
ビジネスメールや文書でよく使われる「平素」という言葉。
「平素」には「いつも」「日頃」という意味があり、挨拶文では「いつも」を「平素」に置き換えて使うことが多いでしょう。
丁寧な印象を与える「平素」ですが、敬語の中でも丁寧語に分類されるため、使い方を間違えてしまうとマイナス評価につながってしまうこともあります。
「平素」は初対面や面識のない相手に使ってしまうと「いやみ」や「ずうずうしい」などのマイナスな印象を与えてしまうこともあるんです。
今回は、 ビジネスメールでも用いられることが多い「平素」の正しい使い方や例文、使い分けなどを詳しく紹介します。
1.「平素」の意味とは
平素
読み:へいそ
意味:「つね日ごろ」や「普段」、「いつも」を表す
「平素」は、 「つね日ごろ」「普段」「いつも」などの意味です。
ビジネスメールでは、「平素はお世話に〜」などのように、最初の挨拶文として用いられます。
挨拶文で用いられる「平素はお世話になっております。」は、簡単に言えば「いつもありがとう」という意味です。
ビジネスメールや文書で用いられることが多く、話し言葉などで使われることは少ないでしょう。
2.「平素」の正しい使い方と例文
「平素」の意味が分かったところで、次は 正しい使い方と具体的な使用シーンについて見ていきましょう。
2-1. 「平素」は挨拶文(書き出し)として使われる
「平素」は、 挨拶文や書き出しとして使われる言葉です。
挨拶や通知などに関する本文の前に、「平素はお世話になって〜」と記載することで、普段からお世話になっている方への感謝を含めた文章として使われます。
文末や文章の途中などでは使われないため、「平素」は冒頭の挨拶文で使用することを覚えておきましょう。
2-2. 「平素」が使われる具体的なシーンと例文
「平素」が使われる具体的なシーンとして、以下の3つの例をご紹介します。
- 場面1.ビジネスメールでの挨拶として
- 場面2.新年の挨拶として
- 場面3.報告として
場面1.ビジネスメールでの挨拶として
ビジネスメールの挨拶で「平素」を使う時は、 要件を伝える前に記載します。
文章の冒頭で「平素よりお世話になって〜」のように挨拶として使い、要件に入るのが正しい使い方です。
要件には以下のような内容が当てはまります。
- 感謝
- 休暇
- 日程変更
- お詫び
「平素」は普段からの感謝の気持ちを伝える時に使われることも多いですが、感謝以外の文面でも使用します。
例文:「平素は、大変お世話になっております。」
場面2.新年の挨拶として
「平素」は、 新年の挨拶として取引先や顧客、webページで掲載する文書に使用されます。
新年の挨拶として用いられる場合は、新年の挨拶の後に感謝の気持ちを表記することが多いです。
例文:「新年明けましておめでとうございます。平素はご愛顧を受け賜わり、厚くお礼申し上げます。」
場面3.報告として
「平素」は、 取引先や顧客などの社外に向けた報告の挨拶の時にも使われます。
報告として使われる場合は、「平素は大変お世話になっております。」よりもフォーマルな表現を用いることが一般的です。
例文:「平素は格別のご高配を賜り、ありがたく厚く御礼申し上げます。」
2-3. 「平素」と「平素より」「平素から」の使い分け
「平素」という言葉には、「平素より」「平素から」などの似た表現があります。
それぞれの言葉には、以下のような違いがあります。
- 「平素は〜」:現在ではなく、過去の状況や過ぎたことを表す
- 「平素より」:過去から現在までの経過を表す
- 「平素から」:普段からと同じ意味を表す
使い方1.「平素は」
「平素は」は、 「現在ではなく過去の状況や過ぎたことを表す」意味です。
挨拶の冒頭で「平素は」を用いる場合は、今までのことを振り返ってお礼を伝えたり、お詫びを伝えるきっかけの言葉として使うことができます。
例文:「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。」
使い方2.「平素より」
「平素より」は、 過去から現在までの経過を表しています。
普段から付き合いがある人への手紙など、ビジネスメール以外でも使うことができる表現です。
例文:「平素より大変お世話になっております。」
使い方3.「平素から」
「平素から」は、 普段からと同じ意味を表します。
「日頃から」「普段から」と同じ意味を持っていますが、丁寧な敬語表現として「平素から」という言葉を用いられることが多いです。
次は、「平素」の注意点について、例文を交えながら紹介します。
3.【要チェック】「平素」の失礼な使い方
「平素」は、ビジネスメールで使用することも多いです。
しかし、 使う相手によっては失礼に当たってしまうことがあります。
注意点1.初対面では使わない
「平素」という言葉には、 面識のある相手や従来の顧客に対して用いる表現であるため、初対面の挨拶で使うのは相応しくありません。
面識のない初対面の人への挨拶に「平素」を使うと、「いやみ」や「ずうずうしい」などのマイナスの印象を与えてしまいます。
面識のない取引先にメールを送るときは、「平素は〜」は使わず「初めてご連絡させていただきます」などの表現を使いましょう。
例文:「初めてご連絡させていただきます。」
注意点2.親しい関係の人には使わない
「平素」は、 親しい関係の人へのメールや手紙では使いません。
丁寧語とは言え、かしこまった表現になってしまうためフォーマルな印象を与えてしまいます。
親しい関係の人に使う場合は、「いつも」などのようにカジュアルな表現の方が良いでしょう。
例文:「いつもお世話になっております。」
注意点3.「平素」に続く文がフランクにならないようにする
「平素」は、 「いつも」よりも硬い表現でありフォーマルな印象を与えます。
「平素」で挨拶文を始める場合は、文章全体をフォーマルに統一することが必要です。
「平素はお世話になっています。」などのように、「平素」の続きの言葉がフランクにならないように注意しましょう。
例文:「平素からお世話になっております。」
4.「平素」の類義語・言い換え表現
「平素」という言葉の言い換え表現を3つ紹介します。
- 「日頃よりお世話になっております」
- 「普段から大変お世話になっております」
- 「先般は大変お世話になりました」
似たような表現ですが、 「平素」とはニュアンスが異なる言葉もあるため、例文も合わせて見ていきましょう。
①「日頃よりお世話になっております」
「平素」と「日頃」は同じ意味を持っていますが、「日頃」は基本的に 「繰り返し続くこと」を表す表現です。
「日頃」は話し言葉でもよく使われる表現であり、「平素」は文章やメールでの書き言葉として使われます。
表現としては、「日頃」よりも「平素」の方が丁寧度が高いです。
例文:「日頃より格別のご協力をいただき、ありがとうございます。」
②「普段から大変お世話になっております」
「平素」と「普段」も同様の意味がありますが、 言葉の重みに違いがあります。
「平素」は硬いフォーマルな印象を与えるのに対し、「普段」はカジュアルであり、くだけた表現です。
ビジネスメールや文書では使わず、身近な人に使うようにしましょう。
例文:「普段から大変お世話になっております。」
③「先般(せんぱん)は大変お世話になりました」
「先般(せんぱん)」は、 「あまり遠くない過去の出来事」という意味です。
「平素」は今までから現在までの経過が関係していますが、「先般」は「近い間の出来事」を表します。
「平素」と異なり、「先日話した内容」などの「出来事」にフォーカスを置いていることがポイントです。
例文:「先般の会議で話し合われた〇〇についてですが、…」
その他「平素」の類語表現
上記の3つ以外にも、「平素」の類語表現として下記のようなものがあります。
- 毎度(まいど)
⇒「いつも」や「毎回」など繰り返すことを表す - 常々(つねづね)
⇒「普段」や「いつも」など毎日行われることを表す - 平生(へいぜい)
⇒「いつも」や「常日頃」を表す
毎度は話し言葉でも使われる表現であり、「平素」よりフランクな印象を与えます。
「常々」は「平素」と異なり 文中で使用するため注意が必要です。
- 毎度ありがとうございます。
- 彼に対する不満は常々感じている。
- 平生は大変丁寧な気配りをして下さりありがとうございます。
次は「平素」の英語表現について紹介します。
5.「平素」の英語表現
「平素」を表す直接的な英語の表現は存在しないため、 「感謝の気持ち」を伝える文章になります。
- 例文1:「Thanks for your continued support.」
(平素よりお世話になっております。) - 例文2:「I would like to express my sincere gratitude for continued support and patronage.」
(平素より格別なご愛顧とご高配を賜わりまして、心より御礼申し上げます。)
日本語で使う「平素」の意味に近い英語表現を紹介しましたが、例文2はかえって堅苦しくなり、相手が構えてしまうこともあります。
英語のビジネスメールでは、日本のような挨拶文を表記する習慣がないため、こだわりすぎる必要はないでしょう。
挨拶文の代わりに 「お変わりございませんか?」などの表現を使うことが多いです。
例文:「I hope all is fine.」
(お変わりございませんか)
まとめ
「平素」は「普段から・いつも」という意味の言葉であり、 ビジネスメールや新年の挨拶などに用いられます。
その場合は、「平素よりお世話になっております」「平素は格別のご愛顧を賜り」などのように、挨拶文として使うのが正しい使い方です。
丁寧な表現ですが、それが故に上司への報告や普段の会話で使ってしまうと、「堅苦しい奴だな…」と思われてしまいます。
使いやすい「平素」という言葉ですが、初対面や身近な人に使ってしまうと失礼にあたることもあるため、注意しましょう。