らなかった」などと言われる場合です。
自分は重要なポイントとして抑えていたのに、相手にはそう思われていなかったら、仕事も効率が上がりませんよね。
この場合も、「概ね」を使いながらも理解度の共有に不安のある時には 細かく確認をとりながら仕事をすすめていくのがよいでしょう。
②「おおよそ・だいたい」という意味
②の意味の「概ね」は、①のように「概ね理解しました。(だいたい理解しました。)」と表現される場合もありますが、「約」といったニュアンスで「概ね5分」のような使われ方もあります。
以下に例文を紹介しますので、確認してみましょう。
- 治療の経過は概ね良好です。
- 到着まで概ね1時間です。
どちらも 具体的に数値が決まっているわけではありませんが、だいたいこれくらいだろうというイメージは湧きやすいですね。
しかし何度も言うように、自分の認識と人の認識は、具体的な数値で共有しない限り、どうしてもズレがでてきてしまいます。
自分の理解に不安がある場合は、相手としっかりコミュニケーションをとることであやふやな部分を解消するように心がけましょう。
3.「概ね」の類語
「概ね」には様々な類語・言い換え表現が存在します。
ここでは、「だいたいの趣旨」という意味と「おおよそ」の2つの意味があるので、それぞれの類語を確認してみましょう。
①「だいたいの趣旨」としての「概ね」の類語
「だいたいの趣旨」意味の「概ね」では、「 主旨(しゅし)」「 要所(ようしょ)」「 粗筋(あらすじ)」といったものが類語として使われます。
1.主旨:物事や話の中心となる事柄
2.要所:重要な事柄。大事な部分
3.粗筋:大体の筋道。大まかな流れ
それぞれ「大事な部分・把握ポイント」としての意味で以下のフレーズのように使うことができます。
- あなたの話の主旨は掴めました。
- 細部はいいので要所は抑えておきましょう。
- 全部は理解できなかったが、粗筋は分かった。
どの用語も「概ね」と同じく、具体的にどの程度を指しているのかははっきりしていません。
しかし、 その時点での大体の理解度や自分の立つ大体の地点を伝えるのには非常に便利な表現です。
②「おおよそ」としての「概ね」の類語
「おおよそ」の意味の「概ね」では、「 あらかた」「 だいたい」「 総合的に」が類語として使われます。
- あらかた:大体、ほとんど
- だいたい:全体を大づかみした、おおよそ
- 総合的に:全体が1つにまとめられている様子
こちらもそれぞれの用語にはニュアンスの違いがありますが、概ね意味は同じなので以下の例文のように使われています。
- 新居はあらかた完成しているようだ。
- 今回の企画書はだいたい良さそうです。
- 今日の映画は総合的に楽しかった。
4.「概ね」の英語表現
「概ね」を英語で表現したい場合は mostly(だいたい), basically(基本的には), generally(概して・広く)の用語が多用されています。
以下にそれぞれの例文を紹介しますので、使い方を確認してみましょう。
①mostly
英語でのmostlyは一般的には、 「ほぼ全部」と解釈されるので、90パーセントくらいと考えておいてよさそうです。
それでは mostly を使った例文を見ていきましょう。
I mostly understand your point. (言いたいことは概ね理解ができています。)
日本語と同様具体的にどれくらいの範囲で理解できているかは分かりませんが、把握しておきべきことは把握できているというニュアンスで使われています。
②basically
basicallyは「基本的に」という意味ですが、この場合「 詳細全てではないけれど、基本的にはある程度全て」というニュアンスです。
それでは以下で例文を確認してみましょう。
I basically approve your plan for the business.(君のビジネスプランは概ね承認するよ。)
これも具体的な数値化ができる表現ではないので、すれ違いによるトラブルに気を付けたいワードです。
③generally
以下の例文では、「 完全にというわけではないけれど、広く」というニュアンスでgenerally が使われています。
では、例文を見てみましょう。
This tool is generally helpful to plant a tree.(この道具は植林する際に概ね役立つよ。)
英語でこれらのワードを使う際、特にビジネスなどのフォーマルな場面では 日本語同様、相手と自分の認識のギャップが大きくないかを確かめながら注意深く使用するようにしましょう。
まとめ
「物事の大事な部分」「おおよそ」という2つの意味を持つ「概ね」は、フォーマルな場面でも活用の幅の広い便利な用語です。
しかし、使いやすい一方で大事な場面での相手との認識の差が大きくないかを常に気を付ける必要があります。
社会人として、後々トラブルにならないためにも「概ね」のコミュニケーションではなく、しっかり詳細まで伝え合うビジネスを心がけましょう。