最終更新日:2020/06/16
「来る」の尊敬語は、敬意の高い順に「お見えになる」「いらっしゃる」「お越しになる」「来られる」です。
同じように聞こえる尊敬語ですが、相手やシーンによって使い方が異なります。
また、普段からビジネスで使う言葉なので、注意が必要です。
今回は、「来る」の尊敬語や謙譲語、ビジネスでの用例を解説します。
1.「来る」の尊敬語と敬意の高い順番
尊敬語とは、話す相手や話題になる人のことを敬う言い方です。
「来る」の尊敬語を敬意の高い順番に並べると、以下のようになります。
- お見えになる
- いらっしゃる
- お越しになる
- 来られる
1番から、敬意の高い順です。
では、順番に見ていきましょう。
1-1.お見えになる
お見えになる
読み:おみえになる
意味:目上の人が来る
「お見えになる」は、目上の人が来る意味というです。
具体的には「お見えになる」は身分の高い人、「お越しになる」は中間の人、「来られる」は低い人など使われます。
いずれにしても、どれも目上に対する敬語であることに変わりありません。
<例文>
社長がお見えになられました
この例文では「お見えになる」という「目上の人が来る」という意味の敬語と、「お〜になられる」という一般敬語の二重敬語を用いています。
二重敬語とは、一つの言葉に2つ敬語を使っている敬語のことです。
二重敬語は一般的には使用せず、天皇陛下に対してのみ使用します。
1-2.いらっしゃる
いらっしゃる
意味:「来る」「行く」「居る」「ある」の尊敬語
「いらっしゃる」は、「行く」「来る」「居る」「ある」の意味をそれぞれ持ちます。
「入(い)らせらる」(=「お入(はい)りになる」)という言い方からできた言葉です。
一人の相手だけではなく、複数の人物にも使うことができます。
以下の例文は、それぞれ田中さん、プロジェクトメンバーの方々が「来る」を尊敬語に言い換えています。
<例文>
- ◯◯課長、◯◯食品の田中さんがいらっしゃいました
- プロジェクトメンバーの方々がいらっしゃいます
1-3.お越しになる
お越しになる
読み:おこしになる
意味:赴くことを敬っていう表現
「お越しになる」は、「来る」という直接的な表現よりも、「赴く(ある場所に向かっていく)」「足を運ぶ」といった間接的な意味を持つ敬語です。
「お越しになる」に比べて「いらっしゃる」の方が少し丁寧語に近い表現になります。
<例文>
また当旅館にお越しくださいませ
「足を運びにいらしてください」というニュアンスですから、「来てください」というよりも間接的な意味合いを持ちます。
そのため、直接的な表現よりも柔らかい印象で捉えられます。
1-4.来られる
来られる
読み:こられる
意味:「来る」に尊敬語「〜られる」が組み合わさった語
「来られる 」は、ご紹介している4つの尊敬語の中で、最も敬意の低い表現です。
そのため、最も敬意を表しにくい言葉だとされます。
取引先に敬意を表したい場合は、「お見えになる」「いらっしゃる」「お越しになる」のどれかを選びましょう。
「来られる」は以下のように使います。
<例文>
皆様が来られてから、相談しましょう
また、言い回しによっては「来ることができる」という意味で「来られる」を使用します。
その場合は、以下のように使います。
<例文>
Aさんは本日有給で休みですが、明日は来られます(上司に、あなたの同僚が出勤しているか?と聞かれて)
ただし、「できる」という意味で「られる」を使うと幼い感じがするので、ビジネスでは使わない方がいいでしょう。
2.ビジネスシーンで「来る」の尊敬語を使う場面と例文
ビジネスシーンで「来る」の尊敬語を使う場面と例文を説明します。
その場面は、以下の3つが想定されます。
- 相手が来た場合
- 相手に来てほしい場合
- 自分が行く場合
3番の「自分が行く場合」は、自分自身に尊敬語は使いませんので、必然的に謙譲語となります。
謙譲語は、自分の立場を低めて相手の立場を高める敬語です。主語は自分です。
では、順番に見ていきましょう。
場面1.相手が来た場合
相手が来た場合は、「お見えになる」「いらっしゃる」「お越しになる」「来られる」のどれを使っても問題はありません。
しかし「いらっしゃる」には「居る」の意味も含まれますから、より気をつけるのであれば「お見えになる」を使いましょう。
<例文>
- お客様がお見えになりました
- 奥様が、お一人でお見えになりました
- 遠い所、わざわざお越しくださり、ありがとうございます
よくある間違いとして「お客様をお連れしました」や「お客様が参られました」があります。
この2つはどちらもお客様に対して謙譲語を使ってお客様の立場を低めているので、失礼な表現です。
相手が来たことを敬語で表したいなら、「お見えになる」「いらっしゃる」「お越しになる」などの尊敬語を使いましょう。
場面2.相手に来てほしい場合
相手に来てほしい場合は「お越しになる」「いらっしゃる」を使います。
「お見えになってください」とは使わないので、注意が必要です。
<例文>
- また当店へ羽を伸ばしにいらしてください
-
当地へお越しになるときは、ぜひご一報ください
「いらっしゃってください」という表現は、意味としては問題ありません。
しかし「行く」の尊敬語も「いらっしゃる」なので、「来る」尊敬語と区別するために「いらして」という言葉を使います。
ちなみに「行く」の尊敬語としては「いかれる」と表現します。
場面3.自分が行く場合
自分が行く場合は、謙譲語である「伺う」「参る」を使います。
なお、謙譲語とは、自分が相手に何かをするときに使う言葉です。
その際に自分をへりくだる言葉が、謙譲語です。
<例文>
- 休日は旅行で沖縄に参ります
- 御社に書類を取りに伺います
3.「来る」の他の敬語表現
3−1.「来る」の丁寧語:来ます
「来る」の丁寧語は「来ます」です。
尊敬語ではないため、ビジネスではあまり使用しません。
部下や同僚に対して丁寧な表現をする際には、最適な言い方です。
<例文>
Aくんが、今から会社案内のロールプレイングで、会議室に来ます
このように、部下に対して丁寧な表現として、使うことができます。
3−2.「来る」の謙譲語:伺う、参る
「来る」の謙譲語には「伺う」「参る」があります。
「参る」と違って「伺う」は行く先に敬意がいる相手がいないと、使うことができません。
例文を見ながら、違いを理解していきましょう。
<例文>
◯:本日17時に、先生のお宅に伺います
◯:本日17時に、先生のお宅に参ります
×:私は会議室に伺います
◯:私は会議室に参ります
「会議室」は特定の場所であり、相手はいませんから、敬意を払う対象にはなりません。
この場合は、「参ります」を使うのが正解です。
続いて、「来る」の尊敬語の英語表現について説明します。
4.「来る」の尊敬語の英語表現
「来る」の尊敬語の英語表現を見ていきましょう。
英語表現では「come」「visit」と言った表現を使います。
英語には尊敬語などの表現はないと言うことがありますが、それは間違いです。
英語で丁寧な表現をするには、「glad(〜できて嬉しい)」「look forword(〜を楽しみにしている)」などの表現を一緒に使います。
例を見ていきましょう。
<例文>
- Welcome!I’m glad you’ve come.(よくいらっしゃいました)
- We look forward to your next visit.(またのお越しをお待ちしております)
このように「come」や「visit」の前後にどんな文章を作るかで、丁寧な表現に変えることができます。
まとめ
「来る」の尊敬語は「おみえになる」「いらっしゃる」「お越しになる」「来られる」です。
今、紹介した順番で、敬意の度合いが大きくなっています。
また自分が相手先に行く場合は、謙譲語の「参る」「伺う」を使います。
基本的な尊敬語、謙譲語なので正確にマスターして使えるようになりましょう。