
先輩が「承りました」と言っているのを聞いて、単なる「了解しました」的な意味かな、と思っていた人はいないでしょうか。
今回は、「承る」の本来の意味や使い方、「受け賜る」との違いや類語、さらに英語表現についても詳しく紹介していきます。
1.「承る」とは
「承る」は「うけたまわる」と読み、以下の2つの意味があります。
- 謹(つつし)んで聞く・拝聴する
- 謹んで受ける・いただく・お受けする・引き受ける
これらはそれぞれ、「聞く・受ける」の謙譲語です。
謙譲語とは、目上相手に話をしたり丁寧な対応をしたりする際に、 自分がへり下ることで相手の立場を持ち上げる言い方を言います。
つまり「承る」は、自分「が」聞いたり受けたりする行動を指す言葉です。
「承る」には「了解しました」という意味でも使えますが、もともとはこの2つの意味があるということを覚えておきましょう。
2.【注意】「承る」と「受け賜る」の違いとは
「受け賜る」は「受ける」と「賜(たまわ)る」が合わさってできた言葉です。
「承る」と「受け賜る」は以下のような違いがあります。
- 【承る】⇒助言や厚意、依頼などの事のやりとりの際に使う
- 【受け賜る】⇒品物や恩恵をもらった時に使う
「賜る」は「もらう」の謙譲語なので、 「受け賜る」は「いただく・頂戴する」という意味があります。
「受け賜る」は「承る」同様目上の人に対して使いますが、「承る」とは使うシーンが異なるので区別して使いましょう。
「受け賜る」を使った例文を以下に紹介しますので、「承る」とのニュアンスの違いを確認してみてください。
- 先日、部長から旅行のお土産を受け賜りました。
- 社長からは非常に光栄なお話を受け賜りました。
3.「承る」の使い方
謙譲語である「承る」は 目上の人や取引相手に対して使う言葉です。
「承る」には「聞く(伝え聞く)」と「受ける」という意味があります。
以下で、それぞれの意味での「承る」の使い方について詳しく説明していきます。
3-1.「聞く」という意味での「承る」
「聞く」という意味での「承る」は、以下の謙譲表現で用いられます。
- 慎(つつし)んで聞く
- 拝聴(はいちょう)する
例えば、目上の方から意見をもらった時に 「○○様の貴重なご意見を聞きました」ではなく「貴重なご意見を承りました」と言います。
このように目上の人、お客様からの意見や要望などを聞いた、耳に入れたという際に使います。
以下に「聞く」のニュアンスで使える「承る」の例文を意味と一緒に紹介しますので確認してみて下さい。
- あいにく佐藤は外出しております。私で良ければご用件を承ります。(あいにく佐藤は外出しております。私で良ければご用件をお聞きいたします。)
- 先日お客様からのクレームを承りました。(先日お客様からのクレームを拝聴しました。)
3-2.「伝え聞く」という意味での「承る」
「聞く」という意味での「承る」は、 人づてに何かを聞いた際の「伝え聞く」というニュアンスも表すことができます。
例えば、上司に対しての会話などで、以下のようなフレーズを耳にすることがあるでしょう。
次回の企画については、田中さんより承っております。
この場合、企画について上司から直接聞いたのではなく、田中さんを介して伝え聞いたというニュアンスです。
この表現では、「田中さんから聞いています」のように単に「聞く」という意味でも問題ありません。
しかし、シーンによってはややニュアンスにズレが生じる可能性もあるため、「伝え聞く」という意味もあることを知っておきましょう。
3-3.「受ける」という意味での「承る」
「受ける」という意味での「承る」は、日常的なシーンでも耳にします。
「受ける」の意味で「承る」が使われる際は、以下の謙譲表現があります。
- 慎んで受ける・お受けする
- いただく
- お引き受けする
以下に「受ける」という意味での「承る」の例文を意味と一緒に紹介していますので、ニュアンスを確認してみましょう。
- 結婚式のプラン要望を承りました。⇒結婚式のプラン要望をお引き受けしました。
- 上田さんからためになる話を承りました。⇒上田さんからためになる話をいただきました。
- 残念ながら今回はご依頼を承ることはできません。⇒残念ながら今回はご依頼を受けることができません。
4.「承る」の類語
「承る」の言い換え表現には「聞く」と「受ける」のそれぞれの意味で、以下の言葉を使うことができます。
では、それぞれの用語別に詳しい意味や使い方を確認していきましょう。
4-1.【聞く】伺(うかが)う
「伺う」は、「聞く」の謙譲語です。
目上の方などから話や意見を聞く際や、何かを訪ねる際に使います。
「承る」との使い分けは以下のように理解しましょう。
表現 | 使い方 | |
承る | 謙譲語 | 一方的に「聞く」場合に使う |
伺う | 謙譲語 | 自分から「聞く・尋ねる」場合も使える |
では、以下の例文で「伺う」のフレーズを確認してみましょう。
- 先日の提案の件は、部長より伺いました。
- この資料についてですが、1点伺いたいことがあります。
4-2.【聞く】承知(しょうち)する
「承知する」は、 「事を承って知る」「聞き入れる」という意味があります。
「承知」の「承」は「承る」の漢字ですので、謙譲表現です。
しかし「承知」という言葉としては、謙譲語ではなく丁寧語です。
「承る」との使い分けは以下を参考にしてみましょう。
表現 | 使い方 | |
承る | 謙譲語 | 自分がへりくだり相手を立てたい時に使う |
承知する | 謙譲表現の丁寧語 | 相手に対して丁寧な言い方をしたい時に使う |
「承知する」は目上の方にも使うことができますが、 自分をへり下らせて相手を立てたい場合には「承る」や「伺う」といった謙譲語を使うようにしましょう。
では、「承知する」の例文を以下に紹介していきます。
- 会議の日程について、承知しました。
- イベントの変更箇所、承知しております。
4-3.【受ける】かしこまる
「かしこまりました」という場合には「(謹んでお言葉を)受けます」というニュアンスです。
「かしこまる」の漢字表記は 「畏まる」で、謹んだ態度を表します。
「かしこまる」は謙譲表現なので、「受ける・受け入れる」という意味で「承る」を言い換えたい時も失礼なく使うことができます。
表現 | 使い方 | |
承る | 謙譲語 | 目上の方などに対して使える |
かしこまる | 謙譲語 | 目上の方などに対して使える |
では、例文で「かしこまる」のフレーズを見ていきましょう。
- (提出期限が近いと言われて)ーかしこまりました。本日中に提出します。
- (注文をもらって)ーかしこまりました。すぐにお持ちいたします。
4-4.【受ける】了解する
「了解する」は 「事を知り理解する・受け入れる」という意味です。
「了解する」は、ビジネスシーンでも「承る」の言い換え表現として最も多く使われています。
しかし、「了解しました」は謙譲語でも尊敬語でもなく、ただの丁寧語ですので、 目上の方に対しては「承る」を使うようにしましょう。
表現 | 使い方 | |
承る | 謙譲語 | 目上の方などに対しても使える |
了解する | 「了解しました」は丁寧語 | 相手に丁寧な受け答えをしたい時 |
では、以下で「了解する」のフレーズを紹介します。
- 昨日の件について、了解しました。
- 今回はご欠席ということで、了解しました。
5.「承る」の対義語
「承る」の反対語は以下のような言葉があります。
では、それぞれの言葉について詳しく確認してみましょう。
対義語1. 申し上げる
「申し上げる」は「言う」の謙譲語です。
そのため、自分が目上の人に対して何かを発言する時に使います。
ただ「言います」というよりも、「申し上げます」を使った方が、相手に敬意を伝えることができますね。
では、フォーマルな場面での「申し上げる」の使い方を以下の例文で確認してみましょう。
- 心より深くお悔み申し上げます。
- 先日のご支援について、心より感謝申し上げます。
対義語2. 拒否する
「拒否する」は「受ける」の反対語です。
意味的には「承る」の反対語ですが、ビジネスシーンなどでは「拒否します」と丁寧に伝え多としても失礼にあたります。
そのため、 フォーマルなシーンでは「拒否する」場合は「承ることができません」「お受けできません」を使いましょう。
では、以下で「お受けできません(拒否します)」の例文を紹介します。
- 前回いただいた要望ですが、残念ながら承ることができません(拒否します)。
- 本日は満席のためお受けできません(拒否します)。
6.「承る」の英語表現
「承る」を英語で使う際は、 「了解しました」「承知しました」というニュアンスでまとめることが多いです。
そのため以下のフレーズを多用します。
- I got it.(了解しました。)
- I understand. (承知しました。)
文章として使いたい場合も以下の例文のように使います。
- I got what you requested me yesterday. (先日の要望、承りました。)
- I understand that you attend this meeting.(会議への出席の件、承りました。)
まとめ
「承る」は「聞く・受ける」の謙譲語で、「謹んで聞く・拝聴する」「謹んで受ける・いただく」という意味です。
「承る」が事を受けるのに対し、「受け賜る」は品物などをもらった際に使うという違いがあります。
これからは、「承る」と「受け賜る」の区別も気にしていきましょう。
今回は、「承る」の類語も合わせて紹介しましたが、解説した通り「承る」とニュアンスが違い、使えるシーンに限りがある表現もありました。
「承る」を言い換えたい時には、相手の立場をしっかり見極めて失礼のないように使い分けたいですね。