最終更新日:2020/05/09
「つつがなく」は「問題なく、順調に」という意味で使われる言葉です。
例えば、無事の知らせを報告する際などに「つつがなく過ごしています」などと言った使い方をします。
しかし、「つつがなく」は使うのが好ましくない場面も存在しますので、正しい使い方を覚えておく必要があります。
そこで、今回は「つつがなく」の正しい意味や使い方、さらには使用を誤りやすいシーンについて詳しく紹介しています。
1.「つつがなく」の意味
1-1.健康に過ごすこと、無事であること、問題ないこと
つつがなく
漢字:恙無く
- 病気などがなく健康に過ごすこと
- 無事であること
- 問題なくあること
病気や怪我がなく、無事に過ごせたことを表すこともあれば、イベントなどがアクシデントなく終了した際にも使えます。
順調に物事が進んでいること全般に対して使える便利な言葉なので、覚えておくといいですね。
1-2.「つつがなく」の語源
「つつがなく」は漢字で「恙無く」と表し 「恙(つつが)」が「無い」ことが語源です。
この「恙」は、「病気や災い、災難」を意味する言葉です。
中国では「恙」の漢字は日常的に使用されており、こちらも「病気・災いごと」という意味で使われます。
また、「ツツガムシ」と呼ばれるケダニが存在しますが、これは感染病をもたらす恐れのある虫、つまり「災いの虫・病気をもつ虫」として、ここでも「つつが」という言葉がネガティブな意味で使われています。
つまり、「つづがなく」は、このような災いをもたらす「恙」が「無い」といっているわけですので、先ほど紹介したように「問題なく、無事で」といった意味になるのです。
2.「つつがなく」の使い方と例文
2-1.トラブルが起こる可能性がある中、何もなかった
「つつがなく」は、「つつがなく終えました」などの使い方をすることが多く、「問題なく無事に終えました。」という意味で使われます。
単に「無事に終えました。」という言い方もできますが、この「つつがなく」には、何かのイベントや行事においてトラブルなどが起こりえる状態の中、無事に何事もなかった、というニュアンスが込められています。
「つつがなく」は 目上の人に対しても違和感なく使うことのできる用語ですので、ビジネス上でも使えます。
それでは、実際に「つつがなく」を使った例文を見ていきましょう。
2-2.「つつがなく」の例文
<例文>
長旅でしたが、つつがなく終わりを迎えようとしています。
災いに巻き込まれたり病気にかかる可能性のある旅を、何事もなく無事に終えようとしているという意味で、相手に無事の知らせを伝える時などに使うことができます。
<例文>
寒い季節となりましたが、つつがなくお過ごしください。
風邪などを引きやすい季節でも、病気などをせず元気に過ごしてください、という意味を丁寧に伝えることができますね。
<例文>
こちらはつつがなく暮らしていますので、安心してください。
問題がなく平和に過ごしている、という意味が伝わり相手に安心感を与える文章になっていますね。
このように「つつがなく」は 自分の無事を知らせたり、相手の健康・平和などを伝えたい時に丁寧に表現しやすい用語の1つです。
2-2.結婚式、お葬式、お見舞いでは「滞りなく」を使う
丁寧な表現で使いやすい「つつがなく」ですが、実は使ってはいけないシーンもあるので社会人のマナーとして覚えておくとよいでしょう。
「つつがなく」が好まれないシーンとしては、 結婚式や お葬式、 お見舞いなどです。
ニュアンス的には「問題なく、スムーズに、順調に」というのが伝わりますが、結婚式やお葬式などでは、病気や災いなどの事態を想定したくない場面ですよね。
そのため、これらの場合には、「つつがなく」とニュアンスの似た 「滞りなく(とどこおりなく)」を使うのがベターで、以下のように使います。
<例文>
- 結婚式は滞りなく進行しました。
- お陰様で、葬式も滞りなく終えることができました。
このように、災難が起こることを前提とするのが失礼な場面では、「滞りなく」に言い換えて伝えるようにしましょう。
続いては、「つつがなく」の類語・言い換え表現について解説していきます。
3.「つつがなく」の類語・言い換え表現
「つつがなく」は、「滞りなく」と同じ意味と紹介しましたが、他にも「 平穏無事に」「 何事もなく」などの類語があります。
「つつがなく」とほぼ同じ意味で、「つつがなく」より馴染みがあるかもしれませんね。
単純に事の経過を伝えるだけでなく、これらの言葉を一言添えるだけで相手にホッと安心してもらうことができます。
ではそれぞれの意味を詳しく見ていきましょう。
類語1.平穏無事に
「平穏無事」は、 「穏やかで特に変わったことがない様子」という意味です。
「平穏」は静かで穏やかなこと、「無事」は特に変わったことがないことで、その2つを重ねて何もない穏やかな様子を強調しています。
以下の例文のように使います。
<例文>
季節の変わり目ですが、平穏無事に毎日を過ごしております。
類語2.何事もなく
「何事もなく」は、文字そのままの意味で 「思いがけないことがなく」です。
「つつがない」は現在進行形のことにも使いますが、「何事もなく」は以下のようにイベントが完全に終わったあと、振り返る時に使うことが多いです。
<例文>
先日開催したイベントも、何事もなく終了いたしました。
4.「つつがなく」の英語とは
「つつがなく」は、英語で以下のように表すことができます。
- without incident :災いや災難がなく
- safely :無事に、安全に
- safe and sound?:無事だった?(つつがなく終わった?)
では1つずつ確認していきます。
英語1.without incident :災いや災難がなく
英語でも「災いや災難がなく」のようなニュアンスで without incident という言葉が使われます。
例えば以下の例文のように使います。
<例文>
We succeed the big party without any incident.
(つつがなくパーティを終えることができました。)
英語2.safely :無事に、安全に
「safely」も「without incident」と同じように、 「無事に、安全に」という災いがなかったというニュアンスで使います。
<例文>
I hope you enjoying rest of winter safely.
(残りの冬もつつがなくお過ごしくださいね。)
英語3.safe and sound?:無事だった?(つつがなく終わった?)
日常会話では、「無事だった?(つつがなく終わった?)」などという意味で safe and sound? という言葉も多用されますので覚えておくとよいでしょう。
例えば以下のように使います。
<例文>
I hope you all got home safely. – We are all safe and sound.
(無事に家に到着されましたか?- みんな無事に(つつがなく)着きました。)
英語には日本語のように敬語などの表現がないので、基本的にはどのような場面でも全てのワードが使えます。
しかし、例えば親しい仲などでは「無事だよ」というのを単に 「(I am)Safe and sound.」 と言ったりしますが、目上の人やフォーマルな文章では、言葉を省略せずに 「I am safe and sound. Thank you.(はい、つつがなく。ありがとうございます。)」と伝えた方が丁寧です。
心配してもらった時などは、 最後の “Thank you.” の一言も忘れずに付けるのがおすすめです。
まとめ
「つつがなく」は 「順調に、問題なく、無事に」という意味です。
今まで「無事に終了しました」などを多用していた人は、これから「つつがなく終えました」とさりげなく変えてみることで、周りからの評価がアップするでしょう。
ただし、結婚式、お葬式、お見舞いなどの時に使うのは好まれません。この場合は「滞りなく」を使いましょう。
使い分けに注意しながら、美しい日本語を正しく使える大人になりましょう。