最終更新日:2020/06/16
ともすればの意味は「場合によっては」です。
「しばしばそうなる傾向がある」というニュアンスで使います。
これと似た言葉に「ややもすれば」がありますが、「ともすれば」よりも「その状態になりやすい」という違いがあります。
この2つは区別しづらいので、この記事で詳しく解説します。
ともすればの由来や類語、対義語も紹介するので、理解する参考にしてみてください。
1.「ともすれば」の意味
ともすれば
意味:場合によっては、しばしばそうなる傾向があるさま
1-1.意味は「場合によっては」
「ともすれば」の意味は「場合によっては」「しばしばそうなる傾向があるさま」です。
そのままの状態にしておくと、悪い方向に進むことを表します。
つまり「なんらかのネガティブな可能性を、伝える時の前置きの言葉」として使います。
また「ともすれば」には正式な漢字がありませんので、ひらがなで表記します。
1-2.語源は古文の「竹取物語」から
「ともすれば」は、昔から使われていた日本特有の言葉です。
語源は、古文の「竹取物語」が始まりとされています。
かぐや姫が月に帰るシーンのときに「ともすれば、人間(ひとま)にも月を見ては、いみじく泣き給(たま)ふ」という表現が登場しています。
これを現代の言葉に訳すと「どうかすると、人のいない間にも月を見ては、ひどくお泣きになる。」という表現になります。
より簡単な文にすると「しばしば人のいない間を見て、月を眺めて激しく泣き崩れる傾向がある」という意味です。
これからも分かるように「ともすれば」は、なんらかの傾向を伝える前置きの言葉として使います。
1-3.「ともすると」も同じ意味
「ともすれば」と「ともすると」は全く同じ意味です。
「ともすると」の方が印象がきつくないので、女性はこちらを使うと良いでしょう。
2.「ともすれば」の使い方と例文
続いて、「ともすれば」の使い方や例文を見ていきましょう。
あなたは、どのような場面で「ともすれば」を使いますか?
何かが、上手くいかないかもしれない事が予想ができる時に、使うことが多いでしょう。
お考えの通り、ネガティブなニュアンスで「ともすれば」は使います。
この「ともすれば」ですが、ビジネスでは外部交渉の時に使いますし、解決策を伴って使うことを良しとしてします。
どんな場面で、どのように使うのか、詳しくは分かりませんよね。
どう使うのかを詳しく見ていきましょう。
2-1.ネガティブなニュアンスで使う
「ともすれば」に続く言葉は「ダメになるかもしれない」「難しいかもしれない」といったネガティブなニュアンスを持つものです。
例えば、会議中に特定の誰かを批判する悪い雰囲気が続いたとします。
そうすると、全体の雰囲気も悪くなり売上も低下しがちですよね。
そんなときに、以下の例文のようにつかいます。
<例文>
特定の誰かを批判するような会議が続いた。ともすれば、全体の成果も悪い方向に進みがちだ。
2-2.外部との交渉に使う
ビジネスシーンでは、「ともすれば」は取引先との交渉に、使うことがあります。
例えばITインフラの構築に向けて、取引先から早すぎる納期の指定をされたとします。
そうなると、普段は考えられないミスによって、システムエラーが起きてしまうという恐れもあります。
これでは、お互いにウィンウィンではありません。
そんなときに、以下のような例で使用します。
<例文>
通常よりも2週間前の納品を希望なんですね。ともすれば、システムの誤作動の確率も増えがちになります。
2-3.解決策と合わせて使う
「ともすれば」はネガティブな可能性を伝える表現です。
先程のITシステムの例でいうならば、ネガティブな可能性を伝えた後に、先方は「じゃあ、どうするの?」と思う可能性があります。
ビジネスでは、そのネガティブな可能性を解決するための、解決策を提示することが必須です。
例に合わせて解決策を出すと、以下のような表現で使用できます。
<例文>
通常よりも2週間前の納品を希望なんですね。ともすれば、システムの誤作動の確率も増えがちになります。
弊社では、もう少々簡易的なシステム構築で、安心してユーザーが使える商品がありまして、これなら納品期限も間に合います。
このように解決策と合わせて使うと、ネガティブな予想に対してマイナスなイメージを持たれることもなく、会話がスムーズに進みますよ。
続いては、「ともすれば」の類語と例文をお伝えします。
3.「ともすれば」の類語と例文
「ともすれば」の類語は数多くあります。
ここでは、 普段使う類語の知識として、知っておいた方が良い4つの言葉を厳選して紹介していきます。
- ややもすれば
- かもしれない
- 可能性がある(かのうせいがある)
- もしかして
では、順番に解説していきます。
類語1.「ややもすれば」
ややもすれば
意味:物事がとにかくそうなりがちであるさま。 どうかすると
「ややもすれば」は、「物事がとにかくそうなりがちであるさま」「どうかすると」という意味です。
漢字では「動もすれば」と書きます。
「ともすれば」と同様に、起こってほしくないことが起きてしまう、といったマイナスなニュアンスで使います。
ほぼ同様の意味ですが「ともすれば」よりも「ややもすれば」の方が、「その状態になる度合い」が強いです。
「ともすれば」は「場合によっては、起きるかもしれない」というニュアンスですが、「ややもすれば」は「何かちょっとしたことで、起きるかもしれない」 というニュアンスです。
以下のような例文になります。
<例文>
最も忙しいシーズンが終わった。ややもすれば仕事も楽な方向に流れがちだ。
類語2.「かもしれない」
かもしれない
意味:断定はできないが、その可能性があること
「かもしれない」は「断定はできないが、その可能性があること」を意味します。
「ともすれば」より「かもしれない」の方がその状態になる可能性が弱いです。
「かもしれない」は「ひょっとしたら〜かもしれない」「もしかしたら〜かもしれない」といったように、断定はできない状態を表現します。
以下のような例文になります。
<例文>
明日は出張なので、忘年会は遅れて参加するかもしれません。
類語3.「可能性がある」
可能性がある
読み:かのうせいがある
意味:物事が実現できそうな見込みがあること
「可能性がある」とは「物事が実現できそうな見込みがあること」「事実がそうである見込みがあること」をいいます。
「ともすれば」との違いはネガティブな可能性に偏っていないところです。
どちらかというと「可能性がある」はポジティブな見込みの表現として使うことが多いです。
以下のように使います。
<例文>
このまま数字を達成していきけば、目標の120%に到達する可能性がある。
類語4.「もしかして」
もしかして
意味:起こってはならない事態を仮に想定するさま
「もしかして」は「起こってはならない事態を仮に想定するさま」をいいます。
「ともすれば」との違いは「もしかして」の方が、予想が不確実であるところです。
「ともすれば」は何らかの予想できる事柄が発生している際に使用します。
しかし「もしかして」は、ある事柄と起こってはならない事態を、例文のようにつなぎ合わせて勝手に推測しています。
<例文>
待ち合わせの時間を過ぎたのに、まだ来ない。もしかして、事故にでもあってるんじゃないか。
このように推測したものの、実際は寝坊していた、携帯に遅刻の連絡が入っていた、なんていう事はよくありますよね。
これくらい予想が不確実なときは「もしかして」を使用します。
続いては、「ともすれば」の対義語と例文を説明します。
4.「ともすれば」の対義語と例文
「ともすれば」の対義語は多くあります。
ここでは、日常でもよく使用する3つの対義語をご紹介します。
- 有り得ない(ありえない)
- 決してない(けっしてない)
- 不可能な(ふかのうな)
では、順番に解説していきます。
対義語1.「有り得ない」
有り得ない
読み:ありえない
意味:あるはずがない
「有り得ない」は「あるはずがない」という意味です。
こうなるかもしれない、という予想を示す「ともすれば」とは対称的に、その予想を完全に否定する表現です。
以下のように使います。
<例文>
突然社長から、売上を現状から1000%達成する目標が通達されたが、人員的にも単価的にも、売上達成は有り得ない。
対義語2.「決してない」
決してない
読み:けっしてない
意味:断じて、絶対にない
「決してない」とは「断じて、絶対にない」という意味です。
こちらも「ともすれば」という可能性を示す表現を、完全に否定する表現ですね。
以下のように使います。
<例文>
彼は、決して約束を破らない人だ。
対義語3.「不可能な」
不可能な
読み:ふかのうな
意味:できないこと、可能ではないこと
「不可能な」とは、「できないこと、可能ではないこと」を言います。
つまり、実現できる見込がないこと、事実でそうである見込みがないことです。
こちらも「ともすれば」という可能性を打ち消していますが、完全に否定はしておらず、実現する可能性が非常に低いさまを表現しています。
以下のように使います。
<例文>
その期限は、計算時間の面から見て、実行不可能な期限だろう。
続いて、「ともすれば」の英語表現を説明します。
5.「ともすれば」の英語表現
「ともすれば」の英語にすると「prone to〜(〜の傾向があって)」「apt to〜(〜しがち)」といった表現ができます。
- prone to〜
- apt to〜
「perhaps」や「maybe」という表現もありますが、これは「もしかすると」という意味です。
ニュアンスとしては、予想に確信のなさを表しているので、確実性が低いため、「ともすれば」の英語表現としては使用されません。
英語1.prone to〜
「prone to〜」は「〜の傾向があって」という意味です。
傾向を予想しているため、確実性の面でみても「ともすれば」の意味に近いですね。
以下の例文のように使用します。
<例文>
His assistant made a mistake. He’s prone to get angry.
(部下がミスを犯した。ともすれば彼は怒るだろう)
英語2.apt to〜
「apt to〜」は「〜しがち」「〜に適合して」という意味です。
予想と合いがちなさまを表現しているので「ともすれば」の意味に近い表現です。
以下の例文のように使用します。
<例文>
If he doesn’t know how to use this system, He is apt to fall into this error.
(彼がこのシステムの使い方を知らないともすれば、誤りを起こしてしまうだろう)
まとめ
「ともすれば」は「場合によっては」という意味です。
由来は『竹取物語』の「ともすれば、人間(ひとま)にも月を見ては、いみじく泣き給ふ」という文章です。
「ともすれば難しい」「ともすればダメかもしれない」などネガティブなニュアンスで使う言葉なので、相手を不快にさせてしまう可能性があります。
なので、ビジネスシーンで使うときは解決策も合わせて使用しましょう。
また「かもしれない」「可能性がある」など、他の類語に置き換えて使ってみるのもいいでしょう。
自身の言葉の幅を広げることで、ビジネスでの交渉力も上がりますから、是非覚えて、使うシーンがあれば、使ってみてくださいね。