最終更新日:2020/06/05
「所望」は「 しょもう 」と読みます。「しょぼう」ではなく「しょもう」と読む点に注意しましょう。
「所望」は「 あるものが欲しい、こうしてほしいと望むこと」という意味です。
「ご所望」は「所望」を丁寧にしたもので、ビジネスシーンでよく登場します。
ではさっそく「ご所望」の意味と使い方、似た意味を持つ「ご要望」との違い、例文や類語などを詳しく見ていきましょう!
1.「ご所望」の意味
「ご所望」は「所望」の丁寧語なので、意味を理解するには「所望」から見ていくのが近道です。
あるものが欲しい、こうしてほしいと望むこと
「所望(しょもう)」の意味は2つあります。
【所望(しょもう)】
①あるものが欲しい
②こうしてほしいと望むこと
「所望」自体は敬語ではなく、単なる名詞です。
これに接頭語の「ご」をつけて「ご所望」にすると敬語表現になります。
「ご所望」は目上の人やお客様など、 自分より立場が上の人が何かを欲したり望むときに使われる言葉です。
例えばお店で「ご所望の品はこちらでしょうか?」と店員がお客様に聞くようなシーンでよく使われます。
目上の人に使ってOK
「ご所望」は 目上の人に使ってOKです。
「ご」をつければ「あるものが欲しいと望まれている」「こうしてほしいと望まれている」という敬語表現になるからです。
ただし、自分が欲している、望んでいる場合は「〜所望する」と「ご」をつけない表現にしましょう。
では、意味を理解したところで「ご所望」の使い方を例文つきで見ていきましょう。
2.「ご所望」の使い方
ここで紹介する「ご所望」の使い方は5種類あります。
2-1.ご所望の品
「欲しいと伺っていた品物」という意味を表します。
例えば事前に「◯◯が欲しい」と上司に言われていた場合、「ご所望の品物を用意しました」などと使います。
例)
・ご所望の品を用意しました。
・ご所望の品はこちらでお間違えありませんでしょうか?
「ご所望品」という言葉もあり、これ一つで「欲しいと望まれていた品」という意味で使うことができます。
2-2.ご所望の方
「(ある物事について)欲しいorしたいという方がいらっしゃいましたら」という意味です。
参加者や希望者を募るような場面でよく使われます。
一度に多くの対象に呼びかけるときに使える言葉です。
<例文>
・ご所望の方がいらっしゃいましたら、スタッフにお気軽にお声がけください
・お席に余裕がございますので、ご所望の方がいらっしゃいましたらご連絡ください。
2-3.ご所望でしたら
「(ある物事について)欲しいor望みがあれば」という意味です。
これから提示する物事に対して、相手の望みにあったものを準備することができるというニュアンスで使います。
2-4.ご所望とあらば
「(ある物事について)欲しい、望みがあれば」という意味です。
「ご所望でしたら」とほぼ同じ意味ですが、「あらば」は文語表現でやや芝居がかった古い印象を与えてしまいます。
堅苦しく感じさせたくないなら、 「ご所望とあらば」ではなく「ご所望でしたら」を使いましょう。
なぜなら、文語表現は改まった印象を与えるため、大げさな表現に聞こえてしまう可能性があるからです。
<例文>
・ご所望とあらば(でしたら)、すぐに◯◯をご用意いたします。
・こちらの品をご所望とあらば(でしたら)、店員にお声がけください。
ビジネスシーンでは「ご所望でしたら」を使いましょう。
冗談めかせて「ご所望とあらば〜」と使って場を和ませることはありますが、一般的な使い方ではないからです。
2-5.ご所望の場合
「(ある物事について)欲しいor望む場合は」という意味です。
「場合は」とついているので、この後に自分や相手の行動が伴います。
「ご所望」の意味と使い方を理解したところで、今度は「ご所望」と似ている「ご要望」との違いについて見ていきましょう。
3.「ご所望」と「ご要望」の違い
「所望」と「所望」は本来は同義語ですが、使われ方に違いがあります。
対象、目的 | 望むもの | |
---|---|---|
所望(ごしょもう) | 明らか、ピンポイント | 物 |
要望(ごようぼう) | 抽象的、複数 | 方法、手段 |
さらに詳しく見ていきましょう。
3-1.「ご所望」は物、「ご要望」は手段や方法に使う
「所望」は主に「物質が欲しい」という時に使われます。
例えば「ご所望のパソコン」「ご所望のコーヒー」など 対象は物でピンポイントでわかりやすいです。
一方、「要望」は主に「物事をこうしてほしい」と望む時に使われます。
例えば「ご要望に応える」「ご要望の件」など 対象は方法や手段で、抽象的なものです。
3-2.「ご要望」の方が使用頻度が高い
ビジネスシーンでは、どちらかといえば「ご要望」の方が多く使われます。
なぜなら、 「ご要望」の方が抽象的で使える範囲が広いからです。
例えば「ご所望」だと「ご所望の件」はおかしいですが、「ご要望」なら「ご要望の品」「ご要望の件」と物にも方法や手段にも使うことができます。
しかし、特定の物に対しては「ご所望」を使えるようになっておくとワンランク上のビジネス敬語を使えるようになりますよ。
どちらを使う場合にも、目上の人に使う場合は「ご」をつけるのを忘れないようにしてくださいね。
わかりやすいように、今度は「ご所望」と「ご要望」の例文でそれぞれの意味をチェックしていきましょう!
4.「ご所望」と「ご要望」の例文
「ご所望」と「ご要望」の例文でそれぞれのニュアンスの違いを確認してください。
4-1.「ご所望」の例文
まずは物質が欲しい場合に使われる「ご所望」の例文です。
例)
・お客様ご所望のカタログをお持ちしました。
・どちらの商品をご所望でしょうか?
・◯◯様がお茶をご所望です。
・どちらのデザインをご所望ですか?
・その曲をご所望でしたら、演奏させていただきます。
例文では「ご所望」は動詞として使われています。
カタログ、商品、お茶、デザイン、曲など、どれも対象となるものが明らかです。
では「ご要望」はどうでしょうか?
4-2.「ご要望」の例文
次は「物事をこうしてほしい」場合に使われる「ご要望」の例文です。
例)
・◯◯様のご要望にお応えできるよう、全力で尽くす所存にございます。
・お客様各位のご要望にお応えして、下記のとおりセールを実施することにいたしました。
・あいにくどの店でも品切れ状態で、ご要望の◯日までの納入が困難な状態でございます。
・お客様のご要望やご意見をお知らせいただければ幸いです。
例文では「ご要望」は名詞として使われています。
「ご要望」自体が主語になっているので、「ご所望」のように特別何か物を指すように使われていません。
「ご所望」は物に対してピンポイントで使う、「ご要望」は方法や手段に対して抽象的に使う、という違いを理解して使い分けられるようにしておきましょう。
4-3.「ご所望」と「ご要望」の英語表現
英語では「ご所望」と「ご要望」の違いはあまり意識されません。
以下のような英語で表現することができます。
・desire:〜を求める、要求する
・request:正式に依頼する、要請する
・wish for :〜を望む、〜を願う、〜が欲しいと思う
・ask for :~を求める、~を要求する、~を要する、~を所望する
・call on:に(〜を)要求する、〜を使うことを必要とする
・demand:強く求める、要望する、要求する
例)
・Since you have specially requested it, we shall be happy to let you have it.(たってのご所望とあれば、差し上げます。)
・Please find attached file that you have requested.(ご要望のとおり、添付ファイルをお送りしますのでご確認ください。)
・This is exactly what you have been asking for.(こちらがご所望の品です。)
・We cannot meet your demands. (ご要望にお応えできません。)
5.「ご所望」の類語
「ご所望」の類語を例文つきで4つ解説します。
5-1.ご希望
「ご希望」は「あることの実現を望むこと、その願い」です。
個人的な望みや一般的な望みなど、度合いの低い願いを表現するときに使います。
物が欲しいという場合なら、「ご所望」と同じように使うことが可能です。
例)
・ご希望の商品はこちらでしょうか?
・ご希望の場合は、◯日までにご連絡ください。
5-2.ご用命
「用命(ようめい)」とは「用事(仕事)を言いつけること、商品などを注文すること」です。
「ご用命」は用事を命じられるときや、注文を受けるときに使います。
「ご注文」よりもやや畏まった丁寧な表現です。
5-3.ご注文
注文は「人に依頼したり、自分が希望したりするときにつける条件」という意味です。
「ご注文」も前述の「ご用命」と同じく、用事を命じられたときや注文を受けるときに使います。
「ご用命」よりも軽いニュアンスで使われる言葉なので、 堅苦しくならないように伝えたいときに使うといいでしょう。
5-4.お望み
「望み」は「そうなりたい、そうしたいと思うこと」という意味です。
「お」をつけて「お望み」とすると丁寧表現になり、「ご所望」と同じような意味で使うことができます。
ただし、願望の度合いが低く、あまり丁寧な表現ではないので 目上の人に使うなら「ご所望」の方が適切です。
例)
・◯◯様のお望み通りに致します。
・お望みは何でしょうか?
まとめ
「ご所望」は「あるものが欲しい」「こうしてほしいと望むこと」の2つの意味があります。
似た意味で使われる言葉に「ご要望」がありますが、こちらは欲しいものの対象が手段や方法です。
「ご所望の品はこちらでしょうか?」などと、相手が物を欲しがっているときに使えるようにしておくとスマートな印象を与えられますよ。