最終更新日:2020/06/05
「所存」は「考え、意見、思惑」を意味する謙譲語です。
本記事では「所存」の使い方に加えて、「意向」の使い分けや他の類語についても解説していきます。
「所存」の正しい意味や使い方を知ることで、ビジネスの場でも自信を持って振る舞うことができますよ。
1.「所存」の意味
「心に思うところ」「思惑・思う・考えています」
所存
読み:しょぞん
- 心に思うところ
- 思惑・思う・考えています
「所存」は漢文的に「 存(ぞん)ずるところ」と読み、その「読み」を省略し「所存(しょぞん)」と読まれるようになりました。
2.「所存」の正しい使い方
ここでは、「所存」の正しい使い方を説明していきます。
2-1.「所存」は謙譲語なので目上相手に使う
「所存」は「(自分が)思っていること・考えていること」を、目上の人や取引先の相手伝える時に使う謙譲語になります。
「所存」を漢文的に「存(ぞん)ずるところ」と読むのは前述の通りです。
また、その「存ずる(ぞんずる)」は「思う・考える」を意味する謙譲語になります。
その理由を持って「所存」は「思うところ」の謙譲語になるのです。
謙譲語とは
謙譲語とは、 「自分が一歩退くことで相手を惹き立てる」時に使う言葉です。
従って自分自身を主語として使う言葉であり、相手を主語としては使うことはできません。
この定義は「所存」も同じです。
正しい使い方を理解したところで、さらに以下の2つに分けて使い方を説明します。
- 〜する所存です。
- 〜する所存でございます。
それぞれ例文付きで解説していきます。
2-2.〜する所存です
「〜する所存です」は、 目上の人や取引先に「自分の考えや意見を伝える意思表示」する時に向く表現です。
また「常に〜を思い続けている」などの微妙な意味合いもあります。
継続したい強い思いや考えを相手に伝える時は「思う」より「〜する所存です」が強く響く場合があるのです。
例文
- 決意を新たに取り組む所存です。
意味 ⇒ 決意を新たに取り組むことを考えている。 - プロジェクトのリーダーに、Aさんを是非とも推薦する所存です。
意味 ⇒ プロジェクトのリーダーに、Aさんを是非とも推薦することを考えている。
2-3.〜する所存でございます
「〜する所存でございます」が基本的に 「〜する所存です」と同じ、取引先の相手に「自分の考えや意見を伝える意思表示」する使い方が可能です。
「〜ございます」は丁寧語であり、特に社外の人に伝える時の使用に向いています。
しかし、文末を「ございます」にする事で、より丁寧な印象を相手に与えることができるのです。
例文
- 決意を新たに取り組む所存でございます。
意味 ⇒ 決意を新たに取り組むことを考えています。 - プロジェクトのリーダーに、Aさんを是非とも推薦する所存です。
意味 ⇒ プロジェクトのリーダーに、Aさんを是非とも推薦することを考えています。
3.「所存」の例文をシーン別で紹介
ここでは様々な以下のシーン別で「所存」の例文を紹介していきます。
- 挨拶・スピーチ
- ビジネス文書
- 先方や上司への謝罪
- プレゼンテーション
- 履歴書
「所存」が使いやすい言葉であるのが、解っていただけますでしょうか。
では、個々の例文をみていきます。
3-1.挨拶・スピーチ
挨拶で「所存」を使う時は「相手に対し敬う気持ちや丁寧な気持ち」を伝える時です。
謝意の気持ちや現在の自分のポジションを伝え、これからの自分の方向を伝える文章の締めに「所存です」を使うと良いでしょう。
例文
- この場で経験し得たことを糧にして、今後も邁進する所存でございます。
様々なことをご教授いただき、誠にありがとうございました。 - 初めまして。
微力ではございますが、このプロジェクトに参賀したい所存でございます。 - これまでの経験を元に新規技術や情報を吸収し、仕事を介して修行していく所存です。
どうぞ誠によろしくお願いいたします。
3-2.ビジネス文書
契約書など各種ビジネス文書で「所存」を使う時は 「自分の考えやアイディア、または自己PR」を文書にまとめる時です。
このような文書に「所存です」ではなく「思います」を使うと、社会経験がない幼稚な文章と判断される可能性があります。
社会人として正しい文章の表現ができるように、ビジネス文書では「所存」を使いこなせるようになると良いでしょう。
例文
3-3.先方や上司への謝罪
「所存です」は「反省や謝意の気持ちを誠意持って伝えることができる言葉」です。
確かに、上司に反省や謝意を伝える方法として「思います」は使えます。
しかし「所存」を使うことで改まった文章となり、反省や謝意を伝えるのにより適した文章になるのです。
例文
3-4.プレゼンテーション
プレゼンテーションの場でも、 「とある計画において心に思うこと(計画案)」を発表する時があります。
この場合は「予定でございます」「思います」も使い方は間違いではありません。
しかし「所存」を使うことで、より真剣さを伝えることもできるのです。
例文
- これからも鋭意努力して邁進する所存です。
- 以上の理由を持って、年明け以降は20人ものエンジニア増員を敢行する所存です。
- 御社のご希望に沿えるよう、現在よりも更なる技術開発やスキルアップに努める所存です
3-5.履歴書
履歴書でも「所存」は使われます。
自己アピールと「所存」を合わせることで、丁寧な文章にまとめることが可能なのです。
例文
- 御社に入社できた際には、業務の改善や効率化を図りながらプログラミングを通してサポートしていく所存でございます。
- 専門的なスキルは入社後にご教授いただけることもあります。
だからこそ1日1時間でも早く戦力として認めていただけるように努力していく所存でございます。 - 私は、中学時代からの水泳で身についた忍耐力や体力を活かし、貴社に少しでも貢献できるよう全力で前進する所存でございます。
4.「所存」の間違った使い方
ここでは「所存」の以下の3つの誤用について紹介します。
- ご所存でございます
- 〜と思う所存ございます
- ~と考えていく所存でございます
では、それぞれを解説していきます。
4-1.「ご所存でございます」は二重敬語
「所存」を丁寧に伝えようとして、「所存」に「ご」をつけて「ご所存でございます」は誤用になります。
「所存」は謙譲表現なので冒頭に「ご」を付けると二重敬語になってしまうのです。
さらに「所存」は自分に使う言葉のため、「ご」という尊敬表現を自分に対して使っている解釈となり、失礼に値します。
「ご所存でございます」は二重敬語になる間違った表現なので、「ご」はつけないようにしましょう。
4-2.「〜と思う所存ございます」は二重表現
「~と思う所存でございます」の使い方は誤用です。
これを言い換えると「~と思う思うつもりです」になります。
「所存」そのものが「思う」を意味するので、「思う所存です」は「二重表現」なのです。
「思う」は「所存」と同じ表現なので、重ねて使用しないようにしましょう。
4-3.「~と考えていく所存でございます」は二重表現
「~と考えていく所存でございます」もよく見聞しますが、こちらも誤用になります。
「~と思う所存でございます」と同じ、二重表現です。
5.「所存」の類義語と「意向」との使い分け
ここでは「所存」の類語を解説していきます。
個々の類語の意味は以下の通りです。
- 意見 ⇒ ある問題についての考え
- 趣旨 ⇒ あることをする理由や目的
よく比較されるこの2つの類語について、それぞれ解説します。
5-1.「所存」と「意見」
「意見」は 「ある問題に関してまとまった考え」という意味です。
「所存」にある「考え」と意味は同じですね。
「所存」は謙譲語なので、目上の相手に「意見」を使って話す場合は「意見」に「ご」をつけると更に丁寧な表現になります。
例文
- 私の意見としては、Cがオススメです。
- A係長のご意見を伺いたいです。
5-2.「所存」と「趣旨」
「趣旨」は 「ものごとを遂行する上で、元々存在する考えや主な狙い」を意味します。
「所存」の意味である「考え」と同じですね。
「趣旨を話す」「趣旨に沿う」「趣旨と真逆」のように使います。
例文
- 来年春までに完了希望が先のクライアントとの話の趣旨です。
- Aさんの話の趣旨は理解できました。
5-3.「所存」と「意向」の使い分け方
「所存」と「意向」は似ており、使い方も同じと勘違いされることが多い言葉です。
しかし、意味は似ていてもそれでも使い分けする必要はあります。
一見「所存」と「意向」意味が同じと考えてしまう一方で、「誰が主体の考え」かで使い方が変わるのです。
以下のように個々の言葉は「誰が主体の考え」をまとめました。
所存:自分主体の考え。
解説 ⇒ 主語は自分の時に使う、目上の人に対しての謙譲語です。
意向:相手主体の考え。
解説 ⇒ 目上や目下問わず使う一般的な言葉です。
つまり、主語が「私は」の時は、目上が相手の時に「所存」を使います。
そして、主語が「あなた」など、相手主体の時に「意向」という使い分けが可能です。
以下は「所存」と「意向」の使い分け比較例文になります。
例文
所存:私の所存といたしましては。
意向:Aさんのご意向におかれましては。
所存:来年春までに完了希望が私の所存です。
意向:来年春までに完了希望がクライアントのご意向です。
ご意向について
「意向」単体では「心が向かう所(ところ)」を意味する一般的な言葉です。
しかし、 敬語表現でもある「ご」を付けることで「ご意向」は相手への尊敬語になります。
6.「所存」の英語表現
ここでは「所存」の英語表現について解説します。
- will
- intention
特に「will」についてみてみましょう。
6-1.「will」
本来「will」は「〜だろう」を意味する未来形です。
しかし主語が一人称時の「will」は「強固な決意」を意味し、この理由で 「will」は「所存」を正しく表現できます。
例文
I will continue to push forward more and more into solving this deep-seated problem.
⇒ この根深い問題解決のために、ますます邁進していく「所存」です。
English will become good by the next lesson.
⇒ 次のレッスンまでに英語が上手くなる「所存」です。
また「constantly strive to ~」は「所存」を意味する「will(〜するために常に努力する)」を踏まえ、「to ~」の後に続く意味を強調します。
ホテルサービスでの説明よく使われるフレーズなので、覚えておいても良いでしょう。
例文
We will constantly strive to further improve the service.
⇒ 更なるサービス充実のため努力していく「所存」です。
6-2.「intentions」
「intention」は「意図」を意味する英語表現です。
複数形「intentions」にすることで「所存」が表現可能となります。
以下は「intention」を使った例文です。
例文
There is no intentions to destroy that building.
⇒あの建物を破壊するという「所存」は全くありません。
まとめ
「所存」とは 「考え、意見、思惑」を意味する謙譲語です。
様々な誤用も、正しい意味や使い方を把握することで、物事が円滑に進むことも学びました。
シーンによって「所存」の意味も多岐に渡るので、学んだことを上手く使い分けてトラブルを回避しましょう。