最終更新日:2020/06/05
「ご賞味ください」には 「美味しく食べてください」「褒めながら食べてください」という2つの意味があります。
食べ物を贈るときに、美味しく食べて欲しいというつもりで「ご賞味ください」と使うと、「褒めて食べて」と 賞賛を要求するニュアンスに取られてしまう可能性も…。
この記事では、つい間違って使いがちな「ご賞味ください」の正しい意味、使い方、言い換え表現などを詳しく解説します。
気になる項目をクリック
1.「ご賞味ください」の意味とは?
言葉は1つの意味だけではなく、複数の意味に解釈されることがあります。
「ご賞味ください」の「賞味」も2つの意味を持つ言葉です。
「ご賞味」は、美味しさを良く味わうという意味
①美味しさをよく味わうこと
②褒めながら食べること
①の意味は、「賞味期限」という言葉を考えるとわかりやすいです。
賞味期限(美味しく食べられる期限)→消費期限(食べられる期限)で、賞味期限はもっとも美味しく食べられる期限が表示されています。
なので①の意味で「ご賞味ください」を解釈すると、「美味しさをよく味わって食べてください」という意味になりますね。
②は賞味のもともとの漢字の意味を考えてみるとわかりやすいです。
そもそも賞味の 「賞」は、功績や手柄に対して与えられる褒美という意味があります。
つまり「賞味」は、味を褒めるという、味を評価したり品定めするニュアンスが含まれているわけです。
②の意味で「ご賞味ください」を解釈すると、 「褒めながら食べてください」と賞賛を要求するニュアンスになります。
「ご賞味ください」は上から目線?
注意したいのは②の「賞味(褒めながら食べること)」で解釈した「ご賞味ください」です。
「賞」は褒め称えるという意味なので、「ご賞味ください」と言うと「自分があげたものを褒めながら食べてください」という解釈になります。
お土産で食べ物を贈るときに「ご賞味ください」と言いながら渡すと、「褒めて食べてください」という上から目線の言い方になってしまうんです。
失礼にならないためにも、目上の人に使うなら 「お召し上がりください」などを使うようにしましょう。
では次は「ご賞味ください」はどんなシーンで使う言葉なのか、使い方と注意点を見ていきましょう。
2.「ご賞味ください」の使い方と注意点
2-1.目上の人以下に使う
「ご賞味ください」は、 基本的に目上の人には使いません。
例えば上司に手土産を渡すときに「どうぞご賞味ください」と言うと、「どうぞ褒めたたえながら、味わってください」という意味にとられてしまいます。
例外としては、食品メーカーで上層部の人に新商品を試食してもらうとき自信作という意味を込めて使うようなケースです。
また、冗談が通じる間柄であれば「美味しいよ」というニュアンスで冗談めかして「ご賞味ください」と言っても良いでしょう。
2-2.お店が自分の商品をアピールする時に使うのはOK
お店や料理人が使うのは問題ありません。
「ご賞味ください」はそもそも店員や料理人などが自分や自社製品をアピールするときの言い回しです。
「お客様にぜひしっかり味わってもらい、吟味してもらいたい」という意味を込めて使います。
このような場合は「自信を持って作った料理(商品)なので、ぜひ味わって食べてください」という意味で以下のように使うことが可能です。
<例文>
・新商品です。ぜひご賞味ください
・丹精込めて作ったスープです。どうぞご賞味ください
むしろ「ご賞味ください」と言われた方が「美味しそう」「ブランド力がある」「高級なものを食べている」というお客様の満足感につながります。
もし自信のある商品でも「ご賞味ください」だと「押しつけがましいかな?」と感じるなら、「召し上がってみてください」という謙譲表現に置き換えるといいですよ。
料理人やお店が「ご賞味ください」を使うのは問題ありません。
しかし、 自作のお菓子や料理を職場や近所に配るときに「ご賞味ください」というのはかなりの自信家と受け取られてしまう可能性があります。
本当に料理上手だったとしても、自作のものを渡す場合は以下のような控えめな言葉を使いましょう。
・よかったら食べてみてください
・お口に合えば嬉しいです
・よろしければ、皆さんで召し上がってください
2-3.飲み物にも使える
口に入れるものなら食べ物でも飲み物でも関係なく使うことが可能です。
なぜなら、「賞味」には「味わう」という意味が込められているからです。
例えば、お店自慢のビールを「ご賞味ください」とお客様に勧めるのは問題ありません。
では料理人やお店の人以外は「ご賞味ください」を使うのは上から目線だとしたら、食べ物を渡すときはどんな表現がふさわしいでしょうか?
3.「ご賞味ください」の言い換え表現・例文
ここでは「ご賞味ください」と同じニュアンスで使える言い換え表現を4つ、英語で「ご賞味ください」と言う場合の5つの表現を紹介します。
3-1.お召し上がりください
「召し上がる」は「食べる」の尊敬語です。
「食べてください」と伝えたい場合は「お召し上がりください」となります。
「お召し上がりください」は 相手や状況に関係なく使うことができるので、目上の人に食べ物のお土産を手渡す時などにも使うことが可能です。
例)
・実家からぶどうが届きましたので、心ばかりですが、よろしければ召し上がってください。
・お口にあうかわかりませんが、よろしかったらお召し上がりください。
・珍しい品なので、ぜひ皆さんで召し上がってみてください。
3-2.ご笑味
ご笑味もご賞味と同じ読み方で「ごしょうみ」です。
食べ物を贈るときに「粗末な品(つまらないもの)ですが、お笑い草にして(笑って)食べてください」と謙遜する表現になります。
目上の人に対して | 意味 | 読み方 | |
---|---|---|---|
ご賞味 | × |
美味しさをよく味わうこと 褒めながら食べること |
ごしょうみ |
ご笑味 | ◯ | (粗末な品だが)笑って食べること | ごしょうみ |
ご笑味は謙遜後なので目上の人にも使うことが可能ですが、 口頭で「ご笑味(ごしょうみ)ください」と言うと「ご賞味(ごしょうみ)ください」と勘違いされてしまう可能性があります。
口頭では使わず、食べ物を贈るときに添える手紙などで使うといいでしょう。
3-3.ご笑納
贈り物をする際に「つまらないものですが、笑って納めて(受け取って)ください」という意味を込めて使われます。
ご笑味は笑って食べること、ご笑納は笑って受け取ることという違いはありますが、意味はほぼ同じです。
ただし、ご笑納は 親しい間柄ではないと、軽々しい印象を与えてしまうので目上の人には使わないようにしましょう。
意味 | 目上の人 | シーン | |
---|---|---|---|
ご賞味(ごしょうみ) |
美味しさをよく味わうこと 褒めながら食べること |
× | 料理人、お店が食べ物を出すとき |
ご笑味(ごしょうみ) | (粗末な品だが)笑って食べること | ◯ | 食べ物を贈るときの手紙の文面 |
ご笑納(ごしょうのう) | (粗末な品だが)笑って受け取ること | △ |
何かを贈るときの冗談として (食べ物ではなくてもOK) |
3-4.ご堪能
「堪能(たんのう)」には「十分に満ちること」「飽き足りること」です。
「ご堪能ください」は「十分に満足してお楽しみください」という意味になります。
食べ物だけではなく、イベントや旅行などにも使うことが可能です。
食べ物を贈るときに目上の人に使っても間違いではありませんが、宣伝文句として使われることが多いので、ビジネスで使うなら「お召し上がりください」の方が自然でしょう。
例)
・四季折々の料理をご堪能ください。
・新鮮な海産物を使ったお料理です。ぜひご堪能ください。
・源泉掛け流しの温泉をご堪能ください!
3-5.「ご賞味ください」の英語表現
「ご賞味ください」は「美味しさをよく味わうこと」「褒めながら食べること」の2つの意味があります。
食べたものがないものや珍しいものを勧めるときなら 「try(試す)」の言葉1つで表現可能です。
じっくり味わってほしいというニュアンスを含めたいなら 「enjoy」でもOKですよ。
例)
・Please try and taste it.
・Why don’t you give it a try?
・Enjoy your meal.
4.【シーン別】贈り物に添えるフレーズ
ここでは以下の4つのシーン別に、贈り物に添えるフレーズを見ていきます。
4-1.定番
日本人は贈り物をするときに「つまらないものですが〜」という定番フレーズを使うことが多いですね。
「大したものではない」という謙遜の気持ちが込められていますが、 「つまらないもの」だと必要以上にへり下った印象を与えてしまうかもしれません。
「つまらないものですが〜」より感じが良い表現としては、以下のようなものがあります。
- 心ばかりのもの(品)ですが
- 形ばかりではございますが
- ささやかではございますが
- 些少(さしょう=わずか)ではございますが
4-2.おすそ分け
おすそ分けは漢字で「お裾分け(すそわけ)」と書きます。
「裾分け」とは「もらいものや利益をさらに他の物に分け与えること」という意味です。
「他の人からもらった物をあげる」という意味なので、相手によっては 「いらないものだから、あげる」というニュアンスに聞こえてしまう可能性があります。
他の人からもらったものを目上の人におすそ分けするときは、「よろしければどうぞ」「お召し上がりください」などを使うのが適切です。
相手に遠慮させたくないという場合や、親しい友人に対して使うなら「おすそ分け」を使ってもOKですよ。
4-3.お土産を渡す
ここで言うお土産とは、手土産のことを指します。
よく「おもたせですが、どうぞ」などと言ってお客さんが持ってきた手土産を出すことがありますね。
おもたせは来客が持ってきたお土産を敬って使う言葉です。
- 手土産:自分が持っていくお土産
- おもたせ:お客様に持ってきてもらったお土産
手土産を渡すときには 「心ばかりですが」「ほんの気持ちですが」などを添えるのがマナーです。
ちなみに、お土産を渡すタイミングはお邪魔するかしないかで異なります。
- お邪魔する場合→部屋に入って挨拶が終わった後
- 玄関先で失礼する場合→挨拶の後すぐ
4-4.感謝を込めて贈り物をする
いつも良くしていただいている上司や、お世話になった相手に感謝を込めて食べ物を贈るときは ストレートに感謝の気持ちを表現した方が伝わります。
例)
・先日はありがとうございました。感謝の気持ちです。
・いつも良くしていただいてありがとうございます。ほんのお礼の気持ちですので、お受け取りください。
5.「ご賞味ください」に対する返事は?
相手先の会社訪問時などに「ご賞味ください」と言われたら、なんと返事をするのが正しい表現でしょうか?
5-1.「賞味させていただきました」が正しい
「賞味」の意味は「美味しさをよく味わうこと」「褒めながら食べること」なので、 自分が飲み食いするときに用いるのは失礼ではありません。
自分のことに関して「ご」と言う尊敬語をつけるのは間違いなので、 「ご賞味させていただく」と表現します。
5-2.例文
「賞味させていただきました」は目上の人にも使うことができます。
先日、お送りいただきました◯◯は、社員一同おいしく賞味させていただきました。
家族ともども美味しく賞味させていただきました。ありがとうございました。
まとめ
「ご賞味ください」は「美味しさをよく味わって食べてください」「褒めながら食べてください」という意味です。
料理人やお店の人が自信を持ってお客様に料理や商品(食べ物)を出すときに使うときに使われます。
食べ物の贈り物を渡すなら、「ご賞味ください」では上から目線で失礼になるので、「お召し上がりください」などを使うようにしましょう。