最終更新日:2020/06/07
「倫理観」とは、「社会生活を送るうえで守るべきことを守った考え方」という意味です。
「倫理」には「人として守るべきこと」、「観」には「考え方」という意味があります。
この記事では、よく混同しやすい「倫理観」と「道徳観」の違いや、「倫理観」の類語・英語表現などを詳しく解説します。
1.「倫理観」の意味と語源
社会的に守るべき規範
倫理観
読み:りんりかん
意味:社会的に守るべき規範をベースにした考え方
「倫理観」は、「倫理」と「観」に分けて考えると意味が分かりやすくなります。
- 「倫理」……人が守るべき道、社会生活を送るうえで守るべきこと(法律や条例、集団に属するなかで生まれる暗黙の了解なども含まれる)
- 「観」……ものの見方・捉え方・考え方
この2つを合わせて、「社会生活を送るうえで、人として守るべきことを守った考え方」という意味になります。
「倫理観」には法律や条例も含まれますが、そのほかの部分にあたる、人が守るべき道についての解釈は人によって異なります。
そのため、「倫理観」を持つ人同士で、意見が食い違うこともあります。
例文
- 倫理観は、どうすれば正しく育むことができるのか教えてほしい。
- 同じ倫理観を持つことは、みんなが気持ちよく過ごすために必要だ。
- 倫理観なしには、この仕事は務まらない。
「倫理観」の語源
「倫理」は英語のethicsを訳した言葉です。ethicsはギリシア語のethosから来ています。
ギリシア語のethosは、社会や民族に特有の慣習という意味を持っていました。
転じて、社会のなかで守られるべき規範として使われるようになったとされています。
また、「倫理」の「倫」には、人として守るべき社会的なルールという意味があり、「理」には「ことわり」「真理」という意味があります。
「倫理」にものの見方、捉え方を表す「観」がついて、社会的に守るべき規範をベースにした考え方を「倫理観」と表します。
2.「倫理観」の使い方と例文
「倫理観」の意味と語源が分かったところで、「倫理観」の具体的な使い方と例文を紹介します。
「倫理観」はビジネスを含め、様々な場面で広く使われている言葉です。
倫理観の欠如
「欠如」は、欠けている、足りないという意味をもつ名詞です。
「倫理観」の欠如で、倫理観が足りないという意味になります。
「倫理観」の欠如は、人の道から外れた事件や犯罪などが起きたときによく用いられます。
例文
- 倫理観の欠如が原因と思われる犯罪は、社会全体で解決すべき問題だ。
倫理観がない
倫理観は、人が社会で暮らす上で当然守るべき規範を元にしたものごとの捉え方です。
倫理観がないと、人や社会のなかで摩擦を起こしやすくなります。
そのため、批判的な文脈で「倫理観」がないという言い回しが使われます。
例文
- 倫理観がないので、彼とは一緒に仕事したくない。
倫理観を持つ
「倫理観」を持つとは、法律やそのほかの社会的に人または集団が守るべき規範に従う気持ちがあるという意味です。
倫理観とは、本来、人が周囲の人々と円満に暮らしていくための考え方です。
そのため、「倫理観を持つ」という表現は、一般的に肯定的な場面で使われます。
例文
- 企業のリーダーには、倫理観を持った行動が強く求められます。
倫理観が問われる
倫理観とは、社会的に守るべき規範に基づいた考え方であり、倫理観に基づいて、社会のなかで望まれる行動をとることが期待されています。
そのため、「倫理観」が問われるとは、社会のなかで望まれる行動をするための考え方ができていますか、という問いが提示されているという意味になります。
例文
- 児童虐待の問題は、加害者の倫理観が問われている。
倫理綱領(りんりこうりょう)
「倫理綱領」(倫理綱領)の意味は、医療やマスコミといった専門職の団体が、社会的責任を果たすことや職業倫理を守ることを文書にまとめたものです。
たとえば、「看護者の倫理綱領」とは「看護者としての在り方をまとめた文書」のことです。
日本看護協会は、15の条文からなる「看護者の倫理綱領」を発表して、日本の看護師全体に各項目を遵守して職務にあたるように呼びかけています。
例文
- 「看護者の倫理綱領」は、看護師国家試験の出題範囲に含まれます。
3.「倫理観」と「道徳観」の違い
「倫理観」は現実的、「道徳観」は理想
「倫理観」は法律や条例など現実にある規則や社則なども含んだ社会的に守るべき規範です。
また、「道徳観」は、個人の経験や両親のしつけ、学校教育などで、幼いころから培ってきた理想としてのルールを指します。
「倫理観」が現実的なルールに基づく考え方である一方、「道徳観」は理想を追求するルールに沿ったものの捉え方と言えるでしょう。
日常生活を送る中で「道徳観」を持った行動をすることは望ましいことですが、事件や事故、または医療現場となると、「道徳観」というよりはむしろ、法律など現実に一歩踏み込んだ「倫理観」に基づいた行動や判断が求められます。
「道徳観」例文
- 道徳観がしっかりしている人ほど、人間関係も良好だ。
4.「倫理観」の類語と例文
「倫理観」の類語には、以下のものが挙げられます。それぞれの言葉の意味を例文とともに紹介します。
類語1.モラル
「モラル」とは、英語の「moral」に由来する言葉で、ものごとの善い悪いを判断する基準のことを指します。
現実的なルールを指す「倫理」よりは、理想を語る「道徳」に近い言葉です。
例文
- 私は、彼女のモラルに欠けた行動をただ呆れて見ていた。
類語2.良心
「良心」とは、悪い行いをせず、善い行いを選ぼうとする心の動きのことです。
モラルと同じく「倫理観」より「道徳観」に近い表現です。
例文
- 良心がとがめるので、万引きはしません。
類語3.道義心
「道義心」の「道義」は、人としてなすべき行いを意味しています。
そのため、「道義心」は、人としてなすべき行いを心がけている精神状態を指します。
例文
- 道義心を心に刻むことが、今、わが社の結束を保つために必要だ。
5.「倫理観」の英語表現と例文
よく使用されるのは「sense of ethics」
「倫理」は「ethics」で、「観」は「sense」で表現されます。
「ethic」の形容詞は「倫理の」という意味の「ethical」ですが、「ethical sense」と言うことはあまりないので、注意が必要です。
例文
- Sense of ethics varies according to country.
(倫理観は国によって異なる。)
「sense of morality」も使用できる
「倫理観」の英語表現として「sense of morality」も挙げられます。
「morality」は、社会的な規範を表す「倫理」よりも個人的な良心を表す「道徳」に近い意味があります。
しかし、その差は微々たるものなので、「倫理観」としても使えます。
例文
- I believe her sense of morality.
(私は彼女の倫理観を信じています。)
道徳観は「morals」
道徳観は「morals」で表されます。
「moral」には「道徳」という意味の名詞と「道徳的な」という意味の形容詞があります。
名詞の「moral」を複数形にして「morals」とすることで、一語で「道徳観」という意味を表現できます。
例文
- He is lacking in morals.
(彼は道徳観に欠けている。)
まとめ
「倫理観」は、社会的に人または集団が守るべき規範をベースにした考え方を意味します。
「倫理観」の「倫理」には、法律や条例、集団に属するなかで生まれる暗黙の了解なども含まれます。
「倫理観」「道徳観」はどちらも、社会的に守られるべき規範という意味では同じです。
「倫理観」が法律などの現実的なルールに基づく考え方である一方、「道徳観」は人としての生き方の理想としてのルールに基づいたものの捉え方であるという点に違いがあります。
「倫理観」は現実的、「道徳観」は理想論的と覚えるとよいでしょう。