
「人事を尽くして天命を待つ」とは、 努力をしたら結果に関わらず後悔はしないという意味です。
そのため、大切な試験の後に結果が気になり、仕事などが手に付かない人への励ましの言葉としてよく使用されています。
今回は、「人事を尽くして天命を待つ」の意味や成り立ちなどについて紹介します。
友人や後輩へかける言葉として正しく使用し、説明できるようにすみずみまでチェックしてくださいね。
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1.「人事を尽くして天命を待つ」の意味
意味はできる限りの努力をしたらばあとは天の意思に任せよう
人事を尽くして天命を待つ
読み方:じんじをつくしててんめいをまつ
意味:できる限りの努力をしたらばあとは天の意思に任せよう、という心境を表す言葉
つまり「人事を尽くして天命を待つ」は「全力を尽くした上で天任せ」ということになり、転じて「全力を尽くしたので天が下したとした結果はどうであれ、後悔はないだろう」という心境も表す言葉なのです。
「人事」と「天命」の意味
次は、「人事を尽くして天命を待つ」の中に現れる「人事」と「天命」の意味について解説します。
「人事」とはもともと人間の力でできること、という意味で、自分の力でやれることを全てやることを表しています。
「天命」は、天から与えられた使命を表しており、神様が決定される事柄という意味です。
つまり、直訳すると自分の力を出し切ったら、後は神様が結果を決めた結果を待つしかない、となります。
神様がどんな結果を決定するのか、人間の力では決められないため、「後悔する必要がない」「後悔しない」という心境を表す意味になるのです。
2.「人事を尽くして天命を待つ」の成り立ち
「人事を尽くして天命を待つ」は、相手への尊敬や配慮する気持ちが込められた大切な言葉です。
さらに、言葉の詳細を説明することで、よりあなたの気持ちが伝わります。
そこで、「人事を尽くして天命を待つ」の成り立ちやより詳しい意味を解説していきます。
2−1.中国の古文にから生まれたことわざ
「人事を尽くして天命を待つ」は、 日本ではなく中国で生まれたことわざです。
「読史管見(とくしかんけん)」という南宋時代の初期に書かれた古典文書に記されていた考え方がもとになっています。
この文書は儒学という宗教の考え方を、胡寅という学者がまとめたもので、現代でも研究されることが多い文書です。
その文書に「人事を尽くして天命を待つ」という言葉が書かれており、日本でも使われるようになったのです。
2−2.四字熟語は「人事天命」
「人事を尽くして天命を待つ」は 「人事天命」という四字熟語で表される場合があります。
意味は変わりませんが、「読史管見」は漢文で記された文書です。
そのため、もともと漢字だけで記されら文書であることを考えると、「人事天命」という言葉から「人事を尽くして天命を待つ」が作られたといえるでしょう。
3.「人事を尽くして天命を待つ」使い方と例文
「人事を尽くして天命を待つ」を使用する場合、基本的にはこの言葉だけで使用します。
ただし、いきなり言われただけでは正しく意味やあなたの気持ちを伝えられない可能性があります。
そして主に、 励ましたり自分の気持ちを鎮めたりするために使用されています。
意味まで説明して、あなたの真意を適切に伝えてくださいね。
<例文>
- 試験は人事を尽くして天命を待つことが大切です。
- 人事を尽くして天命を待つ覚悟で、今日まで受験勉強をしてきたので、テストを前にしても動揺はしない。
- あなたほどの人なら、あとは人事を尽くして天命を待つだけでしょう。
3−1.「運命」と間違わないように
「人事を尽くして天命を待つ」を使用する場合、「天命」を「運命」は間違いやすいので、使うときは注意しましょう。
同じ意味だと思われていますが、実は「天命」と「運命」には違いがあります。
「運命」は人の力を超えためぐり合わせを意味しますが、 人間の力で変えることができるものです。
つまり、人の力で変えられない「天命」は待つしかありませんが、「運命」は待つ必要がありません。
例えば、「この本をとったのは運命だ」という状況だと、「本をとる」という行動によって加えられた運命ですよね。
「天命」と「運命」は似ていますが、このように意味が大きく異なってしまいますので間違えないようにしてくださいね。
4.「人事を尽くして天命を待つ」の類語
「人事を尽くして天命を待つ」には以下の2つの類語があります。
- 「果報は寝て待て」
- 「我が事終わる」
それぞれ説明します。
「果報は寝て待て」
「人事を尽くして天命を待つ」と似た意味のことわざは「果報は寝て待て」です。
運は人の力ではどうにもできないため、焦らずに時期を待つことが良いという意味です。
一見すると待っていれば良いことが巡ってくるという意味ですが、「果報」とは前世での行いの結果として、現世での報いを受けることを表します。
つまり、人事を尽くさなければ良い結果は巡ってこないため、「人事を尽くして天命を待つ」と同様の意味となるのです。
<例文>
- 全力で試験を受けたんだから果報を寝て待とう。
- 努力をしたなら、後は果報を寝て持つだけです。
- 果報は寝て待つことが大切ですよ。
「我が事終わる」
「我が事終わる」には、自分に関わることを全て終えたことを意味することわざです。
暗い意味のように見えますが、 やることを全て終えたため後は結果を待っている、という解釈ができます。
そのため、「人事を尽くして天命を待つ」の類語として扱われており、「人事を尽くす」ことを端的に表した言葉です。
<例文>
- 今日で我が事が終わりました。
- 我が事終わり、後は結果を待つだけです。
- 我が事終わるまで、甘いものは我慢する。
5.「人事を尽くして天命を待つ」の英語表現
「人事を尽くして天命を待つ」には以下の2つの英語表現があります。
- 「Do the likeliest, and God will do the best.」
- 「God helps those who help themselves.」
それぞれ説明します。
5−1.「Do the likeliest, and God will do the best.」
「人事を尽くして天命を待つ」に近い英語表現として、「Do the likeliest, and God will do the best.」が挙げられます。
訳すると、 最もふさわしいことをすれば、神も最善を尽くしてくれる、という意味となります。
つまり、成功に見合った努力をすることが重要であり、適切な行動をすれば必ず成功することを表しています。
人事を尽くせば結果は現れる、という解釈から「人事を尽くして天命を待つ」の英語表現として適切なのです。
5−2.「God helps those who help themselves.」
「God helps those who help themselves.」は「天は自ら助くる者を助く」という英語のことわざです。
このことわざは、自立して、努力する人には天の助けがあり、必ず幸福になるという意味を含みます。
努力の有無が結果を作るという点が「人事を尽くして天命を待つ」と共通しています。
まとめ
「人事を尽くして天命を待つ」は、努力を尽くせば後悔しない結果が訪れる、ということを表したことわざです。
そのため、自分や相手の努力を認めた上で、ソワソワする気持ちを鎮める励ましの言葉となります。
また、「人事を尽くして天命を待つ」はもともと中国のことわざですが、さまざまな国に同様の言葉があり、古くから根付いた考え方です。
国や時代に関わらず気持ちを伝えられる言葉であるため、相手の気持ちを励ませる言葉として使用してくださいね。