最終更新日:2020/06/02
「揶揄(やゆ)」には「からかう」という意味があります。
新聞記事などで「政治を揶揄する」や「現代社会を揶揄する」といった表現を目にすることもありますよね。
しかし、この場合は、政治や現代社会を「からかう」ということではなく、「皮肉を込めて非難する」といったニュアンスになります。
本記事では「揶揄」の意味や使い方・例文、類語、対義語、英語表現を徹底的に解説します。
記事を読み終わるころには、「揶揄」という言葉を使いこなせるようになっているでしょう。
1.「揶揄」の読み方と意味
意味は「からかうこと」
揶揄
読み方:やゆ
意味:からかうこと。
「揶揄」は「からかうこと」を意味する言葉です。
「揶揄」の後に「する」を付けると「揶揄する」という動詞になり、「からかう」を意味します。
「皮肉や嫌味を込めた言葉で相手をからかう」というニュアンスを持つ、非常にネガティブな表現と言えるでしょう。
また、「揶揄」は、「非難する」「軽蔑する」いったニュアンスで使われることもあります。
読み方は「やゆ」
「揶」は、音読みで「ヤ」と読み、訓読みでは「からか(う)」と読みます。
「揶」は、それ自体に「からかう」「あざける」という意味を持つ漢字です。
「揄」は、音読みで「ユ」「トウ」と読まれます。
「揄」にも「揶」と同様に、「からかう」や「なぶる」といった意味があります。
「揶」と「揄」は、どちらも「からかう」という意味を持ち、同じ意味を重ねているというわけです。
「からかう」は漢字で「揶揄う」と書く
「揶揄」の意味である 「からかう」は、漢字で書くと「揶揄う」です。
ただし、一般的な表記ではないため、正式な文書や、新聞、放送(テレビ)はもちろん、学校教育でも使われていないようです。
日常生活の中でも、ビジネスシーンにおいても、「からかう」はひらがなで表記するのが良いでしょう。
2.「揶揄」の使い方と例文
相手をからかう場合に使われる
「揶揄」は、「揶揄する」や「揶揄される」といった形で使われる言葉です。
「揶揄する」は、相手の容姿、性格、行動、言動などをからかう場合に使われます。
逆に「からかわれる」場合は、「揶揄される」という言い方をされます。
「揶揄」は 相手をからかうネガティブな表現なので使い方には気をつけましょう。
<例文>
- 飲み会の場は無礼講だと言うが、上司や先輩を揶揄するのはいけない。
- クライアントの発言は、他社を揶揄した内容だと思った。
- 取引先の人に同僚のことを揶揄されて、とても腹が立った。
嫌味や皮肉を含む場合
「揶揄」は 相手に対して嫌味を言う場合や、皮肉る場合にも使われます。
相手への憎悪や嫌味といった気持ちが、皮肉めいた表現になって現れ、「揶揄」したり、「揶揄」されたりといったことが起こるのでしょう。
<例文>
- 君の作った提案書は中学生レベルだと上司に揶揄された。
(⇒ 上司に嫌味を言われた)
- 今朝の朝刊のある記事の中に、現代のスマホ社会を揶揄した挿し絵があったが、あれは秀逸だった。
(⇒ 現代のスマホ社会を皮肉っている)
相手を非難する場合
「揶揄」には「相手をあざけ非難する」という意味もあり、相手を非難する場合にも使われます。
「非難」とは、「相手のミスや欠点などを責めること」です。
【注意】相手を揶揄する表現とは?
「揶揄」は、非常にネガティブな表現です。
相手を揶揄するつもりがなくても、つい口を滑らせて相手を揶揄していることになってしまうこともあるでしょう。
相手を揶揄することにならないように、同じ内容でも、言い方には気を付けましょう。
- 【○】彼は、自分の年齢よりも若い人のファッションが好きなようだ。
【×】彼は、年相応の格好が出来ていないようだ。
- 【○】彼女は、いつも愛想が良く、上司に好かれている。
【×】彼女はいつも上司にばかり愛想を振りまいている。
心に思うことがあったとしても、それを口に出さないのが社会人のたしなみです。
あからさまに相手を「揶揄する」ことはやめましょうね。
3.「揶揄」の類語
「揶揄」には以下のような類語があります。
それぞれを、順に見ていきましょう。
類語1.嘲笑(ちょうしょう)
嘲笑
読み方:ちょうしょう
意味:ばかにして笑うこと
「嘲笑」は「ばかにして笑うこと」を意味する言葉です。
「嘲」は、訓読みで「あざける(嘲る)」と読み、「(相手を)ばかにして悪く言ったり笑ったりすること」を意味します。
「揶揄」は単に「からかう」ことを意味しますが、「嘲笑」には「からかって笑う」というニュアンスが含まれます。
また、「嘲笑」を動詞の形にすると「嘲笑う(あざわらう)」となります。
「嘲笑う」は、人をばかにして高笑いをするイメージです。
一方、「嘲笑」や「嘲る(あざける)」には鼻で笑うといったニュアンスを持つことを覚えておくと良いでしょう。
<例文>
- 他人を嘲笑するなど、決してしてはいけない。
- 彼の態度は私に対する嘲笑かのように受け取れた。
類語2.愚弄(ぐろう)
愚弄
読み方:ぐろう
意味:人をばかにしてからかうこと
「愚弄」は「人をばかにしてからかうこと」を意味する言葉です。
「揶揄」と同様に「愚弄する」や「愚弄された」というように使われます。
「愚弄」は「揶揄」に比べて「人をばかにする」というニュアンスの強い言葉です。
<例文>
- 傍から見ているだけでも、あれは堪えられないほどの愚弄であった。
- あの国の態度は、まるで日本が愚弄されているように感じる。
類語3.非難(ひなん)
非難
読み方:ひなん
意味:相手のミスや欠点などを責めること
「非難」という言葉には「相手のミスや欠点などを責めること」という意味があります。
「揶揄」の「からかう」というニュアンスとは少々異なり、「相手を責める」という意味合いが強い言葉です。
<例文>
- 私はあなたを非難しているわけではありません。
- 会議での彼の発言は、後に非難の的となった。
4.「揶揄」の対義語は「称賛」
称賛
読み方:しょうさん
意味:ほめたたえること
厳密に言えば「揶揄」には反対の意味を持つ対義語は無いため、ここでは「嘲笑」の対義語である「称賛」をご紹介します。
「称賛」は、「相手をほめたたえる」という意味の言葉です。
改まった場面で使われることが多く、他人のすぐれた行為や業績などをほめる際につかわれます。
また、「称賛」を表すのに「賞賛(しょうさん)」という漢字を使ってもかまいません。
しかし、「賞賛」には「賞金やトロフィーなどを渡して物質的にほめる」といったニュアンスを持つため、状況に応じて使い分けると良いでしょう。
尚、「賛」の代わりに「讃」を使った表記も見られますが、「讃」の方は常用外漢字です。
<例文>
- 優秀な成績を残した彼は、社員一同から称賛された。
- 彼女のボランティア精神には、多方面から称賛の声が上がった。
5.「揶揄」と「比喩(ひゆ)」の違い
「揶揄」の類語と間違われる言葉として、「比喩」があります。
漢字が似ているせいかもしれませんが、意味は全く異なるので注意してくださいね。
「比喩」の意味は「たとえること」
比喩
読み方:ひゆ
意味:物事の説明や描写に、ある共通点に着目した他の物事を借りて表現すること。
「比喩」とは「物事の説明や描写に、他の物事を借りて表現すること」です。
例えば、以下のような場合を「比喩している」と言えます。
- 看板の背景色は雪のような真っ白にしよう。
(⇒ 色を雪のようにたとえている)
- 迷路に紛れ込んだような厳しい案件だった。
(⇒ 厳しい状況を迷路にたとえている)
また、「比喩」にはいくつかの種類があります。
直接的に物事に例えることを「直喩」と呼び、一方「暗喩」と言えば、例えをほのめかしていることを表します。
「比喩」には「からかう」という意味合いはない
「揶揄」という言葉を形作る漢字のどちらにも「からかう」という意味があります。
しかし、「比喩」の「喩」は「たとえること」を意味する漢字です。
似ているようで全く違う意味の言葉ですので、混同しないように注意しましょう。
6.「揶揄」の英語表現
「揶揄」の英語表現には、以下のものがあります。
それでは、順に紹介します。
英語1.「からかい」は「banter」「teasing」
「banter(バンター)」と「teasing(ティージング)」は、どちらも「軽いおふさげ程度のからかい」といったニュアンスの言葉です。
また、「banter」には「冗談」という意味もあります。
特にイギリスでは、仲間内で交わされる「軽い冗談」や「冷やかし」といったニュアンスで使われます。
<例文>
- Do not take it seriously. It is just banter.
(真剣に受け止めるなよ。ただの冗談だよ。)
- He is fed up with the “teasing” on the TV program.
(彼は、その番組内の「からかい」にはうんざりしている。)
英語2.「揶揄する」は「tease」「make fun of ~」
「 揶揄する」は、「tease(ティーズ)」「make fun of ~」という英語で表現されます。
「tease」は「からかう」「いじめる」といった意味の動詞です。
また、「make fun of ~」は「~をからかう」「~を揶揄する」という意味のイディオムです。
<例文>
- Please do not tease me.
(私を揶揄しないでください。)
- You should not make fun of foreigners.
(外国人を揶揄するべきではない。)
まとめ
「揶揄」は「やゆ」と読み、「からかう」という意味があります。
そして、「からかう」は、漢字で「揶揄う」と書かれます。
また、「揶揄」は「嘲笑」「愚弄」「非難」といった類語で言い換えることもできますが、状況に合わせて使い分けましょう。
漢字が似ているせいか「たとえること」を意味する「比喩」と間違われることもありますが、混同しないように気をつけてください。
「揶揄」は非常にネガティブな表現です。
何事も穏便に進めたいビジネスシーンでは、相手を「揶揄」したり、されたりという事が起きないと良いですね。