
「不徳の致すところ」は、 「徳が足りなかったために引き起こしてしまったこと」という意味です。
政治家や芸能人の謝罪会見などで、「不徳の致すところです」というフレーズをよく耳にしますね。
このように謝罪の際に使う「不徳の致すところ」は正しい使い方ができていないと、誠意が伝わらない可能性があります。
今回は、「不徳のいたすところ」の意味や正しい使い方、謝罪例文、類語などを詳しく解説しているので、使い方に不安のある人は参考にしてください。
1.「不徳のいたすところ」の意味
まず「不徳の致すところ」の意味と読み方を説明します。
不徳の致すところ
読み:ふとくのいたすところ
自分の品性や道徳心の欠如が原因となって引き起こしてしまったこと・自分のせいで引き起こしたこと
単に「失敗してしまった!」ではなく 「自分の弱さのせいで・自分の道徳心が欠けているため」とかなり大きなものを示します。
「不徳のいたすところ」を分解すると「不徳」「いたすところ」ですね。
それでは、それぞれの単語の意味も確認してみましょう。
- 【不徳】:人徳に反すること・徳が備わっていないこと
- 【いたす(致す)ところ】:「する」の謙譲語+「ところ」⇒「引き起こしてしまった事柄」
「徳」は、「身に染みた品性・善や正義に従う道徳心」という意味です。
2.「不徳のいたすところ」の使い方
「不徳の致すところ」は、 相手に迷惑をかけた時の謝罪で使います。
それも、道徳心やルールなどに沿わなかったために引き起こした迷惑や失敗で用いられる表現です。
例えば、不倫をした有名人が「この度は、私の不徳の致すところであり、申し訳ありません」と謝罪をします。
これは、不倫がモラルに反すること、社会的規則に沿わないことであり、「自分に徳が欠けていたせいでその正義・モラルに反してしまった」ことを誤っているのですね。
このように、頭の上がらないような迷惑をかけてしまった時に使います。
それでは、「不徳のいたすところ」を使った例文を以下で確認していきましょう。
2-1.日常的な謝罪では使わない
「不徳のいたすところ」は、 品性や徳に欠けたために引き起こした迷惑やミスに対して使うので、日常的な謝罪には用いません。
自分のせいで迷惑をかけて、心から反省しているニュアンスは伝わるのですが、日常的な小さな失敗に対しては、やや大げさです。
そのため、使いすぎると「型にはめて謝っているだけでは?」と相手への不信感を与える可能性があります。
また、いざ頭が上がらないほどの迷惑をかけてしまった時に、本当の誠意が伝わりにくくなります。
2-2.日常的に使える謝罪例文
例えば会議に遅刻してしまった場合、取引先からのクレーム対応、出来ることはやった上でのミスなどの場合は、品性が疑われるほど人徳に反した失敗ではありません。
こういう場合には、「不徳のいたすところ」の代わりに以下の謝罪例文を使ってみてください。
反省の意を見せることは大事ですが、いつも大げさに謝罪すればいいわけではありません。
場面に合った謝罪のフレーズを選ぶことが、相手にとっても一番誠意が伝わるでしょう。
2-3.相手のミスには使わない
いくら相手から迷惑をかけられて腹が立っていたとしても、相手に対して「今回の件は、そちらの不徳のいたすところだと思います」などという言い方はしません。
なぜなら「不徳のいたすところ」は、 あくまでも自分の過失に対して謝罪をする時の用語で、相手への指摘に使うものではないからです。
そして、「いたす(致す)」とあるように、これは謙譲表現で自分をへりくだらせたニュアンスなので、相手への行為に対して謙譲表現を使うのは間違っています。
3.「不徳のいたすところ」の類語
「不徳のいたすところ」は、品性に関わるような失敗をした時に使う言葉ですので、まったく同じニュアンスの類語はあまりありません。
しかし、 「私が引き起こしたことが迷惑をかけました」というニュアンスを伝える時は、以下の言い換え表現があります。
- 私の所為(せい)で
- 私の責任で
それではそれぞれの用語を詳しく見ていきましょう。
3-1.私の所為(せい)で
「私の所為で」の「所為」には、 「しわざ・行い・ある行動が引き起こす結果」という意味を持ちます。
つまり、「私の所為で」は「私が引き起こしてしまった行動で」というニュアンスです。
ただし、ビジネスシーンなどの謝罪文で「私の所為で」と使うのはややフランクに聞こえます。
これは、日常的な会話での謝罪などで使うようにしましょう。
それでは、以下で「私の所為で」を使った例文を紹介します。
- 私の所為でこのような事態になった。本当にごめんなさい。
- 私の所為で鳥が逃げてしまった。反省してます。
3-2.私の責任で
「私の責任で」は、文字通り 「自分が行った事に責任があって」というニュアンスがあります。
非を受け止め、反省の誠意を表すことのできる表現です。
「不徳のいたすところ」ほど重々しく大げさではなく、ビジネスシーンでも日常的に使えます。
以下の例文で、使い方を確認してみましょう。
- 今回の問題は私の責任であります。大変申し訳ございませんでした。
- 私の責任でこのような事態になってしまいました。心よりお詫び申し上げます。
4.「不徳のいたすところ」の英語表現
「不徳のいたすところ」は、日本語特有のニュアンスがあり英語で自然に表すことは困難です。
そのため、英語では 「本当に反省しています」「心からお詫び申し上げます」といった表現で謝罪します。
英語での謝罪文としては、以下のフレーズを活用してみましょう。
- I’m truly sorry.(心から申し訳ないと思っています)
- I deeply apologize.(深くお詫び申し上げます)
何に対して反省しているかを付け足したい時には、以下の例文のようにそれぞれのフレーズの後に説明を入れます。
- I am truly sorry that our product cause some troubles.(私どもの製品に欠陥がありましたこと、誠に申し訳ございません。)
- I deeply apologize for being late to such a important meeting.(このような大事な会議に遅れまして、深くお詫び申し上げます。)
まとめ
「不徳のいたすところ」は、「自分の不徳が原因となって引き起こしてしまったこと」という意味です。
品性を疑われることや、人徳に反することをしてしまったせいで相手に迷惑をかけた時の謝罪に使います。
ささいなミスなどで頻繁に使うと、逆に誠意が伝わりにくい場合もあるので、注意しましょう。
ただ反省を示せばいいというわけではなく、相手や場面をしっかり見極めて使い分けることで、謝罪の言葉からも自分の評価をアップさせることに繋がりますよ。