最終更新日:2020/05/06
「てにをは」とは、日本語において文章のニュアンスを作り上げたり、関係性を明確に表現できる助詞のことを指します。
自分は正しく話していると思っていても、 「てにをは」の1文字違うだけで相手に伝わるニュアンスはガラリと変わってしまうことがあります。
そこで今回は、難しく感じる「てにをは」の意味や使い方、ニュアンスの違いなどにも注目して詳しく解説していきます。
正しい日本語で相手に誤解を招かないように、「てにをは」の作法をぜひチェックしておきましょう。
1.「てにをは」の意味
「てにをは」とは、 助詞の総称を表す言葉
日本独特の表現方法である「てにをは」。
以前は、助詞だけでなく助動詞、節尾詞なども含めて指すことが多かったのですが、近年では主に助詞を表す言葉として知られています。
つまり、「て」「に」「を」「は」「も」「に」のように、 文章にあるニュアンスを表したり、他の言葉と関係を持たせる働きがあるものを「てにをは」と呼ぶのです。
現代では、助詞によってニュアンスが分かりづらかったり、文章が整っていない際に「てにをはが合っていない。」などと言われます。
「てにをは」の由来は漢文から
助詞は「てにをは」だけではなく、「が」や「も」など他の文字も存在しますが、なぜ「てにをは」と呼ばれるのでしょう。
「てにをは」の由来は、漢文からきています。
漢文を読む際に、漢字の4隅の訓点を左下から時計回りに読んで「てにをは」となる、ということで助詞など文章の関係性を表すものを「てにをは」と呼ぶようになりました。
「てにをは」は、漢文が読まれる時代からの言葉で、日本人が非常に昔から気を付けていた作法のようなものなのです。
2.「てにをは」を使ったわかりやすい文章術【例文】
「正しい日本語を使いたい。」「相手に伝わりやすく話したい。」と思っていても、「てにをは」を正しく使い分けるのは簡単なことではありません。
そこで、ここではニュアンスを間違いやすい「てにをは」の文章例を比較しながら使い方を確認していきましょう。
今まで助詞の使い方を意識してこなかった人は要チェックです。
例1.「で」と「を」の使い分け
「○○になさいますか?△△になさいますか?」と聞かれたとき、多くの人は以下の2つの文章のどちらかで応答すると思います。
「○○でお願いします。」
「○○をお願いします。」
どちらが間違いというわけではありませんが、文章から相手に伝わるニュアンスには差がでてきてしまいます。
今回の場合は、「○○をお願いします。」の方がベターです。
「○○でお願いします。」は丁寧に聞こえる場合もありますが、相手によってはやや投げやりな印象になってしまう場合があります。
「○○で、」と言われると「もしかして他のものがよかったのかな。」と感じてしまう人も少なくないのです。
一方、「○○をお願いします。」の方は、「○○がいい」という 自分の主張が明確で相手に誤解なく伝わりやすいです。
例2.「~から」と「~より」の使い分け
「東京からお越しくださいました。」
「東京よりお越しくださいました。」
社会人になるとこのようなフレーズを使う機会も増えてくると思いますが、どちらも意味としては同じように聞こえますね。
しかし、ビジネスの際や目上の方とお話しする場合は、「から」よりも 「より」を用いた方が、更にフォーマルな形式になり丁寧な印象を与えることができます。
一方、友人などと話している場合は、「より」ではやや堅苦しい印象を受けますね。
この場合は、「から」の方が違和感なく自然に聞こえるでしょう。
例3.「~が」と「~は」の使い分け
日常の会話でも、「が」と「は」の使い分けは非常に難しく多くの人がごちゃまぜに使っていると思います。
例えば、以下の2つの文章を比べた時、それぞれどのような印象を受けるでしょうか。
「ハンバーグが美味しい。」
「ハンバーグは美味しい。」
「ハンバーグは美味しい」の方は、単にハンバーグが好きというニュアンスが伝わりますが、他のメニューも存在している場面などでは、「ハンバーグは美味しいけれど、他のはちょっと…。」という印象になりかねません。
一方、「ハンバーグが美味しい。」の方は、特にハンバーグに重点を置いてはいるものの、他のメニューを嫌っているようなニュアンスは受けにくいです。
このように、 何かを褒めたりする場合は、「(特に)○○がよかったよ。」のように「が」を用いた方が、相手に失礼にならず正しいニュアンスが伝わりますね。
例4.「~に」と「~を」の使い分け
こちらも伝わるニュアンスは違うものの、使い方が明確に分かっていない人が多い例です。
「○○に訪れる。」
「○○を訪れる。」
「○○に」の方は、 複数ある場所の中で単純に○○へ行ったというニュアンスになります。
一方「○○を」では、 目的を○○と明確に定めたうえでそこを訪れたというニュアンスとして伝わりやすいです。
どちらを選んだからといって相手に失礼になるような文章ではありませんが、小さなニュアンスも正確に伝えるためにはこのような「てにをは」の選び方が重要になってきます。
3.「てにをは」を正しく使えるようになる攻略法
「てにをは」を正しく使いたいと思っている人の中には、意識すればするほど「これで合っているのかな。」と不安に感じてしまう人も多いと思います。
では「てにをは」を自信をもってマスターするにはどうしたらいいのでしょう。
何事も自分のものとして使えるようになるには インプットとアウトプットが大切です。
そこで、今回は「てにをは」をマスターできる、本読み・人見せ・発言の3つの攻略法を紹介します。
本を読んでインプット
まずインプットにおすすめなのが本を読むことです。
出版されている本などは、何度も編集を繰り返され「てにをは」が正しく使われている状態です。
普段は何気なく読み進めている文章でも、少し立ち止まって「ここは他の助詞を使ったらどのようなニュアンスになるのかな。」と考えてみるのも良いでしょう。
なぜそこでその「てにをは」が使われているのか、どういうニュアンスの違いを受けるのかを感じる練習になります。
メール文などを人に確認してもらう
メールなどで文字を起こして身近な人に「てにをは」を確認してもらうのも良いでしょう。
自分の書きたかったニュアンスが読み手にそのまま伝わっているかを確認することで、「てにをは」の使い分けを練習することができます。
この場合、友人や家族にお願いするのもいいですが、会社の上司などビジネスフレーズなどの経験が豊富な人に確認してもらうのがよりおすすめです。
フォーマルなプレゼンなどの機会を利用
「てにをは」に自信がないうちは、大勢の前で話すことに抵抗を感じるかもしれません。
しかし、フォーマルなプレゼンや発表でどんどんアウトプットしていくことが上達の1つの鍵です。
人に聞いてもらう 機会があればあるほど、多くの指摘やアドバイスをもらうことができるため、次に繋げていくことができ「てにをは」攻略の近道となります。
4.「てにをは」を英語で表現すると
粒子や分子の意味「particle」
「てにをは」を英語で表現したい場合は particle と表します。
particleとは、「粒子」「分子」といった意味で使われることが多いですが、他にも「小辞」や「接頭詞」などという意味を持ち、 Japanese particle で「助詞」などと表されることがあります。
フレーズで使う際は、以下のように言います。
「この文章では、てにをはが合っていないよ。」
The sentence with these particles is ungrammatical.
まとめ
漢文訓読を由来としているように、「てにをは」とは日本固有のものです。
英語などにも助詞のような働きをするものはありますが、日本語の文章には英語ではどうしても表せない繊細なニュアンスというのがたくさん存在します。
そんな 繊細さを支えているのがこの「てにをは」なのです。
「てにをは」を正しく使い分けることは簡単なことではありませんが、社会人として恥ずかしいと思われないためにも日ごろから「てにをは」を意識した訓練を心がけ、美しい日本語を使うようにしましょう。